オズのエリカ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四幕その九
「お空には鯨や蟹があって」
「あっ、僕がいるよ」
臆病ライオンは蛍達がライオンの姿を作ったのを見て言いました。
「ライオンが」
「僕もいるよ」
腹ペコタイガーは虎も見ました。
「蛍達が僕達をわかっているんだ」
「それで歓迎して作ってくれているのかな」
「そうみたいね。私達も作ってくれたわ」
アンは自分にジョージ達五人の姿も認めました、見れば夜空に今冒険の旅に出ている皆の姿が蛍のイルミネーションになって出ています。
そしてです、エリカもいますが。
皆の真ん中にいます、エリカはその自分の姿を見て誇らしげに言いました。
「そうそう、私が今回の冒険のリーダーだからね」
「真ん中にいてなのね」
「それでいいのよ」
それこそが相応しいというのです。
「蛍達もわかってるわね」
「このことはそうみたいね」
アンもこうエリカに応えます。
「私もそう思うわ」
「そうよね」
「その証拠にね」
エリカ達を作った別の蛍達が夜空に出てです、一行の蛍の絵の上にでした。
字を作りました、そこにはこうありました。
『ようこそ、エリカと冒険者の方々』
「私が最初にきてるし」
「やっぱり今回の旅はね」
「私が主役なのよ」
「そのことは間違いないわね」
「わかっていてくれて何よりよ」
誇らしげに言うエリカでした。
「本当にね」
「そうね、そのことはね」
「あんたもわかるでしょ」
「ええ、私もそう思うわ」
「夜まで残ってよかったわ」
「そのこともそう思うわ」
「そうよね、いやあいいものを観られて何よりも」
エリカはすっかり満足しています、そしてです。
バーベキューのお肉、よく焼けてソースで美味しく味付けされたそれを食べつつそのうえで自分達の周り、蛍の光で照らされた駒の国を見て言いました。
「街も奇麗になってるし」
「建物も道も人も照らされてね」
「凄く奇麗ね」
「そうね、あらゆるものが光ってね」
エリカはうっとりとして言うのでした。
「素晴らしいわ」
「本当にそうね。私達のところにもね」
蛍達は皆のところにも来てです、そうして。
皆の周りをふわふわと漂って照らします、アンはその灯りが手元を自然に照らしてくれるのを見てまた言いました。
「来てくれてるし」
「うっ、これは」
ふとです、エリカはでした。
急にうずうずとしだして自分の目の前を通った蛍に前足を出しました、そのうえでこう言ったのでした。
「手が出るわね」
「あっ、前を通った蛍はね」
「見ない方がいいよ」
臆病ライオンと腹ペコタイガーがエリカに言いました。
「どうしても前足が出るから」
「ネコ科の生きものの習性でね」
「そうなのよね、見ているとね」
まさにというのです。
「ついつい前足が出るのよね」
「貴女は特にそうよね」
「もう無意識のうちによ」
アンに応えつつもまた前足を出したエリカでした。
「こうして前足が出るのよ」
「猫ね、本当にね」
「それも特に猫らしい猫だからね」
「前足が出るから」
それでというのです。
「止められないわ」
「だからこうした時は観ない方がいいよ」
「目の前に来た蛍はね」
また言う臆病ライオンと腹ペコタイガーでした。
ページ上へ戻る