どういう苦手か
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第二章
「いやあ、久し振りに食べましたよすっぽん」
「美味かったか」
「はい」
その通りという返事だった。
「本当に」
「それは何よりだな、ただな」
「ただ?」
「あんたすっぽん苦手だよな」
刑事はアディに怪訝な顔で尋ねた。
「そうだよな」
「はい、それはです」
「それは?」
「あれです、すっぽんって噛みますよね」
「あんた噛まれたことがあるのか」
「日本に来てすぐに川で釣りをしたんです」
そうした時があったというのだ。
「その時すっぽんを釣りまして」
「その時にか」
「噛まれて。随分とです」
「しつこかっただろ」
「中々離さなくて困りました」
「すっぽんは一度噛んだら離さないんだよ」
その通りだとだ、刑事はアディに答えた。
「それこそ雷が鳴らないとな」
「そう言われてますね」
「まあ実際に水に漬けたら離すけれどな」
「実際に近くにいた人に教えてもらって」
「それで離させたか」
「そうしましたけれど大変な思いをしました」
すっぽんに噛まれてというのだ。
「あの時のことは忘れられないです」
「だからすっぽんは苦手か」
「そうなんですよ」
生きものとしてのすっぽんはというのだ。
「本当に」
「それで何で食べるのは好きなんだ?」
このことがわからずだ、刑事はアディに尋ねた。
「そっちは」
「その前にものは試しで食べてみたんです」
「日本に来てすぐにか」
「日本で食べるものの一つとして」
それでというのだ。
「食べたんですが美味しくて」
「それでか」
「食べる分には好きです」
「成程な」
「はい、ですが」
それでもとも言うアディだった。
「食べる以外では苦手です」
「成程な」
「いや、それにしても今日は」
「いい気持ちになっただろ」
「とても」
満面の笑顔でだ、アディは彼に刑事に答えた。
「満喫しました、じゃあ明日は」
「明日は何を食うかか」
「カツ丼にしようかと」
その様にというのだ。
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