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百貨店の思い出

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第二章

「バーデンしてたよ」
「私も行ったことあります」
 西武が日本一になった時にだ。
「今では懐かしい思い出です」
「八尾では二度とないけれどね」
 当の西武百貨店が閉館したからだ。
「それこそ」
「はい、ですが」
「それでもだっていうんだ」
「どうして近鉄線の駅のすぐ傍に西武の百貨店があったか」
 主に野球の観点からの言葉だ。
「しかも西武って関東の方の鉄道会社ですね」
「あっちにあるよ」
 鉄道会社の方はというのだ。
「関西にはないけれどね」
「そうですよね」
「一応あそこも親会社鉄道会社なんだ」
 かつての西武の様にというのだ。
「関東の方にもあってね」
「それは聞いてますけれど」
「それで百貨店もやってて」
「関西にも進出していて」
「八尾にもあったんだ」
 そうなるというのだ。
「進出先があそこに選ばれたんだ」
「そうなんですね」
「球団はライバル関係でもね」
「それはそれですか」
「そうだったんだ、それで本当に西武が日本一になったら」
 その時はというのだ。
「バーゲンやっててね」
「私みたいにですね」
「皆買いに行ったんだよ」
「近鉄ファンの人達も」
「勿論パリーグの他のファンの人達もね」
「そうだったんですね」
「ああ、それも八尾市の光景だったよ」
 西武が毎年の様に優勝していた時の、というのだ。
「本当に今じゃね」
「懐かしい光景ですね」
「そうなったけれどね」
「八尾市に西武百貨店があって」
 近鉄の駅のすぐ近くにだ。
「ライオンズが優勝したら」
「バーゲンがあって」
「皆行ってたんだよ」
「ううん、それが今は」
「西武が日本一になっても」
 例えそうなってもというのだ。
「百観点がなくなったから」
「ないですね」
「そうだよ、まいなちゃんもね」
 彼女にしてもというのだ。
「今残念だって言ったけれど」
「二度とですね」
「バーゲンは楽しめないよ」
 西武ライオンズが日本一になってもだ。
「このことはね」
「もう、ですね」
「過去だよ、けれど」
「はい、過去は過去で」
「これから生きていかないとね」
「そうですよね、私にしても」
「お店のこともあるし」
 常連客はまいなに彼女が本屋の店員であることを話した。
「だからね」
「それで、ですね」
「そう、頑張っていこうね」
「わかりました、八尾もこのお店も大好きですし」
 この世界に来てからずっと住んでいてそうなった、それならだった。
「では」
「うん、それじゃあね」
「私これからも頑張っていきます」
「そうしてね」
 常連客もまいなに笑顔で応えた、そのうえでお店の仕事に励んだ、八尾市にいるエルフは今日も元気だった。


百貨店の思い出   完


                   2018・10・24 
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