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永遠の謎

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232部分:第十六話 新たな仕事へその八


第十六話 新たな仕事へその八

 そしてだ。こうホルニヒに話すのだった。
「私は戦争は好きではない」
「戦争はですか」
「そうだ、ましてやフランスとの戦争は」
「望みませんか」
「避けられないことはわかっていても避けたい」
 そうだというのだった。これが王の考えであった。
 それを話してだ。王は言葉を一旦止めた。その王にだ。
 ホルニヒがだ。王に問うた。
「ところで陛下」
「何だ、一体」
「陛下は何故ビスマルク卿に敬意を払われるのでしょうか」
 王のその言葉や態度からだ。それを察しての問いであった。
 王はバイエルン王だ。そしてビスマルクはプロイセンの宰相だ。二人の立場は違う。そのうえでだ。ホルニヒがさらにいぶかしむものがあったのだ。
「ビスマルク殿はユンカー出身です。今は爵位がおありですが」
「王である私が敬意を払うにはか」
「御言葉ですが」
「心だ」
 微笑んでだ。王は話した。
「心からだな」
「御心からですか」
「そうだ、心なのだ」
「御心故になのですか」
「あの方は私をわかっておられる」
 敬意と共にだ。話す王だった。
「そして私もだ」
「ビスマルク卿をなのですね」
「わかるのだ。あの方のことは」
「御心で」
「あの方は私に敬意を払ってくれている」
 それもわかるというのだ。王は彼を理解し彼も王を理解している。そうした間柄だというのである。
「私達もまた、だ」
「互いになのですか」
「そうなのだ。そして」
「そして?」
「若しかするとだ」
 王はあの遠い目を見せて述べた。
「あの方は私以上に私をだ」
「陛下を」
「シシィやワーグナーと同じく」
 この二人、王が決して忘れない二人の名前も出た。
「私を理解してくれているのかもな、私以上に」
「陛下御自身よりも」
「そうではないだろうか」
 こう話すのだった。
「若しかしてな」
「そういうこともあり敬意を払っておられるのですね」
「あの方の政治的な行動は好きになれないが」
 それでもだというのだ。
「あの方自体は嫌いではない。むしろ好きだ」
「ですか」
「正しいのだ。あの方は」
 その政治的な行動の話もしたのだった。
「ドイツにとってな」
「ドイツの為に」
「ドイツだけを見ているのでもない」
 そうでもあると。王は語る。
「欧州全体を見て。そのうえでだ」
「考えておられるのですか」
「そうした方なのだ。ドイツはだ」
 そのドイツはだ。どうかというのである。
「あの方が創るだろう」
「新しいドイツですか」
「第一帝国に続き。第二の帝国だ」
 その帝国は何かというのものだ。王は話す。
「プロイセンを中心とした帝国になる」
「第二の神聖ローマ帝国はですか」
「神聖ローマ帝国の後継国家になるか」
 かつてあっただ。その国のだというのだ。
「思えば神聖ローマ帝国は中心が弱かった」
「そうですね。あの国は」 
 具体的には皇帝の権限が弱かったのだ。それが神聖ローマ帝国の弱点だった。そしてそのまま国の歴史を終えているのである。
 
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