Blue and Black
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第二章
「殺したとか幽霊とか」
「そうしたお話でしたね」
「そうだよ」
「そのお話は知ってます」
めしあにしてもというのだ。
「怖いですね」
「だから黒百合を見ると」
店員にしてもというのだ。
「そのお話を思い出すんだけれどね」
「私もです。ですが」
「それでもなんだ」
「そのお花も好きです」
黒百合もというのだ。
「そちらのお花も」
「青薔薇とだね」
「はい、黒百合が」
その両方がというのだ。
「好きです」
「そうなんだね」
「変わった趣味でしょうか」
「いやいや、人の好みはそれぞれで」
それでとだ、店員はめしあに答えた。
「お花にしてもね」
「そちらもですか」
「それぞれだからね」
「だからですか」
「奇麗なことは事実だしね」
黒百合、怖い逸話があるこの花にしてもというのだ。
「だからね」
「いいですか」
「いつも気持ちよく買ってくれるし」
実際にめしあはいつもそうしている、気持ちよく笑顔で買ってくれる客程店の方に有り難い存在はない。
「だからね」
「それで、ですか」
「こっちはいいよ」
それで、というのだ。
「めしあちゃんが笑顔で買ってくれるならね」
「そうですか」
「じゃあこれからもだね」
「はい、買わせてもらって」
それでとだ、めしあも答えた。
「お部屋に飾ります」
「お店には飾らないんだね」
「自分の席には花瓶に入れて置いてますけれど」
それでもというのだ。
「お店の中にはです」
「飾っていないんだ」
「はい」
そうだという返事だった。
「そうしています」
「そうしてるんだね」
「自分のお部屋にも飾ってますけれど」
それでもというのだ。
「やっぱりあれですよね」
「青薔薇は変わったお花だし」
「黒百合は逸話がありますから」
佐々成政のそれがというのだ。
「お店に飾るとどうかと思いまして」
「それでだね」
「お店の中には飾っていません。別の娘が別のお花飾ってます」
「成程ね」
「ですから」
にこりと微笑んでだ、めしあは花屋の店員に言った。
「若し当店にいらした時は」
「その時はだね」
「他のお花をお願いします」
「そうさせてもらうよ」
「うちのお店は専門店ですが」
このことを話しもした。
「それでもいい品を揃えてますので」
「そうか、じゃあ今度な」
「当店にですね」
「行ってみるな」
こうした話をしてだった、そのうえで。
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