レーヴァティン
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第七十二話 大商人その四
「やっぱりな」
「それは当然でござろうな」
「脂肪が減って筋肉が増えて」
「そうなったでござるよ」
「筋肉は思いからな」
「けれど別に思うことはないでござるよ」
この場合体重が増えてもとだ、進太は久志に話した。
「というか体重はでござる」
「実はあまり意識しなくていいんだったな」
「何をするにあたってどういった体格かでござる」
「そのことが大事でな」
「そうでござる」
まさにというのだ。
「肥満も脂肪率の問題でござる」
「そうだよな」
「筋肉、適度なそれで体重があっても」
「いいな」
「むしろ軽い方がでござる」
「筋肉がないってことでな」
「そうでござる、しかし筋肉があり過ぎても」
そうした場合についてもだ、進太は話した。
「困るでござるよ」
「筋肉が重かったり邪魔になってな」
「動きが鈍くなるみたいでござる」
「そうだな、じゃあ今の体格でいいか」
「そうなるでござる」
こうしたことを話しながらだ、そしてだった。
一行はサウナで酒を完全に抜いて身体も奇麗にしてからだった、男女共に合流をしてだった。そのうえで。
その商人の店に行った、そこは見事な大店で久志も目を瞠って言った。
「おいおい、本当にな」
「大店ですね」
夕子も彼の横から言ってきた。
「まことに」
「ああ、このセビーリャでもな」
「一番のお店ですね」
「働いている人もお客さんも多くて」
「繁盛しているのは明らかです」
「金貸しして成功するとな」
「やはり大きいですね」
夕子は神妙な顔で述べた。
「まことに」
「それで他の商売にも進出してか」
「かなり成功しているといいますが」
「それでか」
「この規模のお店になったのですね」
「ああ、ただここはお店であってな」
それでもとだ、久志はその繁盛している大店を見つつ述べた。
「それでもな」
「人が住んでいる場所ではないですね」
「家じゃないな」
「そうですね、では」
「ああ、やっぱりいい屋敷も建てたんだろうな」
店の売り上げ、それでというのだ。
「やっぱり」
「そうですね、しかし今の時間は」
「店やってるってことは」
「お店の主ですから」
「外に用事がない限りいるな」
「そうです、それでは」
「今から行くか、店に」
「そうしましょう」
夕子が応えてだ、そしてだった。
一行は店に入った、そうして久志が初老の店で働いている者に声をかけた。
「ちょっといいかい?」
「はい、何でしょうか」
「お店の旦那さんいるかい?」
「マッダレーナですか」
「ああ、いるかい?」
「はい、おられます。ただ」
「ああ、今あんたマッダレーナって呼んだな」
久志は男のこの言葉に問うた。
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