【完結】猫娘と化した緑谷出久
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猫娘と強化合宿編
NO.074 出久と爆豪の悩み
前書き
更新します。
「あぁー……早くデクちゃんに会いたいなぁ……」
続々とヴィランが集合してきている中でトガヒミコが恍惚とした笑みを浮かべながら両手を頬に持ってきていた。
荼毘はそんなトガの呟きになど興味はなく……いや、捕獲対象なのであるから多少の興味は持つ。
あの死柄木とバックに控えている通称“先生”という奴が執拗に狙っているのだからどんな奴なのかも少しでも情報が欲しいところが荼毘の本音であった。
「おい、トガ……」
「はい? なんでしょうか荼毘さん?」
「その捕獲対象の緑谷出久って生徒はどんな奴なんだ……?」
「デクちゃんですかー……」
口に指を持っていき少し思案顔になるトガ。
少ししてニカッと笑みを浮かべたらと思ったら、
「私の憧れの人でしょうか? とっても同じ存在になりたいですし、最後にはパァーっと最高の友達になりたいです。あ、いや……もう友達だったよね!」
何かを思い出したのかまた笑顔を浮かべるトガ。
そんなトガに対して荼毘は「(話になんねぇ……)」と早々に話を切り上げた。
もうトガはトリップしているのか荼毘の声などは聞かずにイヤンイヤンと体を振らせていた。
「(まぁ、どんな奴かは雄英体育祭で多少は知ってからなんとかやるしかないか)」
一人、また一人集まってくるヴィラン共を見据えながら決行の時を待った。
出久が宿舎に帰ってくる時にはもうすでに片づけは終わっていたらしく中々帰ってこなかった出久の事を心配してか飯田とお茶子と轟の三名が出久に近寄ってきた。
「デクちゃん、遅かったね?」
「うん……」
出久の出ていく前より沈んでいる表情を見て、
「どうしたんだい緑谷君? どこか浮かない顔をしているが……」
「あぁ。さっき爆豪がお前より先に帰ってきたが……あいつとなにかあったのか……?」
「そういえば爆豪君もどこか苦虫を噛みつぶしたような顔をしていたよね? デクちゃん、相談できることだったら話してくれないかな? 話し相手になるよ」
「ああ」
「うむ」
そんな三人の言葉にありがたさを感じた出久は、少ししてポツリポツリと先ほどの出来事を三人に話していく。
洸汰との再会でともに久しぶりに親睦を深めていたところに、出久の後を追ってきていた爆豪が姿を現して、洸汰の子供の癇癪みたいなものが出たまではまだ大丈夫だった。
だが、爆豪の出久のあだ名である『デク』という呼び方が普通の子供よりも聡明な洸汰があっという間にそのあだ名は蔑称から来ている事を看破して、慕っている出久から遠ざけるように爆豪を追い返してしまった……。
そんな感じだったことを三人に伝えて、聞いた三人はそれで悩む仕草をしながらも、
「……もしかして、私もデクちゃんって呼んでるから目の敵にされちゃっているのかなぁ……?」
お茶子が不安そうに表情を暗くする。
お茶子の言う『デクちゃん』は『頑張れって感じのデク』なのだが、まだ子供の洸汰には判断ができないかもしれないと思う事だろう。
「ううん……洸汰君は麗日さんの方は別に大丈夫みたい」
「そっか……それなら安心、なのかな……?」
「それより問題なのは爆豪君の方だな。もうみんなも分かっていると思うが緑谷君と爆豪君はすでに仲直りが出来ているから、だが蔑称の事を穿り返されてしまっては反論もできないだろうしな……緑谷君との仲が悪化しないか心配だな」
「あぁ。爆豪の奴はあれで意外にみみっち……いや、繊細なところがあるからな……切島から聞いたが例のトラウマが出ていないか心配だな」
ベストジーニストと爆豪のやり取りなどは知らないだろうが、それでも出久が傷つく姿を見てしまったら最後、周りが見えなくなるほどのトラウマを抱えている爆豪。
どこかで暴発しないか不安である。
「それでなんだけど、飯田君に轟君。もしかっちゃんと会ったらそれとなくフォローしてもらってもいいかな? この通り僕は女子だからもう寝室に行っちゃっただろうかっちゃんとは今日はもう会えないと思うし……」
どこか悔しそうにそういう出久。
時と場所が許すならいますぐにでも爆豪に会いに行きたい出久。
下手したらこの強化合宿にも不祥事が起こるかもしれないから早めの仲直りと言ってもいいか分からないが、普通に話ができるくらいにはしておきたい。
「うむ。他ならぬ緑谷君の頼みだ。任せておいてくれたまえ」
「あぁ。爆豪に会ったらそれとなく言っておく。だから緑谷もあまり深く考え込むんじゃねぇぞ?」
「うん……ありがとう二人とも。お願いね」
そんな感じで二人とは別れて、出久とお茶子も寝室へと向かって歩いている中、
「あのね、デクちゃん……蔑称の件はまぁ爆豪君の自業自得かもしれんけど、でももう爆豪君は昔の行いまではやり直せないけど、デクちゃんとの仲は改善出来てるんだから……きっと大丈夫だよ!」
両手をグッと握ってそう言い切るお茶子に出久も「うん」と頷きをしていた。
そうだ、もうかっちゃんとは仲直りは出来たんだから、きっと大丈夫……そうだよね? かっちゃん……。
出久はそう思いながらも女子部屋に到着したら補習組の芦戸以外の女子達とトランプなどをして明日に響かない程度に就寝したのであった。
―――強化合宿、三日目。
そこでは相変わらず先日に続いて個性を伸ばす訓練が行われていた。
特に補習組は睡眠時間を削られていたために実にダルそうであった。
そこはそこ、相澤が布を使って無理やり叩き起こすという事をやっていた。うーん……実にスパルタ。
そんな中で土巨人と戦っている出久は早朝の時に飯田と轟にどうだったか、と話を聞いてみたが、爆豪は拗ねたような顔はしていたがそれでも大人しかったという。
爆豪の過去の己の行いなのだから一人で向き合いたい感じだったのだろう。
最終的には、
「変な気ぃ使うんじゃねー! ぶっ殺すぞ!!」
との事。
言葉は悪いが強がりが言えるのであればまだ余裕があるのだろうという感じで一応は静観する事にしたという。
出久はそんな爆豪の状況に、「かっちゃんらしいね」と一応の安心をしていた。
それとは別に出久は今回はなぜオールマイトが来ていないのか?とフラッとやってきて相澤に聞いてみた。
返ってきた内容としてはやはりヴィランの目的の一つはオールマイトの抹殺だからだろう。
あと、他にも本当ならもしヴィランが出現してきたら出久も狙われるかもしれない……という懸念があったのでオールマイトと一緒にしておくという意見もあったのだが、それでは過保護すぎるという意見もあり通常通りに強化合宿に参加させたという学校側の葛藤による葛藤もあったという経緯があったが、素直に出久にその事を教えるほど鈍ってはいない相澤はそれとなくはぐらかした。
それより、ピクシーボブが訓練している一同に耳よりの情報を伝える。
「ねこねこねこ。それより訓練ばっかじゃストレス溜まっちゃうでしょ? だから今夜はクラス対抗の肝試しをするからそのつもりでいてね。これぞまさにアメとムチってね!」
そう言って笑うピクシーボブ。
それならば頑張らねば……という気持ちで一同はよりいっそうの訓練に励んでいった。
そんな一方で、爆豪も訓練中にいろんな雑念が入ってきて仕方がないと思っていたが考えねばならない事だと思っていた。
それは……そろそろ出久の事を『デク』とは言わずに名前で呼んでやるかという……。
洸汰の言葉が意外にというかかなり爆豪のトラウマを抉っていたのでこんな考えになっていた。
なまじ出久が今まで『デク』と呼ばれてもなんでもない感じだったから一種の甘えが爆豪にもあったのだろうという心境である。
しかし、急に呼び方を変えたら混乱は必須だろうから羞恥心も相まっていつ言い出すかで頭を悩ませる爆豪であった。
果たしてこの爆豪の想いが成就する時は来るのであろうか……?
後書き
こんな感じで切りですね。
これって結構重要じゃね?と思う。
青春漫画ではここぞという時に名前呼びは欠かせない展開ですから。
どう料理するか……。
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