DQ3 そして現実へ… (リュカ伝その2)
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レーベ
<レーベ>
アリアハンの城下町を出て3日。
夕方と呼ばれるにはまだ早い時間、アリアハン大陸の北にある小さな村『レーベ』に一行は到着した。
レーベ…この村には目を引く大きな建物も、人々が集まる酒場も無い、極めて質素な村…それがレーベである。
アルル一行はひとまず宿を確保してから村内を見回り出す。
若者3人が、武器屋や道具屋を見て今後の旅に必要な物を購入している中、若干1名は若い村娘をナンパする為、さほど広くない村を探索し歩いている。
「何であの人なんなに元気なの…?」
「俺が知るかよ!アルルの方が付き合いは長いんだろ!」
「数時間の差よ!」
リュカのバイタリティに疲れ切った3人は、早々に宿屋へ戻り旅の疲れを取り去る事に専念した。
翌朝…
まだ人々が起き出さない時間に、目が覚めてしまったアルルは、外の空気を吸いに宿屋から近くの広場まで散歩に出かける。
そこで見た物は…朝靄の中佇む一人の青年の姿だった…
紫のターバンを巻くその青年は、広場の中央に佇み周囲に寄ってきた小鳥達と楽しそうに会話をしている。
その幻想的な光景に見入っていた少女に気付いた青年は、優しく微笑み少女に語りかける。
「やぁ。おはようアルル。今日も可愛いね」
「お、おはようリュカさん…早起きなのね」
アルルも分かってはいるのだ!
リュカにとって『可愛いね』や『キレイだね』は日常挨拶の内なのだと…
それでもこの素敵な青年に、素敵な笑顔で言われると期待をしてしまう…その言葉の裏を…
アルルはまだ出会って数日のリュカにどうしようもない恋心を抱いてしまっている。
少しでもリュカと一緒にいたい…一緒に会話をしたい…そう思うも、これまで年頃の女の子としての生き方をしてこなかった為、何をしていいのか、何を話せばいいのか分からないのである。
そして永遠とも思える沈黙の後、絞り出した言葉が…
「リュカさん!私に剣の稽古をつけて下さい!」
である。
その日から早朝…可能な限り…アルルとリュカは手合わせをする事となった。
無論、リュカは最初は断ったのだが…アルルの若さ溢れる気迫と、リュカ元来の面倒見の良い性格から、済し崩し的に了承してしまったのである。
(キン!)(ガッ!)(キン、キン!)(ガツッ!!)
小さな村に早朝から響き渡る金属音。
アルルの銅の剣と、リュカのドラゴンの杖とがぶつかり合う音。
状況は素人が見ても一目瞭然。
リュカの圧勝である。
全力で打ち込むアルルに対し、涼しげな表情で全てを去なすリュカ…
「はぁ、はぁ、はぁ…」
両膝に両手を乗せ肩で息をするアルル。
「今日はもういいだろ?疲れちゃったよ」
疲れるどころか汗一つかいてないリュカ。
「「ずるい」」
そして二人の手合わせを見つめ、不平を言うハツキとウルフ。
「アルルだけズルイです!私もリュカさんと手合わせしたいです」
「俺も!」
「ちょ、僕もう疲れたから…あ、明日からね…明日の朝からにしようよ!」
結局、パーティー全員と朝の特訓をする事になったリュカである。
<アリアハン大陸>
一行は東に位置するいざないの洞窟を目指しレーベを出立する。
途中、何度と無くモンスターの襲撃に会い、戦闘を繰り返す。
無論、3人で…
しかし3人共理解し始めていた…リュカの圧倒的な強さを…
そしてリュカの強さに頼る事の恐ろしさを…
魔王討伐を目的とするアルル達にとって、リュカ一人に依存しては強敵を相手にした時にパーティーとして戦闘が出来なくなるのではないかと言う事の恐ろしさを…
だが…同時に安心もしている。
本当に危険に陥った時はリュカが助けてくれるであろうと…
根拠はないが3人共、そう信じているのである。
毎度の如く、野営の準備になると張り切るリュカ。
しかし若者3人も手慣れたもので、薪を集めたり食事の準備をしたりと、冒険者として成長していってる。
そして手慣れてくると生まれるのが余裕で、余裕が出来ると会話も弾む。
アルル同様、異性として惹かれているハツキがリュカへの質問を開始する。
「そう言えばリュカさん。以前お話ししてた憧れのシスターとはご結婚を考えているのですか?」
ハツキとしては、意中の男性がフリーであるかを確認する為の質問であるが、当のリュカからしてはそんな意識は微塵もなく、また質問者の少女は自分の娘と同年代の為、それ程深い意味があるとは考えず自身の事を語り出す。
「いや!フレアさんとは結婚を考えてないなぁ…幸せにしてあげたいけどさ…僕、奥さんの事愛してるから!」
「…………………………え!?…い、今『奥さん』って言いました?」
「うん。すんごい美人だよ!未だに彼女以上の美人に出会った事ないから!」
「「えぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」」
突然騒ぎ出す少女二人!
「な、何事!!」
「リュカさん結婚してたんですか!?」
「は、はい!結婚してました!子供も居ます!」
「こ、子供まで…」
ガックリと項垂れる少女二人。
「何だよ!結婚してるのにシスター・ミカエルに手を出したのかよ!」
「おいおい、ウルフ君!お子ちゃまみたいな事言うなよ!僕はこの世界に単身で飛ばされたんだ。従ってこの世界に僕の奥さんは居ないのだ!つまり、フリーダム!!」
本来、この様な発言は最上級のドン引き魔法に類するのであろうが、恋は盲目と言いますか…
この世界ではフリー…
と言う、我欲丸出しの思考に到達してしまった少女二人。
「じゃ、じゃぁ…もし元の世界へ戻れなかった場合は、この世界で新たな家庭を築くつもりですか?」
アルルの希望を込めた質問に…
「イヤ…帰れない事は無いと思うよ…なんだかんだ言っても僕の周りの人々が躍起になって僕を連れ戻そうと画策するだろうから…僕の周囲には結構凄い人々が居るからね!」
リュカの答えにかえって闘志を燃やす少女二人。
そんな空気を読めない男二人は、リュカの思いで話で盛り上がる。
「………でね、プサンはね………」
そして夜は更ける。
アルルとハツキはどのようにリュカの心を掴むのか…
あのチャラい男の心を掴む事が出来るのか…
……………ムリっぽくない?
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