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ゴジラ対エヴァンゲリオン(仮)

作者:蜜柑ブタ
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第三十六話  サードインパクト

 
前書き
サブタイトルの事が起こります。
ですが、不完全です。 

 
 弐号機を連れて空へ飛んだエヴァンゲリオン量産機達を、機龍フィアが見送るように見上げていた。
「何をやっているんだ、椎堂ツムグ!」
 ネルフの職員達の警護にまわっていた前線部隊が叫んだ。
 空へ舞い上がったエヴァンゲリオン量産機達は、弐号機を支えているのを除いて、奇妙な布陣を取り始めた。
 まるで何かの図形のようなその形。
 それがセフィロトの樹の形であることに気付く者は…。
「まさか、ゼーレは、儀式を強行しようというの!?」
 いた、リツコだ。
 するとエヴァンゲリオン量産機達から光が放たれ始め、弐号機を支えていたものが弐号機から離れていった、弐号機はなぜかそのまま空中に固定されており落ちることはなかった。
 量産機の光は、量産機同士を、そして弐号機を繋ぐように伸び、弐号機を中心としたセフィロトの形になった。
「儀式を止めさせないと…。機龍フィアと連絡は取れないの!?」
「ダメです、通信が閉じられていて繋がりません!」
 リツコが地球防衛軍の軍人達の間に割って入って叫ぶと、オペレーターがそう答えた。
「まさか、本当に彼は…。」
「何を知っている? 何が起ころうとしているんだ!」
「このままではサードインパクトが起こります!」
「なんだと!?」
「椎堂ツムグが、知らないはずがないのになぜ見送ろうとしているの!? 自分が死ぬことと関係があるというの!?」
 サードインパクトの発生を見守っているツムグの様子に、リツコはわけがわからないと叫ぶ。
 まさかこのまますべての人類もろとも自殺する気かとリツコが考え始めた、その時。

 凄まじい雄叫びとともに、白い熱線が飛んできた。

 九体のエヴァンゲリオン量産機達は、展開しているS2機関のエネルギーの向きを一点に集中し、極厚のATフィールドを張って熱線を防ぎきった。
 海から陸に上陸したゴジラが進撃してくる。
 機龍フィアの顔がゴジラの方に向いた。
 そして横にずれるようにゴジラに道を譲るかのようにその場から遠ざかっていく。
 ますます分からないツムグの行動。
 ツムグは、何を考え、何を狙っているのか。元々何を考えているのか分からないところが多いのだが今回ばかりは分からないで済ませられない。
 サードインパクトが発生しようとしているうえに、ゴジラまで来たというのに何もしないのだ。
 こんな時についに裏切りか!?っという声も上がる。
 ツムグが元々人間の味方としてはびみょ~な立ち位置ではあったが、ここに来て裏切りを起こしたのかと最悪の事態が想定された。
 しかしそうだとしても妙すぎる。なぜこのタイミング? そしてなぜサードインパクトを見送り、ゴジラまでもを見送ろうとしている。本気で人類を裏切ったのならサードインパクトを阻止しようとするゴジラすらも邪魔なはずだ。
 それともゴジラに味方したのだろうか?
「分からん!!」
 軍人の一人が頭を抱えた。





***





 進行していくサードインパクトの儀式を、ゴジラが見上げた。
 あれほどのこと(セカンドインパクト)をやっておいて、またも同じことをやるつもりかと怒りをあらわにする。
 ゴジラの背びれが赤く光った時、エヴァンゲリオン量産機の一体が大ぶりの刃をゴジラに向けて投げた。
 それはゴジラの眼前でロンギヌスの槍の形に変形した、ゴジラはそれを顔を横にずらして避けた。ロンギヌスの槍のコピーは、ゴジラの後ろに刺さった。
 そしてエヴァンゲリオン量産機達が、次々にロンギヌスの槍のコピーをゴジラに向けて投擲しだした。
 ゴジラは、フンッと鼻を鳴らし、体内熱線を放ってロンギヌスの槍のコピーを弾いた。四方八方、ゴジラを囲うようにロンギヌスの槍のコピーが地面に刺さる。体内熱線を喰らってもロンギヌスの槍のコピーは破壊できなかった。ゴジラが軽めの威力でやったためか、それともコピーとはいえロンギヌスの槍だからであろうか。
 ゴジラの背びれが赤く光りだす。
 すると。
 周囲にあるロンギヌスの槍のコピーから電流のような光が発生し、ゴジラを拘束するように纏わりついた。
 ゴジラの背びれの光が弱まっていき、ゴジラは、ロンギヌスの槍のコピーから発せられる光から逃れようともがきだした。
 ロンギヌスの槍のコピーがゴジラにどんな作用を発しているのかは不明だが、行動を妨害しているのは間違いない。
 ゴジラがもがいている隙に、宙に浮いている弐号機が、本物のロンギヌスの槍を持ち上げ、投げる体制を取った。
『アハ、ハ、ハハハハハハ! ヒヒ、イヒヒヒアヒャハハハハハ!』
 弐号機の中にいるアスカが狂った笑い声をあげる。
『死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!』
 そして弐号機が本物のロンギヌスの槍をゴジラに投げ放った。
 ロンギヌスの槍は、真っ直ぐに、射抜いた。
 ゴジラの胸部を。
 ゴジラは、悲鳴を上げ、後ろにのけ反り倒れる。だが背中まで貫通したロンギヌスの槍がゴジラの体を支えた。
 ゴジラががくりと力なく体を垂れさせた。
 ネルフの警護にまわっていた防衛軍も、ネルフの職員達も、基地の司令部もシーンっと静まり返った。

「馬鹿な…、ゴジラが……。」
「あんなあっさりと…。」

 これまでの歴史の中で、そして今まで決して倒れることがなかったゴジラが、あっさりと一突きで倒れた。
 ぐったりと串刺しにされたまま動く気配がない。

 機龍フィアは、離れた場所で、ただそれを見守っていた。

 動かないゴジラだったが、数分置いて、その目に光が灯った。
 雄叫びを上げ、ロンギヌスの槍を引き抜こうと手をかける。
 するとセフィロトの樹の形を編成していたエヴァンゲリオン量産機達と弐号機が発する光が強まり、まるでそのエネルギーが流れ込むようにゴジラの周りにあるロンギヌスの槍のコピーから発せられる光が強まった。
 ゴジラが絶叫を上げもがく、すると周囲に液体のような物が飛び散った。

「うわ! なんだ!」

 地球防衛軍の部隊と、ネルフ職員達の方にも飛び散った液体(かなり遠く)。高温であるため湯気を発するその液体の匂いは…。
「これはLCL!?」
 湯気と共に鼻をつくその匂いは、血の匂いに似た香りを持つLCLだった。
「サードインパクトを起こすためのエネルギーをロンギヌスの槍を介してゴジラをLCLに還元させようとしているというの!?」
 リツコは、ゼーレの意図を読み取った。
 ゴジラには、アンチATフィールドがあるが、ロンギヌスの槍と比較したら弱い。とりわけ自身の体の形を保つためのATフィールドそのものはあるため、アンチATフィールドの力を増幅させられたら形を保てなくなるのだろう。だがゴジラの意思力の強さかすぐにはLCL化はしない。
 だが暴れるたびにLCLが飛び散っている。
 そして。

「うわああああ! 液体化したぞ!」
 突然地球防衛軍の部隊の人間が数名、LCL化してしまう現象が起こった。
 それはネルフ職員にも発生し、サードインパクトの余波がここだけじゃなく、世界各地で起こっていることを示していた。
「ツムグ! 椎堂ツムグ! 応答しろ! サードインパクトを止めるんだ!」
 通信機から必死に機龍フィアに向けて呼びかけるが、応答はない。
 機龍フィアは、変わらずこの状況を静観している。
「本部からの伝令! ディメンション・タイドの使用の許可が下りた!」
「! なら…。」
 狙うは、セフィロトの樹の形を編成しているエヴァンゲリオン量産機達と弐号機。
 それで止められるかは分からないが機龍フィアが動かない以上、それ以外に手がない。
 ディメンション・タイドの使用。つまりネルフ職員達や彼らの警護にまわっていた前線部隊を犠牲にすることだ。
 絶望したり、覚悟を決めたりと反応は様々だった。
 そしてディメンション・タイドの砲塔がセフィロトの樹へ向けられた。
「エネルギー充電完了!」
「照準システム準備完了!」
「いつでも撃てます!」
「----撃て!」
 ついに撃ち放たれたブラックホールの球体は、まっすぐセフィロトの樹へ飛んでいった。
 破裂する強大なエネルギー。
 小型のブラックホールは、セフィロトの樹を形成する光を吸い寄せ吸収し、ゴジラを拘束する光をも吸い込み始めた。
「ブラックホールがサードインパクトのエネルギーで相殺されているわ!」
 不完全なサードインパクトは、小型のブラックホールに相殺され、儀式を維持できなくなっているようだ。その証拠にセフィロトの樹の形を象っている光が消えかけており、支えられていた弐号機が今にも落ちそうになっていた。
 やがてブラックホールは、吸い込むのを止めた。弐号機とエヴァンゲリオン量産機達が力を無くしたように地面に落下した。
 だがその代わりにブラックホールは宙で留まり、光の塊となってそこに存在するようなった。
「なんだ? 今度は何が起こっている?」
「アンチATフィールドのエネルギーがブラックホールとプラマイゼロで膠着してしまったのかしら?」
 リツコは、持ってきていたノートパソコンでMAGIに繋ぎ、解析を開始した。
 サードインパクトが止まった隙に、拘束から逃れたゴジラが胸に刺さっていたロンギヌスの槍を掴んで引っこ抜いた。
 そして忌々しそうにロンギヌスの槍を投げ捨てると、光の塊の方を睨んだ。
 ゴジラに背びれが輝きだし、ゴジラが熱線を放とうとした。
 すると。

「ゴジラさん、ごめん。それは、ダメ。」

 機龍フィアの方の砲塔からミサイルが放たれ、ゴジラの背中に着弾してゴジラの熱線を阻止した。
 ゴジラが、ギロリッと機龍フィアの方を睨んだ。何のつもりだと言いたげに。
「あ、…危なかったわ。」
「今度はなんだ?」
「あのまま熱線を放たれてたら、あのエネルギーの塊が爆発して日本が消滅するほどの爆発が起こっていたとMAGIが解析したわ。」
「なんだと!?」
 胸をなでおろすリツコに、前線指揮官が叫んだ。
 恐らく爆発したとしてもゴジラだけは生き残れるので、ゴジラ的には爆発させたかったのだろう。
「なんてことだ、ディメンション・タイドが裏目に出たか!?」
「いいえ、むしろサードインパクトを止められただけ良しですわ。あのままエネルギーが自然に拡散するのを待てば…。」
 その時、MAGIが最大の警告を表示した。
「なに!? こ、これは…、まさか…。」
「なんだなんだ、今度は何が…、っ!?」
 その時、彼らが見た物は。

 光の塊の真下辺りから伸びてくる白い巨大な腕だった。

 その手は光を掴み、光はその手に吸収されていった。
 そしてズルズルという風に、生えてくる白い巨大な身体。
 全長は、100メートル近くあり、のっぺらぼうのように顔はなく、人の形をしていた。
 光が吸収し尽くされると、何もない頭部の形が変形し始め、それとともに全身の形が変わり始めた。

「あれは………、しょ、初号機!?」

 独特な鬼のような面構えに一本角。
 その容貌は、初号機そのものだった。
 しかし体の方は……。
「な、なんだあれは!?」
「あれは、使徒!? 今まで現れた使徒なのか!?」
 これまで出現して、倒されてきた使徒と思われる形が歪に形成され、初号機の頭部を頂点に、手足、胴体に他の使徒が生えているような異形の姿になっていった。なお、その中にはカヲルの姿だけはなかった。

『アハハハハハハハハハハハハハハハハ!』

 初号機の口が開き、幼い男の子のような声で笑い始めた。

『ついに、やった! やったよ! お兄ちゃん! やったよ! やっと復活できた!』

 初号機は、歪な両腕を振り上げて歓喜していた。


「やれやれ、やっとか…。」
『ツムグ…、どうして?』
「……。」
 ふぃあの不安げな問いかけに、ツムグは答えなかった。


「あれは、碇ユイじゃない…。」
「ならば、一体何者なんだね?」
「分かりませんわ…。」
 冬月の問いに、初号機の意思の存在を知らなかったリツコは、ただそう答えるしかできなかった。
「初号機はリリスを……。止められなかったのね。」
 リリスの警護にまわっていた地球防衛軍の部隊の生存は絶望的だろう。なにせ何の連絡もないからだ。
 結局、初号機がリリスに接触するのを止められなかったのだ。
 しかし不可解であった。
 初号機のリリスへの接近はMAGIが捉えていたはずだ。だがMAGIは、反応しなかった。
 まるで何かに妨害でもされていたのか……。っと、リツコが考えた時、ハッとリツコは、機龍フィアの方を見た。
「まさか、椎堂ツムグが!?」
「奴がどうした?」
「椎堂ツムグは、これを狙ってやっていたというの!? 初めから初号機を利用しようとして…。」
「だからなんなんだ!?」
「この非常事態は、すべて椎堂ツムグによって仕組まれたことだったのよ!」
「なんだって!」
「彼は、自分目的のためにすべてを巻き込んだ…!」

 死ぬために、そのために。
 世界の滅亡も、人が作ってしまった化け物の産物すらも利用したのだ。
 自分が、死ぬために。
 “死ぬ”ために。

『その通りだよ。』
 リツコのパソコンからツムグの声が流れた。
「椎堂…、ツムグ…!」
『全部…、ぜーんぶ、このためにやったんだよ。』
「あなたは世界を壊してまで自殺をする気!? これはもはや無理心中よ! そんなことこっちは願い下げだわ!」
『出る犠牲は…、遅かれ早かれ成就されていた“死”だよ。回避しようがない絶対的な“死”だった。まあもっとも、LCLってスープは、死んでるとは言えないかもね。』
「っ! 肉体を失い、自己を失うことは死と変わりないのよ! これから先何をする気!? 初号機は蘇った! リリスを取り込んで! もはやあれは世界に害をなす怪物よ! 神に等しき力を持った!」
『だろうね。』
「だろうねって…、あなた、この事態を分かって…。」
『知ってるよ。そうしたのは、俺だし。』
「ここまでしなければならなかったの!?」
『…そうだね。そうだよ。ずっと、待ってたんだ。この時を。』
『ツムグ。なんで? なんで?』
『ふぃあちゃん。言わなくたって分かってるでしょ? 俺がずっと死にたかったってこと。』
『ふぃあ、ツムグに死んでほしくないよ。』
『…それは聞けないよ。ごめんね。』
『…ツムグ。』
「………あなたの思い通りにはならないわ。」
『…ふーん?』
「見なさい。空を。」
『ん…。』
 リツコは、空を指さす。
 すると、轟天号が空を横切った。
『…知ってるよ。』
「たかが死ぬためだけにあなたの行為を許すほどこの世は甘くはないわ。すべてが思い通りになると思わないことね。」
『ぷ…、く、ははははははははは!』
 急にツムグが笑い出した。
 ひとしきり笑い、ヒーヒーとひきつけを起こすほど笑った。
『そうだね。そうだよね。そんなこと知ってるよ! でもこーでもしなきゃダメなんだよ! 俺が死ぬにはコレしか!』
「っ…。」
 リツコは、ツムグの狂気に顔を歪めた。
『いくら望んだって、いくら望まれたって、死ねない、死ぬことができない気持ちなんか誰にも分かるわけないからね!!』


『お兄ちゃーーん! 来てくれたんだね!』

 初号機の声が響き渡る。
 初号機が轟天号に向かって方向転換した時、背後でゴジラが動いた。
 周りを囲っていたロンギヌスの槍のコピーをどかし、真っ直ぐに初号機に向かって行った。
『…邪魔しないでよ?』
 初号機が後ろを振り向かず心底鬱陶しそうに言った。
 初号機の体から生えている今まで出てきた使徒達の体が動き出す。
 まずサキエルの形が動き出し、顔の目の部分が光ってビームを放った。
 爆発が起こるが爆風の中からゴジラがすぐに出てきて、初号機に迫る。
 次にラミエルが動き出し、荷電粒子砲が放たれるが、ゴジラは前に喰らったことがあるためか耐性を身に着けているのか腕を振っただけで弾き、初号機に掴みかかろうとした。
 サキエルの腕から光のパイルが放たれ、ゴジラの手を弾き、マトリエルの形が酸を吐いてゴジラに浴びせた。
 酸がゴジラの肌を焼くが、その程度で爛れはしない。すぐ再生する。
『邪魔だよ。』
 初号機が背中を向けたまま右腕を鞭のように振るい、ゴジラを殴打して弾き飛ばした。
 ゴジラは、すぐに着地し背びれを輝かせた。
 放たれた熱線によって初号機の周りで爆発が起こるが、爆風が晴れると、そこには…。
 一回り大きくなった初号機がいた。
『アハ、すっごいなぁ。コレ。美味しかったよ。』
 初号機は漲る力に歓喜したようだ。
 リリスを取り込んだことによる新たな力なのだろうか、ゴジラの放射熱線を吸収したようだ。
 大きくなった初号機を見てゴジラは不愉快そうに顔を歪めた。
『でも、邪魔しないでよぉ…。お兄ちゃんの所に行けないじゃないの。』
 初号機が初めて振り向く、それと同時にゼルエルの顔が生え、目からビームが放たれた。
 サキエルのビームと比べ物にならない破壊力は、第三新東京に大穴を開け、ゴジラは蟻地獄のように空いていく穴に足を取られ穴の中に吸い込まれていった。恐らくはネルフ本部の方に落ちたのだろう。
 ゴジラの姿がなくなった後、初号機の背中に複数のミサイルが着弾した。
 轟天号からの攻撃だった。
『お兄ちゃん、来てくれたんだね?』
 初号機は、上空にある轟天号を仰ぎ見た。


「初号機…。」
 轟天号の前の席で尾崎は汗をかいた。
 嫌な予感は的中してしまった。
 初号機は、人間の祖先である神を喰らい、神と同等の力を手に入れてしまった。
 相性が悪いはずのゴジラの熱線を吸収したのがいい例だ。
 他の使徒の力を手にした理由は不明だが、その力を自在に使えるというのは最悪だ。
『お兄ちゃん、見てよ、見て。僕は神になったんだ。これで世界は自由だよ。自由に変えられるんだよ。お兄ちゃんを一人ぼっちじゃなくしてあげられるよ? ぜーんぶ、変えてあげる。だから僕と…。』
「俺はそんなこと、望んでない。」
 轟天号の中で尾崎は初号機の言葉に返答をした。
『なんで! どうして!? お兄ちゃん一人ぼっちなんだよ? 世界で一人しかいないんだよ? だから僕がなんとかしてあげようと思って…、頑張ったのに…。』
「俺はそんなこと頼んでない。」
『なんで? なんで? なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで?』
 初号機はひとしきり呟いた後、シュンッと項垂れ。
 やがて、震えながらクスクスと笑い出し。
『…変えちゃえばいいんだ。』
 何か一人で納得し、一人で答えを出した。
『全部、ぜんーぶ、変えちゃえばいいんだ。みんなが苦しむのは、心があるから、変えちゃえばいいんだ。お兄ちゃんが一人ぼっちなのはみんなが違うからだ。お兄ちゃんが僕と来てくれないのも。全部全部変えて、消えちゃえばいいんだ!』
 それは最悪の答え。
 初号機の背中から十数枚の光る羽のような物が発生した。
『楽しいことも、哀しいことも、辛いことも、嬉しいことも、痛いことも、苦しいことも、全部全部全部全部全部全部全部! 消してあげる!』
 初号機の翼が発光しだした。
「やめろ!」
 尾崎が叫ぶ。
「尾崎、撃て!」
 ゴードンが命令した。
 それと同時に尾崎はメーサー砲の発射スイッチを押した。
 轟天号のドリルの先端から放たれたメーサー砲は、真っ直ぐに初号機に向かった。
 だが眼前でATフィールドに阻まれ、防がれてしまった。
 初号機の羽だけじゃなく、全身が白い光を纏った。
 その光が膨れ上がり、第三新東京を包むように広がり始めた。
 一方、第三新東京の上に取り残されていたリツコ達が、半透明な光に包まれその場から消え去った。
 ツムグの超能力の力だった。
 リツコ達は、第三新東京から地球防衛軍基地の近くに転移させられた。
 ついでに、弐号機も基地の近くに転移させられていた。
「椎堂ツムグ…、本当に一体何を考えているの?」
 リツコは、ツムグの考えが読めず、ただそう呟くしかなかった。
 初号機を中心とした光は、第三新東京の特殊装甲板を消し去り、ネルフ本部を丸見えした。
 先に下に落ちていたゴジラからの熱線が再び飛んできた。
 前よりも強力な出力で放たれた熱線は、初号機が纏う光を拡散させた。
 光が消え丸見えになった初号機は、更に巨大化しており、ネルフ本部を踏み潰すように着地した。
 初号機はゴジラを見下ろす。
『邪魔するなって言っただろぉ!』
 巨大化したイスラフェルの両腕がゴジラに振り下ろされた。ゴジラは、それを後ろに飛ぶことで避けたが、横からゼルエルの腕が鞭のように振られて横に弾き飛ばされた。
 ゴジラの倍以上に巨大化した初号機の前に、ゴジラは翻弄されていた。
 目を血走らせ、怒りに震えるゴジラの背びれが赤く光る。
『ム・ダだよ。』
 初号機が笑う。
 ネルフの下。そこから黒い巨大な球体が浮上した。
 それは黒い月と呼ばれる、かつてリリスが乗ってきたものだった。
 それを受け止めた初号機の下半身が黒い月と同化を始める。
 黒い月をも取り込み肥大化した初号機下半身が、ばっくりと横に口を開けた。
 そこへゴジラが赤い熱線を放つが、吸い込まれていくだけで無駄に終わった。
 熱線を吐き続けるゴジラに初号機の下半身の口が迫った。
『ゴジラもおいでよ、一緒に新しい世界に連れてってあげる!』
 第三新東京を飲む込むほど巨大化した初号機の口に、ゴジラが飲み込まれた。

 大穴から上半身を出し、黒い月と一体化した下半身をごと浮遊させた初号機は、大きく口を開けて笑った。
 初号機の翼から放たれた光が空へ吸い込まれ、粒子となって世界中に降り注ぐ。
 粒子に触れた者達は、まるで魂がなくなったかのように倒れ伏したり力なくへたり込んだりした。

 サードインパクト…、いや、初号機によるフォースインパクトが始まろうとしていた。 
 

 
後書き
不完全なサードインパクトを利用して、ゼーレはゴジラを抹殺しようとしました。
果たして弐号機でサードインパクトを起こせるかどうかは分かりませんが、捏造しました。

そして、初号機復活。リリスを喰い、神に等しい力を持った怪物と化しました。
尾崎に拒絶され、自棄を起こした初号機は、世界から心を消すためにフォースインパクトを起こします。 
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