星のパイロット
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第二章
「それで部室にも持って来たんだ」
「何でわざわざ持って来たのよ」
「いや、脚本にインスピレーションになるかなって」
「そう思ってなの」
「持って来たんだ」
そうしたというのだ。
「今日はね、けれどね」
「けれど?」
「観ていると悲しくなるね」
「そういえばちゃんと塗装もしてるわね」
「その時の仕様にね」
「作者さんが乗っていた時の」
「そうしたんだ、本格的に」
つまり完全に偵察型として作ったというのだ。
「塗装だけにしてもね」
「じゃあその飛行機に実際に」
「あの人は乗っていてそして」
「戦場を飛んでいて」
「死んだんだ、死んだ時どう思ったかな」
琉星は作者、テグジュペリのことをさらに思った。
「もっと飛びたかったか書きたかったか」
「どちらかっていうのね」
「俺本当に好きだから」
星の王子様、この作品がというのだ。
「髪の毛を染めてるのも脚本に砂漠出したいのも」
「星の王子様よね」
「この作品からだから、だからね」
「作者の人のことを考えずにいられないのね」
「事故を起こしてもう乗るなって言われてもね」
それでもというのだ。
「何とか空に戻った様な人だったし」
「飛行機とお空がそこまで好きだったの」
「よく飛行機野郎っていうけれど」
日本独自の言葉ではある、飛行機に情熱を注いで生きている人達のことだ。だがこうした人はやはり世界中にいるのだ。
「あの人もそうだったんだ、夜空も見たし」
「夜に飛んだ時に」
「砂漠から夜空も見たしね」
星の王子様そして琉星が書く世界の様にというのだ。
「そう思うとね」
「作者さんのことを考えずにいられないのね」
「無念だったのかな」
もっと飛びたい、書きたかったからだというのだ。
「やっぱり」
「それはわからないけれど」
女子部員もまたパイプ椅子に座っていた、そうしてプラモデルが置かれているテーブルを琉星と一緒に囲んでそのプラモを観つつ彼に話した。
「あんた本当に星の王子様好きよね」
「好きなんてものじゃないよ」
それこそという返事だった。
「俺の脚本と髪の色でわかるよね」
「それさっきも話したけれど」
「人生のモチーフみたいなものだよ」
琉星のそれのというのだ。
「だからね」
「好きってレベル超えてるわね」
「俺にとってはね」
「天国の作者さん今のあんた見てるわよ」
女子部員はここまで聞いて彼に微笑んで言った。
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