永遠の謎
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167部分:第十一話 企み深い昼その九
第十一話 企み深い昼その九
「彼等だけです」
「そして陛下もですね」
「そうです。私も夜の世界にいたいのです」
またしても遠くを見る目になってだ。述べたのであった。
「月の光の下に」
「ですが陛下、それは」
「なりませんか」
「陛下は。日輪です」
それだというのだ。王はだ。
「御自身が眩きを発せられているのですから」
「だから夜にはいられないと」
「夜の光と昼の光は違います」
ワーグナーは今は心から気遣う目になっていた。その目で王に対して語るのだった。
「貴方は夜におられるべきでなく」
「昼の世界にですか」
「はい、それが王というものです」
こう王に話すのだった。
「ですから。それは」
「そうですか」
ワーグナーのその言葉にだ。王は暗い目になった。
だがそれでもだ。こう言うのであった。
「貴方がおられれば」
「私がですか」
「はい。昼の世界にもいられるでしょう」
これが王の言葉だった。
「あの企み深い昼の世界にも」
「トリスタンですね」
「そうです。トリスタンです」
今はだ。トリスタンにも感情移入する王だった。少なくとも彼はそう思っていた。己はトリスタンである、そう思っていたのだった。
「私は彼にも想いを馳せます」
「そうなのですか」
「しかし私は昼の世界にいるべきですね」
「その通りです」
ワーグナーはまた王に告げた。
「そうあるべきです」
「左様ですか」
「はい、私はそう思います」
「わかりました」
王はワーグナーのその言葉に頷いた。そうしてそれを最後にしてだ。
ワーグナーの屋敷を後にした。そのうえで従者と共に王宮に帰った。
屋敷に残ったワーグナーはだ。コジマに対してだ。王が残した香りの中でだ。こう言ったのだった。
「ああ仰っていてもだ」
「何かあるのですか?」
「陛下は。夜に入られるだろう」
こうコジマに話すのだった。
「あの方はな」
「あなたが止められてもですか」
「そうだ。あの方が昼におられるべきなのは確かだ」
それはだというのだった。
「しかし。夜の世界にだ」
「入られようとしているのですか」
「昼の世界の。人々の声に傷つけられている」
あまりにも繊細が故に。そうなっているというのだ。
「その為にだ」
「夜の世界にですか」
「私以外に。誰かがあの方を理解し導けば」
どうなるかと。ワーグナーはそのことも話す。
「昼の世界に留まれるだろうが」
「そうでなければ」
「イゾルデになる」
ワーグナーは顔をあげた。そのうえでの今の言葉だった。
「そうなられる」
「トリスタンではなくですね」
「やはりあの方はトリスタンではない」
無論ローエングリンでなくともいうのだった。
「イゾルデなのだ」
「その夜の中に入りそして」
「いずれはな」
「そうならない為にはですね」
「私が必要と考えておられる。しかし」
それでもだと。彼はまた話した。
「それは」
「若しかしたらですか」
「私は負けはしない」
ワーグナーはその言葉に怒りも滲ませていた。
「誹謗中傷にはだ」
「そうですね。絶対に」
「あの者達は何なのだ」
あくまで自己中心的にだ。彼は考えていた。
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