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読書百回

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第二章

 先生は大柄で痩せて額が広い理知的な顔で京に話した。
「それならもうね」
「もうっていいますと」
「うん、教科書を隅から隅まで何度も読むんだ」
「それだけですか?」
「それで足りないなら書いてもいいし」
 教科書をというのだ。
「もう何度もね、あと数学でも問題をね」
「教科書に出ている、ですね」
「何度も解くんだ、参考書もね」
「そっちもですか」
「何度も読む、覚えたと思っても」
「それでもですか」
「読むんだよ」
 教科書、そして参考書をというのだ。
「何度も読むんだよ」
「それだけですか」
「そうだよ、読んで書きたいなら書いて」
「隅から隅まで」
「何度も何度も、それこそ百回でもね」
 それだけでもというのだ。
「読んでいくんだ、問題も解いていくんだ」
「そうしたらですか」
「絶対にだよ」
 それこそというのだ。
「成績は上がるから」
「平均点九十点もですか」
「いける筈だよ」
「それじゃあ」
「それでやってみるかな」
「はい」
 実際どうすべきか困っていたのでだ、それでだった。
 京は昭鋭の言う通りにやってみた、教科書も参考書も隅から隅までだ。
 読んで書いて全ての問題を何度も解いた、そうして期末テストに挑むと。
 自分でも驚いた、テストの答案がだ。
 見えた、それで後は書き込むだけだった。中間テストの時とは比べものにならないまでに答案に書き込めた。
 それで全て終わってだ、テストが返って来ると。
「全部の試験で九十点超えたよ」
「おお、それは凄いな」
「やったわね」
 両親は二人で夕食の時に我が子に応えた。
「遂に悲願達成ね」
「そうなったんだな」
「じゃあ合計得点もね」
「八百十点か」
「超えたよ、よかったよ」
 自分でも言うのだった。
「本当にね」
「そうだな、しかしな」
 ここで父が息子に問うた。
「どうして点数上げたんだ?」
「そうね、勉強の時間も増やしてたみたいだけれど」
 母も言ってきた。 
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