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戦国異伝供書

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第十五話 中を見るとその七

「違うか」
「そう言うのか」
「わしはそう思うが」
「お主と猿殿だけはそう言うのう」
「そうじゃな、しかしな」
「どうしてもか」
「わしもそう思える」
 羽柴と同じくというのだ。
「それに今までの戦で裏切る好機は幾らでもあったな」
「それはな、金ヶ崎でも本願寺との時もな」
「武田、上杉との戦でもな」
「何度もあった」
「しかしそれでもじゃな」
「その気配はなかった」
 裏切るそれはというのだ。
「それこそな」
「わしも何時かやると思っておったが」
「その何時かなかったな」
「そうであるな」
「だからな、実はな」
「あ奴はか」
「悪人ではなく謀反もな」
 こちらもというのだ。
「ないのではないか」
「だとよいがな」
「少なくとも無闇に何か素振りを見せれば切る様なことは」
「せずともよいか」
「わしが思うにな」
「そうであればよいがな」
「まあわしの言うことを信じられなくてもな」
 それでもとも言う慶次だった。
「よく見てくれ」
「あ奴のことを」
「そして考えてくれ」
「どういった者か」
「それをな、そしてじゃ」
 さらに言う慶次だった。
「酒は飲んでおるな」
「この通りな」
「ならよい、避けはな」
「飲む時はじゃな」
「飲むことじゃ、飲んで飲んでじゃ」
 そうしてというのだ。
「次の朝に頭が痛くなることじゃ」
「酔い過ぎてか」
「そしてじゃ」
 その朝にというのだ。
「風呂じゃ」
「それに入ってか」
「すっきりすることじゃ」
「そこまで楽しむか」
「そこまで楽しんでこそじゃ」
 まさにというのだ。
「酒ではないか」
「お主はそこでも傾くか」
「ははは、酒についてもな」
 実際にというのだ。
「傾きじゃ」
「やはりそれか」
「そうじゃ、傾いてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「楽しむものじゃ」
「それはお主じゃな」
「ははは、やはりわしはな」
「傾奇者じゃな」
「だからな」
 それでというのだ。
「酒でもな」
「傾くか」
「傾いてな」
 そしてというのだ。
「飲んで飲んでな」
「そうしてか」
「朝頭が痛くなってじゃ」
 二日酔いになってというのだ。
「風呂に入るぞ」
「そしてすっきりしてか」
「また明日じゃ、また近いうちに戦になるが」
「その戦もじゃな」
「思い切り暴れるか」
「わしもそうする、そして笹をな」
 笹の才蔵、その二つ名に相応しくというのだ。
「どんどん咥えさせていくわ」
「倒した者の口にじゃな」
「そうしていくわ、本願寺との戦でも武田、上杉との戦でもな」
 先の戦でもというのだ。 
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