戦国異伝供書
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第十四話 北陸へその四
「さて、わしもじゃ」
「急ぎますな」
「そうする」
森に対して述べた、彼は今も信長の傍にいるのだ。
「そしてな」
「何としてもですな」
「手取川の南はじゃ」
そこはというのだ。
「守ってな、若し権六達が上杉の軍勢と戦になり」
そうしてというのだ。
「敗れてもな」
「あの者達を救う」
「権六達も兵達も優れ者達じゃ」
だからこそというのだ。
「失う訳にはいかぬ」
「だからこそ」
「急ぐじゃ、後ろには猿夜叉もいるしな」
浅井家もというのだ。
「万全の備えじゃ」
「若しもです」
「猿夜叉がおらぬとな」
「こうはですな」
「いかなかったわ」
そうだったというのだ。
「とてもな」
「左様ですな」
「うむ、それでな」
だからこそというのだ。
「猿夜叉の後ろの備えを大事にしつつな」
「そしてそのうえで」
「越前からな」
まさにというのだ。
「加賀に入るぞ」
「わかり申した」
「あと公方様じゃが」
信長は義昭のことも話した。
「あの方はどうじゃ」
「はい、勘十郎様のお言葉では」
旗本の一人が信長に言ってきた。
「今もです」
「怪しい者達と付き合ってか」
「そうしてです」
「各大名に文章も送りか」
「そしてです」
「わしに何かしておるか」
「はい」
その通りだというのだ。
「今も尚」
「そうか、では下手をすればな」
「まさかと思いますが」
森が信長に言ってきた。
「挙兵なぞ」
「わしに対してな」
「されますか」
「そしてそれに呼応してな」
義昭の挙兵、それにだ。
「本願寺や毛利、そしてな」
「武田にですな」
「この度退けてもな」
それでもというのだ。
「上杉にじゃ」
「北条もありますか」
「うむ、あの家もな」
まさにというのだ。
「我等に兵を向けるやもな」
「恐ろしいことになりますな」
「そうなればな」
「公方様を将軍に据えたのは殿ですが」
森は信長に無念そうに述べた。
「しかし」
「それがじゃな」
「殿にそうした振る舞いをされるとは」
「うむ、それはな」
まさにというのだ。
「わしも残念じゃ」
「確かに殿は公方様を神輿にしていますが」
「立てておるな」
「朝廷と同じく」
「しかしじゃ」
それでというのだ。
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