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目標とする人

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第二章

 立派な忍者になるべく修行に励んでいた、確かに若さの為未熟で半人前であるがやる気は十分で師匠もそのことは認めて彼女に言った。
「そのやる気はなくすでない」
「やる気があるからこそですね」
「鍛錬、修行を続けられる」
「そして鍛錬、修行を続ければ」
 それでというのだ。
「立派な忍者になれるのだからな」
「まずはやる気ですね」
「そうじゃ」
 その通りという返事だった、伊賀の山で修行をしている才蔵に言うのだった。
「何につけてもな」
「だからこそ」
「そうじゃ、まずはそれでそれがないとじゃ」
「立派な忍者になれないですね」
「左様、そしてじゃ」
 師匠は汗をタオルで拭く才蔵にさらに問うた。
「前から聞こうと思っておったが」
「何でしょうか」
「そなた目標はあるか」 
 才蔵にこのことも聞くのだった。
「それはあるか」
「目標とする人ですか」
「忍者としてな。おるか」
「はい、います」
 はっきりとした声でだった、才蔵は師匠に答えた。
「私にも」
「そうか。それは誰じゃ」
「服部半蔵さんです」
 あのあまりにも有名な忍者、伊賀では最早伝説と言っていいまでのこの人物だというのだ。
「あの人みたいな凄い忍者にです」
「なりたいか」
「はい」
 こう答えるのだった。
「絶対に」
「そうか、わかった」
 師匠は才蔵のその言葉を聞いてまずは確かな顔で頷いた、そうしてそのうえで彼女にこう言った。
「ならばこれからもじゃ」
「半蔵さんを目指してですか」
「そうじゃ」
 そのうえでというのだ。
「さらにじゃ」
「修行を続けろというのですね」
「左様、服部半蔵殿を目指すのならな」
 それならというのだ。
「これからも励むのじゃ」
「そうですか、ただ」
「ただ。何じゃ」
「あのお師匠様は笑われないんですね」
 才蔵は師匠の確かな顔での返事を聞いてからあらためて尋ねた、それも少し意外といった顔でだ。
「私みたいな未熟者があんな凄い人を目標にするなんて」
「何がおかしい」
 師匠は弟子のその時に即座に答えた。
「目標にすることに」
「服部半蔵さんを」
「そうじゃ、それの何処がおかしい」
 才蔵は彼を目標にすることがというのだ。 
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