俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
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いい加減に終われネタ集
前書き
おまけ・昔感想で書いたアレ。
ショートコント「ケッコンしたい!」
アズ「ロキたん……俺、君にずっと言いたいことがあったん……ゲブぅッ!?」
ロキ「うおおおおお!?アズにゃんが血ぃ吹いた!?しっかりせぇ、傷は浅いで!?」
アズ「俺のプロポーズ、受け取って……くれ……がくっ」
ロキ「アズにゃぁぁぁ~~~~んッ!!」
ユアーラーヴフォエーヴァー♪ヒートミーヲトージテー♪キーミヲーエガークヨー♪
ロキ「………はっ、もしかしてこれ『血痕死体』っちゅうこと!?ちょっ……その洒落ぇ伝えるためだけに死んだんか!?何でプロポーズ後のことまで考えてへんね~~~~んッ!?」
アイズ「………?アズ、ロキと結婚したいの?(血痕死体の部分が伝わってない)」
アズ「…………このまま死にたいよロキたん」
ロキ「…………後追いしてええかアズにゃん」
リヴェリア「…………いっそそのまま3日ほど死んでてくれ」
レフィーヤ「えっと……お、お似合いだと思いますよ、二人とも!」
ロキ「あかん、この子も分かってへん……!」
アズ「くそう、練習不足か……不覚!『O-1《オラワン》グランプリ』への道は遠いな!」
リヴェリア「そんな大会はないッ!!」
人類は決して一つにはなれないが、共通の敵を前にして手を取り合うことはあります。
それは一時しのぎに過ぎないのだろうが、それでもオラリオの全ての戦力は生きる為の戦いを繰り広げていました。
アフラマズダ派の『違法改造』――天界のルールを無視して過剰な力が注がれたファミリア達の爆発的な戦闘力に加え、常軌を逸した練度で攻めてくる改造魔物による攻撃に最初は押され、死者も出すオラリオ勢力でしたが、彼らとの最大の違いにして優位性である実戦経験の差と連携が次第に状況を覆していきます。
更に、アフラマズダ派はオーネストの苛烈すぎる猛攻で戦意を喪っていきます。
神の力の使用を一切躊躇わなくなり、あらゆる障壁を呪断するアザナシノツルギで万物を断絶し、周囲の味方を見境なく守り、更に魔法により身体変化によって物理、魔法共に一切攻撃が通用しません。
※オーネストの変化能力はテティス譲りの力。あちら側の世界に於いてテティスがあらゆるものに変化してペレウスから逃げた伝説をもとにしています。
圧倒的な力、次々に倒されていく幹部格。ベルたち弱小組も上位冒険者たちの指導によってしつこく喰らいついてくるなど、オラリオに趨勢が傾いていきますが、オーネスト含む頭脳派はまだ警戒を解きません。まだアフラマズダがいる。まだアズの救出が成されていないからです。
オーネストは作戦前にアズの連れていた謎の存在『死望忌願』の正体に関する私見を一部の司令官クラスに語っていました。
輪廻転生、天界冥界のない世界。魂という概念に付与された意味が薄い、或いは存在しない世界。すなわちあちら側、我々が現実と呼ぶ世界。『死望忌願』の正体はつまり、アズの来たあちら側に存在する「死」という絶対法則がアズという異物を通してこちらに具現化したものだといいます。
オーネストの仮説によると、本来あちら側とこちら側は明確な壁が存在し、決して混ざり合う事のない、世界の法則そのものが違う場所です。故に『死望忌願』はあちら側の世界では実体化しません。既に法則として存在しているからです。
しかし、オラリオ世界に於ける死はこの死とは趣が大きく違う。根幹で言えば別物と言っていい。それが『死望忌願』をオラリオにて実体化するものと変えたと言います。
まずアズライールという男が、奇跡的な確率を通り抜けて本来通れない筈の世界の壁を越えて魂だけの姿でこちらに来ます。この時、肉体はまだあちら側で生きているとオーネストは推測しています。本来なら魂だけの存在は形になれませんが、オラリオ世界とあちら側は反転世界と言ってもいい、決して交わらないのに密接な関係にあります。
しかし、オラリオ世界は肉体より魂の比率が強い世界であるために、本来は掠れる程しかなかった魂がオラリオの法則に引き摺られて肉体を構成。「ない」ものが「ある」ものになったと思われます。
しかし、ここでアズ本来の肉体が生きていることが話を拗らせました。その結果、アズはあちらと向こうと意識が連続したままになり、肉体と魂の線が世界の壁を越えて繋がったままになります。もしこちら側でアズが死ねば、かりそめの肉体が崩壊してあちら側の体にアズが戻って終わりです。そしてこうなると、こちら側からあちら側への干渉は不可能になります。
これは黒竜編でオーネストがアズの意識を取り戻すために「弁」がどうこう言っていた部分です。アズが自分の魂を手繰って垣間見た場面、死に瀕したときに会った誰かは、あちら側のアズの肉体に意識が一瞬戻っていたからです。
ともかく、アズはあちら側の人間でありながらこちら側に来ました。しかしアズの魂の法則は半分オラリオ、そしてもう半分があちら側。そして生きている以上は対極にある死から逃れられない。よってあちら側の死、アズだけの死である『死望忌願』は逆転的にこちらでは物理的な力を持つものとなりました。
「――待って!それじゃ、アフラマズダの儀式とやらは!!」
「奴は気付いたんだろう。あちら側に神なき世界があることを。そして神なき世界で生まれた法則は、こちらの神々を殺しうることを」
神に対する決定的な戦力。それが、現れる可能性をオーネストは説きました。
「これは俺の想像だが、恐らくアズはあちら側にいた頃から少なからず死に近い側の精神を持っていたんだろう。だから奴のあれは『死望忌願』となった。だったらアズ以外の奴が同じことをすれば、『死望忌願』とはもっと違うものが出てくるんじゃないか?」
――もしかしたら、『死望忌願』以上に厄介な何かが。
オーネストはついにチクシュルーヴの最深部に辿り着きますが、そこには予想通り意識のないアズが囚われていました。そしてその前に立つのはアフラ・マズダ。彼は儀式を成功させ、その身に『死望忌願』と同じ概念存在、『存在意義』を身に宿していました。
レゾンデートルの姿は死神然としたデストルドウと正反対の直線的で無駄を削ぎ落された、ロボット感のある姿。それはアズの中にある『あちら側』にアフラマズダの持つ『絶対の裁定者』という現実では形になり得ないものを投影した結果でした。
オーネストの人生の全てを知っているアフラマズダはオーネストに様々な声を投げかけますが、オーネストは最早彼の事などどうでもいいとばかりに躊躇いなく殺しにかかります。笑みを崩さず迎撃するアフラマズダ。神の力や武器を全力で使いこなして攻めるオーネストですが、レゾンデートルの内包する「絶対性」という法則に阻まれて決定打を撃ち込めません。
更に、戦闘でレゾンデートルの力が振るわれる程にアズのこちら側の法則に綻びが生じ、アズの肉体は段々とあちら側、すなわち重傷を負った姿に近づいていきます。それでは最終的にレゾンデートルが維持できなくなるのですが、同時にデストルドウを形として宿したアズがこちらで完全な形になる事は、レゾンデートルをこちらの世界に完全に固着させる事にもなります。
今は不完全な状態での顕現ですが、有限の魂を削るデストルドウに対し、神という途方もない魂を糧とするレゾンデートルは常に全力を出せるようになり、そうなるともはや攻撃範囲はオラリオという街そのもの飲み込むほど拡大してしまいます。
アフラマズダは闘いながらも外の人間たちにさえ実体のない分体を送り声をかけます。ベルの生い立ち、リリの抱えた闇、ヴェルフを取り巻く薄汚い声……それだけにとどまらず、この戦いに参加するあらゆる者の不幸を語り、そんな不幸を生み出す世界を自ら存続させ続ける事を選ぶのか、と問います。
そして、その最大の不幸の塊とも言えるオーネストにも、問います。
対し、オーネストの答えは単純明快でした。
「お前、バカか。闇も悲劇も不幸もない世界?平等な世界?作りたきゃ自分の日記の隅にでも作ってろ。血反吐吐いて裏切られて泥を舐めて……それでも目を開いたらそこに現実って奴が転がってて、そこを命ある限り彷徨い歩く。それが、人間が生きるって事だろう」
彷徨うこと、それが人の生。
自分を貫き通す事を好むオーネストにとって、正解など存在しないあやふやな世界であるからこそ、その世界を自分の足で歩み、悩み、後悔し、それでも続け、最期に自分が自分であり続けたと言う事が出来る人生こそが至上。
誰かに歩かされる人生ならば、歩かせようとする何かを殺す。
すべてが平等だとのたまう世界なら、平等であることが自分の邪魔をするなら平等を破壊する。
きわめて簡単に言うと、アフラマズダの「神なき世界」は、押しつけがましいのが気に入らない。
「人様の人生に口出ししてんじゃねえよ。俺は、例えオラリオの連中が全員ウンと頷いたとして、お前ののたまう未来はいらないね」
「そういう、事だわな……そりゃ、俺らにはいらないモンだ」
アズが、全身がずたぼろになりながら目を覚まし、そう言いました。
瞬間、レゾンデートルの力が急速に弱まっていきます。
「おぉい、オーネスト。悪ぃが俺、あっちに帰らなきゃならんみたいだ。こいつも一緒に連れてくわ」
『なっ――アズライール!!貴方はそれがどういう意味か理解しているのか!?君は、もう二度とこちら側には来られない。あのスラムの幼子たちとも、リリルカとも、ゴースト・ファミリアの面々とも、ロキとも!!――アキレウスとも二度と再会出来なくなるんだぞ!?』
「煩いガキんちょだな。いいんだよ、俺がいくって決めたんだから。そういう訳だから……悪ぃ、あと頼んだ」
「ふん、猛烈に断りたいんだが?お前は結構そういうところがあるよ。面倒くさいことを俺に押し付けて、自分はどっかに享楽に出かけてる」
「あっはは、そういう性分なもんで。なに、そんな俺と知ってて友達になったんだろ?」
「……てめぇなんぞ絶交だ、なんて言わねえぞ」
オーネストはアズがもう全ての覚悟を決めて、後悔のない選択をしたことを悟っていました。だから呼び止めはしませんでした。
『厭だ!厭だ厭だ厭だ厭だ厭だッ!!あれだけ時間をかけたのに!!まだ何一つ成し遂げられていないのに!!こんなにも世界を、人を愛しているのにッ!!何故、何故だ!!どうしてみんな負ける!?どうして自分から愛を捨てる!?どうして救済が救済であると分かっていて踏み躙るッ!!』
「まぁまぁ、落ち着けよおこちゃま。あちら側も結構いい所だし、嫌なら神の座捨てて、街頭演説でもがんばれよ」
『やめろ、厭だ……厭だぁぁぁぁああああああああああああああああああああッ!!!』
絶叫するアフラマズダを押さえつけたアズの姿が少しずつ透けていきます。
と、オーネストが口を開きました。
「言うだけ言って逃げられると思うんじゃねえぞ。あの世だろうが異世界だろうが、俺もメリージアも時空の果てまで追いかけて連れ戻してやるからな」
「……うん、わかった。ジジイになってもずっと待ってる」
「そんなに時間かけるか。長くて5年だ」
アズはあちら側の世界に戻り、両足欠損、右目欠損、全身傷だらけの状態ながら奇跡的に生き残り、治療を担当した医者を驚愕させます。その背中には、まるで刺青のように見える痣が微かに残ったまま。
意識を取り戻したアズ――本名、九宮出流は、オラリオでの事を思い出してか自分の命と真剣に向き合って生きていく道を選び、サイバネティクスエンジニアを目指して勉強を始めます。死んでもいいやなどと言わず、周囲とのつながりを大事にし、その片手間でパラリンピックに参加してメダルを量産しながら。
オーネストはオラリオを再構成すべく様々な神、ギルドと手を組んですぐさまオラリオという街を再構成。三か月足らずで復興し、世界最大の欲望の街は復活しました。
また、この件によってダンジョンの主である「魔王」は地上の神を間接的にとはいえ守ったことを認められます。魔王はもともと神に虐げられた精霊が神に匹敵する力を得た存在。神の謝罪とその存在を認めることを、魔王は一応受け入れました。
ただ、魔王は神を許した訳でもないし自らが神の座に座ることもしませんでした。ただ、好きにさせてもらうとだけ言いました。魔王はアズとその親友オーネストは信じていても、他を信じた訳ではありません。ただ、ほんの少しだけ人に興味が湧いた魔王は時折街に現れ、その間だけダンジョンの機能は停止するようになりました。
ダンジョンが停止すればダンジョン内で魔物も狩れないし素材も回収できません。その日の分だけオラリオの金の周りは悪くなりましたが、死者も多少は減りました。
ちなみに魔王はオーネストに「一番効率よくダンジョンから人を追い出すには、金と敵の在処たるダンジョンを100年ほど封鎖しちまえ。経済的にオラリオは滅ぶぞ」と教えています。ダンジョンが機能しなくなれば魔石ビジネスは崩壊し、冒険者がレベルアップする手段も事実上絶たれます。
死者が減ると天界もあまり文句を言えませんし、地上の神は本腰で攻め込まれるのも経済的に干上がらせられるのも怖いので魔王に良いとも悪いとも言えません。ただ、オーネストは「世界はこのまま緩やかに魔物と離れていく」、そんな気がしました。
そしてオーネストは自らの神力を利用して、アズのいるあちら側への干渉の研究を続け、その傍らにはゴースト・ファミリアの面々が……。
とまぁ、そんな感じで物語は幕を閉じる、というのが私の作ったストーリーです。
以下、細かい話。
アズに現実世界側で寄り添っていた女の子とは親しい仲ながら結婚とかには至ってません。なにせアズというかイズルくんは待っている訳で、その奥にメリージアがいるのも理解してる訳なので。
また、オーネストとの契約がまだ体に残っているので能力は一般人を超えています。
「お前の車いす捌きはおかしい、って?いや、そんなこと言われても……」
オーネストの研究ですが、研究開始から2年後には世界の壁を超えることに成功してるので、再会は結構早そうです。リリもこの研究の副主任くらいなポジまで出世してます。ロキも個人的に協力してる模様。
「やっぱこっちの世界にYoshimotoの風を吹かすにはアズにゃんおらんと始まらんわ!」
「そんな訳の分からん風を吹かすな、この馬鹿主神」
「タコヤキソースの匂いしそうな風だな……」
アフラマズダは記憶喪失で何の変哲もない少年としてこちら側に飛ばされてます。世界の壁を超える過程であらゆるものをはぎ取られたため、レゾンデートルも喪っています。記憶を取り戻すことも、あちら側に戻らない限りは二度とありません。
「ゾロアスター教……アフラマズダ……うっ、頭が……」
リリは変身魔法の大先輩たるオーネストの指導でメチャ強くなっています。
ヴェルフは「己の魔力を吸って魔法の破壊力を出す」という壊れない魔剣を開発してます。
ベルはなんやかんやで成長途上。ハーレムルートとは言い難いですが、充実人生です。
あとゼウスの事もなんかする気だったけど忘れました。
あとメリージアはアズが行った後身ごもってるのが発覚して出産し、4児の母です。
とある事情でアズとオーネストの二人と行為に及んでました。あの野郎共……。
ちなみに二卵性双生児四つ子です。しかも綺麗に男女に別れてます。普通アマゾネスが男の子を出産することはあり得ないのですが、色々と複合的な事情があってこうなったのか、或いはメリージアの執念的な何かがあったのかは不明です。あの野郎共……。
ちなみにこの小説の裏設定として「アマゾネスが産んだ男、すなわちアマゾーンは凶兆の兆し」的な口伝があるというのがあります。結局使わなかったアイデアなので、誰か再利用してください。
なお、エンディングは残り二つ考えてました。
一つは現実世界と完全に縁を切ってオラリオ側の世界の存在になること。この場合、最終的にはレゾンデートルとデストルドウが相打ちになることで双方特異的な力が消滅します。
ハッピーエンドかと思いきや、向こう側のアズが死ぬのでアズに寄り添っていた女の子は世に絶望します。彼女はあちらではいじめを受けていてアズ(イズル)だけが心の支えで、その心の支えが大災害の際に自分を庇った傷によって死ぬ、という事になっているからです。
女の子は死後の世界でイズルに再開しようと身投げします。
……そして運命のいたずらで女の子はオラリオに辿り着き、アズ達が拾ってしまうと。結局ハッピーエンドじゃねーか。
もう一つ、アズはアフラマズタの力を消失させるために自らの力を『殺し』、消滅します。
殺された力は、あちらとこちらの間という曖昧な世界に四散。アフラマズダはどうあがいても負けますが、アズは犠牲に……。
なったかと思われましたが、オーネストとアズの『契約』は切れていません。オーネストはアズの死そのものが極めて曖昧な世界で行われたせいで、まだ死が成立しきっていないと推測。つまりまだ間に合う。「四散したアズの力を全て回収すればアズは元の形を取り戻し、復活する」と仮説を立てます。
希望的観測ではなく、オーネストはそれが出来ると確信し、皆にしばしの別れを告げます。
「あの馬鹿を連れ戻してくる。なに、神の力を使うしあっちは時間の概念が曖昧だ。お前らにとっては帰ってくるのは一瞬だろうな」
そしてオーネストは契約の気配を辿り、数多の並行世界にてアズの欠片を探す、果てしない旅に出るのでした……。
今度こそ、全部書ききりました。これにて本当に、「俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか」で書きたかった話は全部終了です。人様にお見せできる短編とかも全部処理しました。もう何も出てきません。
投稿時点でお気に入り登録してくれた人が、たぶん98名。総合評価1,072pt。
これほど自らが地雷だと思う要素をふんだんに取り込み、更に書きたい事を書きたいだけ書き殴った作品にこれだけの評価が付いたという事自体が驚愕の事で、読者の皆さんには感謝の言葉しかありません。
同時に、読んでて疲れる文章だらだら書きまくってごめんなさい。読みやすさは度外視してたのでかなり疲れさせてしまったであろうことは存じています。それでも、黒竜編は個人的には今まで挑んだことのない方向性への挑戦だったので、割と書けて良かったと思っています。
もう二次創作を昔ほど書けなくなった古臭い作者ですので、これ以上多くは語らず終わろうと思います。皆さん、ありがとうございました!
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