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永遠の謎

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204部分:第十四話 ドイツの国の為にその四


第十四話 ドイツの国の為にその四

 しかしそれでもだった。彼はここでまた言うのだった。
「その為には私は何でもしよう」
「では。次の戦争でも」
「仕込まれますか」
「そうだ。色々と考えておこう」
 言いながらだ。ふとだった。
 こんなこともだ。彼は言った。
「あの御仁は確かに謀略を好むが」
「そこがかえってだと」
「そう仰るのですね」
「これも昔の清の言葉だったか」
 またこの国のことが話に出る。
「策士策に溺れるだ」
「それですね」
「そこが狙い目ですね」
「策に溺れる様では駄目だ」
 鋭い目で。それを否定する。
「策略は必要だからこそ行うものだ」
「では。それを好んで使い溺れるのは」
「かえってなのですか」
「破滅の元だ。私はそこを衝こう」
 冷静な声でだ。ビスマルクは述べた。
「次の戦争ではな」
「そして今は」
「どうされますか」
「暫くは軍人の仕事だ」
 彼の手を離れている。そうだというのだ。
「しかしまた私の仕事が来る」
「閣下の」
「そのお仕事がですね」
「戦争を行うのは軍人だ」
 誰もがそう言う、言わずもがなの事実であった。
「しかしはじめるのと終わらせるのはだ」
「閣下のお仕事だと」
「そう仰るのですね」
「その通りだ。それが私の仕事だ」
 まさにそうだと。ビスマルクはそのことを完全にわかっていた。
 そのうえでだ。彼はこの戦争をはじめたのであった。プロイセンとオーストリアの戦争は幕を開けた。そしてそれに対してだ。
 バイエルン、この国はだ。どうかというとだ。
 確かにオーストリアについた。しかしだった。
 兵は動いていなかった。戦争に積極的に加わろうとしない。それを見てだ。
 まず各国の要人達がだ。いぶかしんで言うのだった。
「何っ、バイエルンは動かない?」
「どういうことだ?」
「何を考えているのだ」
「オーストリアについたのではないのか」
「それでもか」
「動かないというのか」
「何故だ?」
 それがだ。彼等はどうしてもわかなかった。
 それでだ。彼等はだった。
 いぶかしんでだ。バイエルンの考えをわかりかねた。そしてその中心にいるとわかっている人物のこともだ。考えられるのだった。
「あの王はどうするつもりなのだ」
「従姉殿がオーストリア皇后だというのに」
「同じカトリックだというのに」
「プロイセンが嫌いではないのか」
「対立していた筈だ」
「それでついたのではないのか」
 これはわかるのだった。
「それで兵を動かさないとは」
「あの王は怖気付いたのか」
 こうした考えも出て来た。
「戦争を好まないというが」
「それでか」
「それで動かないというのか」
「まさか」
 こうした意見も出てだ。やがて。
 その意見は支配的となりだ。王に対する嘲りとなった。
「あの王は腰抜けか」
「ワーグナーと青年にばかりご執心で」
「それで戦争からは逃げる」
「戦いこそ男の仕事だというのにだ」
「それを避ける」
「とんだ王だ」
 そしてこの言葉はだ。バイエルン、彼の国でもだった。
 
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