戦国異伝供書
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第十五話 中を見るとその十三
「その様なことをして何になる」
「何にもならぬと」
「あの者達が武器を持ち織田家の天下布武に逆らうからじゃ」
「戦うのですね」
「そして討っておるだけのこと」
「門徒というだけで殺すことは」
「全くない」
信長が最初から全く考えていないことだ。
「それはな」
「左様でありますな」
「うむ、断じて言う」
このことはというのだ。
「それで言っておくが耶蘇教のことでな」
「まさかと思いますが」
「イエズス会以外の宗派が来てもじゃ」
「織田家はですか」
「拒むことはない、しかしこの国で喧嘩をすることはじゃ」
強い声で言うのだった。
「断じて許さぬぞ」
「わかりました。私はこのことをです」
「守るな」
「そうします。ですが」
「守らぬ者もおるか」
「その時は」
「うむ、わしは許さぬからな」
こうフロイスに告げた。
「お主からも言っておけ」
「わかりました」
フロイスは信長に澄んだ言葉で答えた、独特の訛りのある日本語で。
そしてだ、その話の後でだ。
信長はフロイスを茶室に呼び自ら茶を煎れ彼が献上したカステラを食った、そうしてこうフロイスに言った。
「これは美味いのう」
「左様ですか」
「うむ、よかったらじゃ」
こうも言うのだった。
「作り方を教えてくれるか」
「そうしてですか」
「わしではなく厨房の者達に教えてじゃ」
そしてというのだ。
「そのうえでざや」
「作らせてですか」
「以後も食いたいのじゃ」
「わかりました、では」
「カステラのこともじゃな」
「お伝えします」
「頼むぞ」
カステラについては穏やかに言う信長だった、そしてそのカステラを食べ茶も実に美味く飲むのだった。
第十五話 完
2018・8・24
ページ上へ戻る