普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【魔法先生ネギま!】編
247 2002年、春
前書き
SIDE 春原 真
エヴァンジェリンの〝別荘〟から出てからそれなりの日数が経過していて、桜が咲き誇る季節となった。今日だって、〝春眠暁を覚えず〟と云う様にベッドで惰眠を貪りたいくらいの陽気だというのに〝とある理由〟からそうもいかなくなった。
教壇の下から見上げられる〝好奇〟〝諦感〟〝推量〟──様々な情感が込められた31対62の視線を一身に受けながら俺は開口を決意した。
「今朝の朝礼で学園長からお達しがあったから判ってると思うが、改めて自己紹介しておこう。……君達2―Aの担任となった春原 真だ」
「き、き、き…」
「……き?」
「「「「「きゃーーーーー!!!」」」」」
「イケメン先生来た!」
「これで勝つる!」
「若いね、幾つ?」
「彼女は? 好きなタイプは?」
〝〝原作主人公(ネギ・スプリングフィールド)〟に代わって2―Aの担任就任〟──それはある意味〝お約束〟で。
(おっふ…)
〝某・完璧美少女〟と対面したわけではないが、内心そんな呟き洩らしてしまう。たった10人かそこらの歓声なのだが、その姦しさたるやそれほどのものだった。
……ちなみに、どこかから聞こえてきた…
「え──ナギ…?」
「どうしたんや、アスナ」
「な、何でもないわよ、このか──私、どうしたんだろ」
……なんてやり取りはスルーさせてもらった。しかしエヴァンジェリンにはそんな二人のやり取りは聞こえて無かったらしく…
(「くくく、500年生きていると云うのに小娘どもに圧され気味ではないか」)
「(うるさいぞ、6XX歳児)」
エヴァンジェリンから俺をからかう〝念話〟が飛んでくる。
エヴァンジェリンはナギ・スプリングフィールドに掛けられた〝登校地獄の呪い〟を解呪して以来、簡単な魔法なら平素──日中でも使える様になっていた。エヴァンジェリン曰く〝普通の魔法使い相当〟らしいが、彼女からしたら花粉症が緩和されたので、それで良かった様だ。
……ちなみに〝登校地獄〟が解けたエヴァンジェリンが今もこうして登校しているのは〝もう一体の従者〟のためだとか。その従者の卒業に合わせてエヴァンジェリンも卒業するらしい。
閑話休題。
教卓を通して31人の生徒達を見て改めて思う。
(こうして対面してみると──やっぱ、パネぇ)
〝600歳越えの吸血鬼〟〝褐色巫女半魔族スナイパー〟〝未来から来た超天才異世界人〟〝魔法使い絶対殺すウーマンな某・亡国のお姫様〟〝科学と魔法のハイブリッドガイノイド〟──これらがこうして1つの教室に収まっている様を見ると、やはり感嘆を禁じ得ない。
(さて…)
〝属性の坩堝〟への驚愕はさておくとして、とりあえずはこの場を治めなければならないだろう。
「静かに、そして着席」
俺がそう口にした途端、騒いでいた連中は口を噤み、各々の席へ座る。そこかしこから聞こえてくる〝某・全然忍べていない糸目のっぽ〟の「ほう…」だの〝某・褐色金髪カンフーチャイニーズ〟の「やるアルネ」などの声は黙殺させてもらう。
俺がした事と云えば、〝心波〟でちょっくら声に怒気を〝ほんの少し〟乗せてやっただけなのだが、エヴァンジェリンが俺をからかう時に言っていた様に大半は15にも満たない子供なので、〝ほんの少し〟で効果は覿面だった様だ。
「……ありがとう。いくらホームルームとは云え、他のクラスに迷惑がかかるからな。もう中学二年生になって後輩を持つんだ──判るよな?」
騒いでいた連中を中心にこくこくと首肯が返ってくる。
「そいつは重畳。……しかし、場を冷やしてしまったのは間違いないから──〝ちょっくら俺の特技でも披露しようか〟」
静まり返っていた教室の端々から「えっ…」「うそっ…」などと驚きの声が上がる。それもそのはず俺の声が急に変わったからだろうし──更に云えば〝その声〟が知っている人物の声だったからだと見受けられる。
「高畑先生…?」
俺が声を真似た人物は、神楽坂 明日菜がふと溢した様に高畑・T・タカミチだった。
「他にも例えば──〝フォッフォッフォッ、こんな声も真似出来たりするぞ〟」
「今度は学園長?」
「すごっ」
(〝掴み〟は上々か)
先導性が取れた事を内心ほくそ笑みながらホームルームを続ける。
「まだホームルームの時間が余ってるな…。……そうだな、ちょっとした質問会にしようか。俺に訊きたい事があるヤツは挙手ー」
ちらほらと手が挙がる。俺は出席番号3番の朝倉 和美を指名する。
「んじゃ──確か朝倉だったか? 朝倉」
「まず、先生の年齢は?」
「24だ。次は──早乙女」
もちろん24と云うのはテキトーだ。俺からしたら年齢は最早記号でしかないのだから。
次は〝台所の黒いダイアモンド〟を彷彿させり触角を生やした出席番号14番の早乙女 ハルナを指名。
「先生の趣味と特技は?」
「趣味は色々あるが敢えて云うなら読書と身体を動かすことかね。特技、それこそ色々だな。……次は──柿崎」
「ぶっちゃけ、彼女はいる?」
こう言ったら語弊があるかもしれないが──恋愛脳なところがあるのが〝女子中高生〟と云う生き物である。〝イマドキの〝女子中高生〟〟然とした出席番号7番柿崎 美砂からお約束の質問が飛んでくる。
「彼女は今はいない。……次は──古 菲」
「先生は何か武術はやってるアルカ?」
「護身レベルだが拳法を多少な。次は──もう居ないみたいだな」
(「ちっ、つまらん。もう少し貴様がおたおたするところが見たかったが」)
「(まぁ、500年の歳月は伊達じゃないからな)」
〝某・褐色金髪カンフーチャイニーズ〟の質問で質問会は終了し、エヴァンジェリンとのやり取りをしていると〝進級お祝い兼春原先生歓迎パーティー〟なるものに巻き込まれたりしたが…。それは割愛。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
〝進級お祝い兼春原先生歓迎パーティー〟なるものが終わって数時間。俺は──俺だけではない。俺を含む十数人の老若男女の人々が、世界樹前の広場に集っていた。……有り体に云わば、〝裏〟のとは付く年度始めの全体ミーティングだ。
……ちなみに、前述した〝進級お祝い兼春原先生歓迎パーティー〟であるが、〝原作〟の様に〝某・男性恐怖症公式美少女〟を助けたり──なんて一幕は無く、ともすれば当たり前のことだが神楽坂 明日菜への魔法バレイベントも無かった。〝原作主人公(ネギ・スプリングフィールド)〟が麻帆良に来るのは来年の1月、三学期の頭なのでその辺りも関係しているのだろう。俺が無為に龍のオーラを撒き散らしていないと云うのも一因なのは間違いない。でなければ、どろっどろの〝学校の日々〟ルートになっていた公算が高い。
閑話休題。
……更に云えば、俺のせめてものストライクゾーンは16から──それに、〝それなりの体型〟になってからだったりする。例えば、鳴滝双子姉妹があのままの体型で16になっても食指は動かないと断言出来る。エヴァンジェリンの様な〝合法ロリ〟もイケないクチではないが、やはり20は越えてないと厳しい。
また閑話休題。
「さて年度始めの定例ミーティングじゃが、その前に気になっている者も多いじゃろうから、皆に紹介しておきたい者が居る──真君」
「はい、学園長。……女子中等部の方々には今朝の朝礼で挨拶しましたが、改めて自己紹介しておきましょう。春原 真です。よろしく」
「「「「「………」」」」」
俺のストライクゾーンの話はさておき、学園長に促され〝裏ミーティング〟に集った魔法先生、魔法生徒の銘々に挨拶したのだが、向こうから返ってきたのは少ない拍手と、多数の〝沈黙〟であった。学園長とタカミチに続き、2ーAに在籍している〝関係者〟の──エヴァンジェリンを除く皆は拍手なり会釈なりしてくれているが、他の銘々は〝俺の顔〟に戸惑いを隠せていない。
然もありなん、〝俺の顔〟はクローン元の〝原作主人公(ネギ・スプリングフィールド)〟に瓜二つで、〝原作主人公(ネギ・スプリングフィールド)〟もまた、公式設定として父親である≪千の呪文の男(サウザンド・マスター)≫、ナギ・スプリングフィールドにそっくりなのだ。皆のその戸惑いは当然のものと云えた。
俺にこれ以上ここで某かを語らなければならない事柄は無いので下がろうとしたら、学園長が註釈を添えてくれた。
「フォッフォッフォッ、確かに真君はナギに似ているが、〝まこと君とナギとの〟血の繋がりは無い。……これは確定事項じゃ」
(うわぁ…。……いや、確かに〝まこと〟なんだけどな、どっちにしろ…)
そう好好爺然と宣う学園長に若干引いた。
確かに〝春原 真として〟だとナギ・スプリングフィールドと血縁関係は無いとは言い切れないが、〝升田 真として〟ならナギ・スプリングフィールドに血縁関係は無いと言い切れてしまえる。
エヴァンジェリンを見れば、彼女もまた呆れた様に学園長を見ている。
……そんなこんなで学園長の暴論ともつかない屁理屈に目をつぶりつつ今年度始めての〝裏ミーティング〟は恙無く終わった。
SIDE END
後書き
超スランプに陥り、ついにストックが切れてしまいました。不定期更新になりそうです。
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