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ゴジラ対エヴァンゲリオン(仮)

作者:蜜柑ブタ
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第十四話  破壊神の退屈

 
前書き
序盤、アスカの扱いがあまりよろしくありません。ファンの方注意。

使徒レリエル編。 

 
 地球防衛軍の訓練は、超人を量産するレベルだ。
 なんて言われるほどキツイ。
 いやキッツいなんてもんじゃない、キツイ。

 ドイツから日本に来たアスカは、訓練場にいた。

「立て! 立つんだ!」
「うっ…。」

 ドイツのネルフ支部で訓練を受けていたアスカでさえ、吐くほどである。
 使徒ガキエル襲来時に勝手に弐号機を使って轟天号を危機をもたらした罪状で、地球防衛軍の訓練場での再訓練が言い渡されており、日々このキッツい訓練をさせられている。
 14歳の少女だからといって容赦はない。
 そのことにアスカは不平を持ってはない。むしろ変に依怙贔屓されるほうが彼女にとって嫌なことであり、プライドに触った。
 ただ自分とそう歳の変わらない歩兵に訓練で負けてしまったいることが今の彼女にとって許せなかった。

「っ…、ゴホッゴホっ…。負けるもんですか!」

 アスカは、とっても強気だった。


 再訓練の期間もやがては終わり、ネルフから与えられたマンションの一室に彼女は住むことになった。

「何よこれ…!」

 最低限の物とドイツから送ってきた段ボール箱以外は質素な室内で、通帳を握りしめてワナワナ震えた。
 残高がほとんど尽きていたのである。
 気晴らしに買い物に行こうかと思って通帳を広げたら、これだ。
 幼い時からエヴァンゲリオンのパイロットとなるべく兵士として訓練をしていたため、給与も入っていたはずだが、その蓄えがなくなっていたのである。震えない方がおかしい。
 そのことでアスカは、ミサト(一応彼女の保護者位置)に連絡した。
 結構な大金が一気に消えたことに、ミサトは、リツコにMAGIで調べてくれないかと頼むと。
「ああ、それ? 焦げた弐号機の修理費に徴収したのよ。」
 っと、あっさりと言ってきたのである。
 それを聞かされたアスカは、弐号機のためなら仕方ないかと不満はありつつも無理やり納得した。


『お~い、それでいいのか~?』

 遠くで誰かがツッコミを入れた。





***





「尾崎さんお疲れ様。」
「ありがとう。シンジ君。」


「……傍から見ると誤解されそうな光景よね…。」
「そうーだなー。」
「そー見えてるのはおまえらだけ…。」
「年上年下の組み合わせとか鉄板だよなー。」
「そうよね~。」
「おまえらいい加減口を閉じろ! 腐女子、腐男子コンビ!」
「だって可愛いんだも~ん。」
「だってカッコいいんだも~ん。」

「?」
 仲間達がギャイギャイワーワーやっているのを見て、話の内容が聞こえていない尾崎は、シンジからもらったコーヒーを飲もうとしようとカップに口を近づけようとして急にピタッと止まった。
「尾崎さん?」
「…シンジ君、このコーヒーは、そこのメーカーのだよね?」
「はい。」
「…あそこにいる人だれ?」
「えっ? あの人は僕が入るよりも前からいた人ですよ?」
「……。」
 困惑するシンジとは反対に、尾崎の空気を察した仲間達の雰囲気が変わった。
 尾崎は仲間の一人にカップを渡すと、食堂の中に向かった。
「? なんですか?」
「なんのつもりかは取調室でしようか。」
「は? 何のはな…し……、っ、っっ!?」
 何の話だとその人物が言いかけた時、尾崎がその右肩を掴んだ。すると急に顔色が悪くなり、尾崎を振り払って背中を向けて裏口の方へ走ろうとした。
 しかし横から飛び出た足に払われ、転倒。そのまま取り押さえられた。
 仲間内でしか伝わらない合図で裏手に回っていた仲間が足払いをして取り押さえたのである。
「ばけ、ばけものめ!」
 顔面蒼白、顔から出る者全部出した変装した不審人物は、錯乱した状態でそう叫んだ。
 尾崎が肩に触った時、超能力を使って脳をかき回されたのである。サイコイリュージョンという幻覚を見せる技だが、カイザーの尾崎のはかなり強力で、恐らく尾崎が化け物に見えているのだろう。
 尾崎を殺そうとした不審者を連行し、毒薬が入ったコーヒーカップを証拠品として渡したあと、尾崎は茫然としているシンジのもとへ戻ってきた。
「シンジ君?」
「あ…、お、尾崎さん…。」
 声を掛けられて我に返ったシンジは、震えだした
 いつの間にか殺し屋が見知った顔の人間に入れ替わっていたことと、何より毒薬を受けた渡す中継にされたことに。
「君のせいじゃないよ。」
「なんで尾崎さんが…。」
「それは…。」
「?」
 なぜ尾崎が狙われたのか疑問をもつシンジに、尾崎は何か心当たりがあるのか言葉を詰まらせた。
「知らないのか?」
「宮宇地。」
「何がですか?」
「こいつが狙われるのは、こいつが特別制だからなのさ。」
「とくべつせい?」
「やめてくれ宮宇地。俺はそんな特別なんかじゃ…。」
「認めたがらない気持ちは分からんことはないがそのせいで周りが巻き込まれて平気か? 何も教えないことが幸せとは限らないぞ?」
「っ…。」
「自分で説明できないのなら、俺がしてやろうか?」
「いや、自分でするよ。」
「そうか。」
 宮宇地は、そう言うと、手をヒラヒラさせてその場から去った。
 尾崎は、このあとシンジに自分の身の上について説明した。
 自分がミュータントの中でも特別だとされる存在で、カイザーと呼ばれる個体であること。
 そのため幼少期に実験体として閉じ込められたり、出ることが許されてからも閉じ込めようとする輩がいたことと、ついには死体でもいいからと命を狙われるようなったりしたことなどを語った。
 殺そうとしてきた者達を次々に捕まえたりして処分したので最近では少なくなったが、あんまりにもやられすぎたのですっかりそういうことに敏感になり今回すぐに気付くことができたのであった。
「そんな、尾崎さんが…。」
「ごめん。秘密にしていたつもりはなかったんだ。」
「いいえ、いいです。話したくなかったんですよね? 特別に見られたなかったから。」
「うん。ごめんね。」

 オ…ニイチャ…

「!?」
「? どうしたんですか?」
「あ、いや、なんでもないよ。」
 なにか聞こえた気がして周りを見回した尾崎をシンジが不思議そうに見上げたので、尾崎はなんでもないと気のせいだと笑っい、シンジの頭を撫でた。シンジは、気恥ずかしそうに頬を染めた。



「やっぱり、可愛いね~。」
「やっぱり、カッコいいね~。」
「いい加減にしろ、腐ったコンビども。」

 こっちはこっちで変わらずだった。



 その翌朝、緊急出動を知らせる警報が鳴り響く。





***






 空は青からやがて橙へ、そして夜になる。
 そいつは夜の闇に溶け込むように現れ、そして朝を迎えた時に視界に写った。

「これまたヘンテコリンなのが出たな…。」
「使徒って統一感がないな。こうも生物感がないと。」
「さてさて、今度の使徒はどんな奴だ?」
 海岸の街の真上に現れたその使徒は、宙に制止していた。
 白黒模様の球体の使徒は、影を作りながらジッとしている。何か行動を起こす様子はない。
 住民を避難させ、前線に部隊を敷いた地球防衛軍は、攻撃の合図を待った。
『スーパーコンピュータの解答は、パターンオレンジ。使徒とは確認されない。』
「あんなに目立つのにか?」
 前線司令官は、目の前にはっきりと見えている球体のような物体が使徒ではないかもしれないという司令部からの言葉にあからさまに眉を寄せた。
『実態がつかめていない以上手を出すのは危険だ。全部隊はそのまま待機せよ。』
「いつまで待てばいい?」
『敵の正体が分からないまま手を出すのは許さない。前の使徒の前例がある。』
「っ。了解。」
 前の使徒。微生物型の使徒であったイロウルの一件が使徒への警戒を強くしていた。
 機龍フィアを乗っ取られたうえに、微生物の一つ一つがコアを持つ使徒であったことから、あの時撃退できたのが奇跡だったんじゃないかと囁かれるほど厄介であった。
 統一感のない形状で登場する使徒が同じタイプで出てくる可能性は低そうであるが、用心に越したことはない。
「黙って観賞しろってことですか。ホント、アートな奴ばっかですね、使徒ってのは。」
「…嫌な予感しかしない。」
「なんか…飛んでませんか?」
「レーダーに反応はありません。」
「無人機だ! マスコミか民間団体の物か?」
 カメラを搭載したステルスの無人機が飛行しているのを目撃し、場の空気が騒然となった。
 マスコミが前の件で騒いでいたし、情報閲覧を求める民間団体の存在もかなり盛り上がっていた。
「どうしますか!?」
「いや、これはチャンスかもしれん。的にして使徒の動向を探らせよう。」
 このままジッと使徒を見ているわけにはいかないと、前線司令官がそう指示を出した。
 無人機が使徒に接近した時だった。
 強風に煽られたのか、無人機の操縦が大きく揺らぎ、使徒に接触したのだ。
 しかし。
「消えた!? 馬鹿な!」
 数十メートルはあろうかという球体が突如消えたのである。
「第四、第五小隊の真上に出現!」
 海の上から陸地に出現した。
 そして。
「パターンブルー検出!」
「ああ!?」
「どうした!?」
『た、助け…、うわああぁぁ……』
「おい! おい! 返事をしろ!」
「第三、第四、第五部隊の反応消失!」
「第二部隊からの報告! 建造物が第三、第四、第五部隊と共に使徒の影に沈んだとのこと!」
「第二部隊半数も沈みました!」
「なにぃ! つまり奴の正体は…。」
「影です! 宙にいる球体はダミーです!」
「影からパターン青を確認!」
「そんな馬鹿な!」
 はっきりと目に見える球体が騙しで、本体は影の方。
 こんなの誰が想像した?
 前線部隊の一部を失った衝撃と、敵の正体が発覚した衝撃は、怪獣との戦いを経験しているはずの地球防衛軍を震撼させた。


 第三、第四、第五部隊を周囲の建物ごと影に取り込んだ使徒レリエルは、またジッとその場に漂い始めた。
 自らは攻撃してこないし、干渉をしてこないのだと分かったところで撃破できるわけではない。
 このあと行動パターンを調べるため、無人戦車を使った攻撃を行ったところ、攻撃が当たった瞬間に消え、攻撃を行って来た相手のほぼ真上に移動し、本体の影に取り込むという動作を行うことが分かった。
 最初に使徒だという反応が検出できなかったのは、本体の影ではなく、全然違う上の方の球体の方を調べていたからだ。
 レリエルの本体の厚さは、約3ナノメートルの極薄で、この薄さのどこに部隊三つと建物を入れる場所があるのかと唸ったが、科学部が出した解答は、ディラックの海という虚数空間が存在する可能性が高いということだった。
 そして取り込まれてしまった部隊の生存は絶望的で諦めるしかないという答えであった。

「それで、俺のところに?」

「かなり不本意だがな。」
 そう言う指揮官の表情は嫌々である。
 敵の正体が分かったものの、攻略法が見つからないため、仕方なくツムグに意見を求めてみるという意見が出たのである。この男はツムグに聞きに行くよう外れくじを引いたので嫌々なのである。
 椅子を斜めにして、机に脚を乗せてくつろいでいたツムグは、パソコンに映ったレリエルの映像を見た。
「裏返し。」
「はあ?」
「こう、なんだろ? ひっくり返したみたいな? 丸いのがこいつの影で、影が本体なんだよ。逆になってる。ATフィールドって便利だね~。異空間への出入りを自由とか、あの丸い影はそれでできたものだよ。おもしろい形だ。」
「こいつの弱点だけ言え! それ以外はどうでもいい!」
「弱点…。あるとしたら…、ATフィールドをなんとかすればいいんじゃない?」
「ATフィールドを?」
「なんとかって海だっけ? それを開いたり閉めたりするためにATフィールドをひっくり返した形になってるみたいだけど、言っちゃえばATフィールドがなかったら即死だね。そういう形してる。ATフィールドあってのこの使徒って感じ?」
「…つまり?」
「外からがダメなら。内側から。とは言ったものの、地球防衛軍の技術じゃ内側から攻撃は無理。」
「なんだと!?」
「なんとかって海のせいだよ。空間が違うから無線とかで操作もできないし、線を伸ばしても途中で切れちゃうだろうし。かと言って死ぬ覚悟をして有人機なんか放り込んでも中から撃つとかしてもうまくいく可能性は限りなく低いし。あっ。こーいう時こそだ。」
「なんだ? 何か解決方法があるのか?」
「ゴジラさんに頼ればいいんだ。」
「アホか。使徒一匹のためにゴジラをわざわざ誘き寄せろというのか?」
「前線の部隊がやられてるのに? 街の半分近く飲まれちゃったのに?」
「………会議にかける。」
「何もしてこないからって油断してると、こっちがやばくなるから早めにしたほうがいいよ?
 ツムグが最後に言った言葉が、それから的中することとなる。
 同じ場所に漂っているだけと思っていた使徒が膨張を始め、影の範囲が広がり始めたのである。
 このままでは日本全土を覆いつくすのでは?っという勢いがあり、膨張に限界があるように見えなかったことから、ツムグの意見が採用されることとなった。
 すなわちゴジラを誘き寄せて、使徒レリエルを倒させるということである。
 ゴジラは、これまで使徒のATフィールドをことごとく破っており、地球防衛軍では不可能な内向きのATフィールドを破るのも可能かもしれなかった。
 だが下手をするとゴジラがディラックの海の飲まれ、それでおしまいになる可能性もあったが、膨張を続けるレリエルを止める術がない以上、作戦は急を要した。
「ゴジラさんを呼ぶにはいいものがあるじゃん。」
 っと、司令部に直接来たツムグが波川達に伝えたこと。

 日重から徴収した核融合炉。それを餌に今は休眠しているであろうゴジラを起こすのである。

 核融合炉の封印作業をしているところで、その封印に立ち会っていた核融合炉の開発責任者は、作戦を聞いて使徒を倒さなければサードインパクトが発生するという話に基づき、参加させてほしいと喰いついた。
 開発責任者であることもあり、作戦への参加を許された。
 核融合炉をスーパーX3に吊るさせ、ゴジラが眠っていると想定される海域に向かって行った。
 やがて、海の底から青白い背びれが浮かんできた時、スーパーX3は素早く旋回し、海面すれすれで日本に向かって飛行した。ゴジラを連れて。
 本土が見えた時、レリエルは、更に膨張していた。
 スーパーX3がレリエルの下に差し掛かった時、核融合炉を吊っていたワイヤーを断ち切った。
 レリエルに飲まれてしまったため、見る影もない街の中心に核融合炉が落下し、ゴジラが陸に上陸した。
 ゴジラは、レリエルを見上げ鼻を鳴らす。するとレリエルの膨張が止まった。まるで待ってましたといわんばかりである。
 ゴジラの喉にはまだ痛々しい傷が残っており、万全ではないのが見て取れる。
 緊張が走る中、ゴジラは、球体の方を見上げて、すぐに下を見おろした。一目でレリエルの構造を理解したらしい。
 核融合炉が影の上に落下し、その下にあるはずの地面を割って横たわっていた。
 ゴジラがレリエルの影に足を踏む込んだ。
 沈むことなく地面を割っていく。


「それと、俺的にはやりたくないけど。このやり方もあるよ。」

 ツムグからの進言で、もしゴジラがディラックの海に沈んで戻ってこれなかった場合の備えもしてその時を待った。
 核融合炉の目の前に差し掛かった時、ゴジラの足が沈んだ。
 ゴジラは、驚きもがかくがあっという間に100メートルの巨体が暗い影の中に沈んでしまった。核融合炉も一緒に。
 気のせいか取り込む速度が速かったように見えた。
 この後が問題だ。
 ゴジラがディラックの海を越えてレリエルを倒し、帰還してくるか。最後の手を使うか。

 そして2時間が経過した…。

「使徒に変化はありません。」
「ゴジラでもダメだったか…。」
「まだ2時間ちょっとしか経ってない。諦めるのが早いのでは?」
「使徒の膨張が再開されました!」
「くそ! やっぱりダメだったか!」
「スーパーX2出動!」


「……ゴジラさん。」

 高所から遠くにいるレリエルを眺めるツムグは、ゴジラの名を呟いた。
 空を数機のスーパーX2が飛んでいく。
 ある物を詰めたミサイルを積んでいる。
 ツムグは、目を細めそれを見送った。
 っと、その時。

「使徒の中心に高エネルギー反応!」
「球体の方に亀裂発生!」

 球体の方に亀裂が走り、下からゴジラの尻尾が出て来た。
 そして真っ赤な液体に染まった背びれが脱皮のように出てきて、青白く光りだした時、膨張を続けていたレリエルが今度は収縮を始めた。まるで出入口を慌てて閉じようとしているかのように。
 凄い速度で収縮をしていた使徒であるがそれよりもゴジラが早かった。
 体液をまき散らしながらバリバリと使徒を突き破ったゴジラが、体内熱線を放った。
 上がる黒煙、燃えながら砕け散る使徒の、約3分の1、地面に着地したゴジラ。
 ゴジラの口には核融合炉の部品であろうか、パイプのようなものが咥えられていた。ディラックの海で喰ったのか。そのせいか喉の傷は癒えていた。
 その時スーパーX2数機からミサイルが発射され、ミサイルが空中分解し、中の液体のような物が宙にまき散らされた。
 雨のように降り注ぐその液体が地面に広がるレリエルの本体にかかった。
 するとまるで火傷でできた水泡のようにボコボコと表面に凹凸ができ始めた。それとともに影の方である宙にある球体の方もボコボコになった。

 使徒は、G細胞に触ると火傷する。

 その謎の法則に則り、レリエルにたいし、火薬を抜いたミサイルにツムグの体液を薄めたものを詰めて散布したのである。
 結果はこの通りだ。3ナノメートルの影のような本体が火傷をしたのかボコボコの水泡ができた。
 ゴジラにも降りかかり、ゴジラは不快だと言わんばかりに嫌そうな首を振っていた。
 レリエルは、ボコボコと沸騰するようにドロドロと溶けて、海の方に流れて行った。
 レリエルに取り込まれた物は戻ってこなかった。ディラックの海が異空間に繋がっているために異空間に送られた物は戻ってこないという結論が出た。ましてやレリエルが死んだ今、出入口は永遠に閉じられてしまった。
 レリエルが死んだあと、残ったゴジラは、ペッと核融合炉のパイプを吐き捨て、ぎろりとある方向を睨んだ。

「フフフ…、ゴジラさん。俺はここだよ。」
 ゴジラが睨んだ先にはツムグがいた。
 ツムグは、両腕を広げうっとりと笑った。
 赤い液で体を濡らしたゴジラがツムグのいる方向に向かって進撃した。





***





 ネルフのリツコの研究室で、リツコは、パソコンの映像を前にして額を押さえ、椅子に深く座り直した。
「虚無空間を破って帰還するなんて、ここまで来ると破壊神のあだ名もあながち外れてないわね…。」
 ゴジラがレリエルを破ったことに、リツコは息を吐いた。
「私達人類は、なんてものを生み出してしまったのかしら…。」
 ゴジラは、水爆実験で生まれた。
 まあ、途中であれこれあったが省いておく(今は二代目とか未来人とか宇宙人とか)。
 それでもゴジラは、人類の敵として存在し続けた。
 まるでゴジラが運命の一部に組み込まれているかのように。
「ゴジラは、人類の罪の象徴? ああ、そんな非科学的なことは考えたくないわ。これは置いて置きましょう。」
 そう独り言を呟いてパソコンの画面を変えた。
 そこに映されたのは、遺伝子や細胞などのデータ。
「基本は人間だけど、脳の発達に伴う身体能力の強化が見受けられるわね…。これがミュータント…。」
 使徒マトリエル襲来直後位に風間から貰った(千切った)髪の毛から採集したデータである。
「ああ…、できればあの身体を直接触って計器にかけて、あれやこれ、あんなことやこんなこと、それからそれから…。」
 リツコは、熱の篭った息を吐きながらそんなことを呟いた。その表情は実に色っぽい。
「あぁもう! 髪の毛だけで済ますんじゃなかったわ!」
 ついにはそんなことまで言いだしてしまう始末である。

 遠くにいる風間が肌をゾワッとさせていたとか?





***





 進撃していたゴジラがふいに足を止めた。
 そして上空を見上げる。

 銀と青緑の巨体が飛んできた。
 機龍フィアよりは、少々大きく。
 両手と口のドリル。
 目の部位が金色に光り、スーパーX3から切り離されて地面に着地した。

『MOGERAマーク5、戦闘に入ります!』

 両腕のドリルを前に突き出して構えたMOGERAマーク5がゴジラに突撃した。
 それを横にどくことで避けたゴジラは、フックをかまそうと腕を振ったが、それをドリルの腕で防ぐMOGERA。
 MOGERAの目から、レーザーキャノンが発射された。
 ゴジラは、発射されたレーザーを横にずれて避け、MOGERAに掴みかかろうとしたがそれよりも早くMOGERAが後ろに急速に下がったため掴もうと伸ばした両手が空を切った。
『一斉発射!』
 目のプラズマレーザー、腹部のメーサーキャノンを同時に発射した。
 ゴジラの体に着弾し、ゴジラの巨体が吹っ飛んだ。
 すぐに体勢を立て直したゴジラは、口を開けて放射熱線を吐いた。
 青緑と銀の機体に命中した放射熱線は、表面を焼くどころか染み込むように吸収されたためダメージはなかった。
 ゴジラがそれに驚いて口を閉じた時、MOGERAの体から吸収した熱線が発射されゴジラに当たった。
 MOGERAの青緑の部分は合成グリーンダイヤコーディング。ブルーダイヤコーディングの強化版である。吸収、発射。または反射が可能なボディだ。
 ゴジラが吹っ飛んだと同時に、MOGERAの両腕のドリルが二つに割れるように開閉し、中からミサイルが発射された。
 ミサイルの着弾による爆発が起こり、ゴジラが煙に包まれた。
 その煙が膨れ、ゴジラがタックルをする体勢で飛び出してきた。そのスピードに追いつけず、避けることができなかったMOGERAは、もろにタックルを喰らい、後方に大きく押された。
 追撃にゴジラが体を大きく捻って尻尾攻撃を行い、MOGERAの機体が横に吹っ飛んだ。
 背中から落下したMOGERAを更に追撃しようとゴジラが襲い掛かる。
 足を踏み下ろされる直前で、左側のジェットを吹かし、回転して避けると、ジェットを使って起き上がった。その動きは生物的な機龍フィアに比べて機械的である。まあ、MOGERAには生体が使われていないので当り前と言えば当り前。
 しかしそれゆえか、タックルされた部分がちょっと凹んでる。弾力性では機龍フィアの方が高い。
 腹にあるメーサーキャノンからメーサーが発射され、ゴジラに当たるがゴジラは怯まず再び体を捻って尻尾攻撃を行った。間一髪でMOGERAは避けたが頭部を掠り、頭部の装甲の一部が剥がれた。
 そのせいで片目のレーザーキャノンが壊れ、壊れた影響で出力が若干下がった。
 戦闘長引くとともに、戦いゴジラが有利となり、MOGERAが不利になっていくばかりである。
 ゴジラは、まるでつまらんと言いたげに鼻を鳴らした。

『なぜ倒れないんだ!』
『35年前のゴジラならとうに膝をついているはずだぞ、なんなんだあの耐久力は!?』
『やはり35年前の封印前よりも強くなっているのか。こんな奴を相手にしていた新型メカゴジラって…。』
『機龍フィアの凍結は失敗だったんじゃないのか!? 今すぐにでも応援に出すべきでは!?』
『MOGERAマーク5の頭部に強力なP・K反応あり!』
『なんだなんだ!?』
『信号を探知! G細胞完全適応者です!』
『何やってんだあのバカは!』


 MOGERAの頭部に降り立ったツムグは、目の前のゴジラを見つめた。
「ゴジラさん。今回はふぃあちゃん連れてこれなくてごめん。次は思う存分やりあおう。」
 そう言って膝をつき、両手をMOGERAの装甲に添えた。
 次の瞬間、操縦系統を支配されたMOGERAがゴジラに突進した。
 距離が近かったため避けずにゴジラは、MOGERAを受け止めた。突進による勢いでゴジラが後方に押された。
「今回は帰って。」
 ツムグがそう言うのが早いかMOGERAの腹部のメーサーキャノンが発射された。
 ただし、限界出力を越えた無理やりの威力で。
 一斉発射と違い、目のレーザーキャノンがないにも関わらずゴジラが吹っ飛び。そしてテレポートされて遥か彼方の海に放り出された。
 ゴジラが消えた後、MOGERAは、オーバヒートを起こし、関節各部から黒煙を吹き、火花を散らして両腕をだらりと垂れさせて緊急停止した。

 地球防衛軍は、シーンっとなっていたが、我に返った司令部からツムグにたいして激しい怒声が飛ぶのは1分後のことである。





***





 一方その頃、M機関では。
「っ…。」
 レイが右腕を押さえながら建物に急いで入って行った。
 服の腹部を辺りを破って急いで右腕に巻きつけいく。
 布地に赤黒い染みができ、巻きつけた縁に爛れた皮膚が覗いていた。
「…熱い、痛い……。」
 顔を歪めて堪らずそう口にしてしまうほどの苦痛が右腕から湧きあがってきて、レイは歯を食いしばった。
 脂汗をかきながら急いで最寄りのトイレに駆け込み、水道で右腕を乱暴に洗った。
「どうして、そこまで…、怒っているの?」
 火傷のような傷の進行が止まり、ヘナヘナとその場に膝をつきながらレイは誰に聞かれることなくそう疑問を口にした。
 傷は、洗浄したおかげか、赤い色を残して傷が塞がっていった。

 レイが苦しんでいる頃、外ではちょっとした強風と時雨が降っていた。





***






「一応あの新型兵器が勝った(?)みたいですよ。」
「……そうか。はあ…。」
「まあまあ、そんなにため息ついてると老け込んでしまいますよ?」
 ジオフロンに作られたスイカ畑で畑仕事をしている加持と、畑の横で座っている冬月がそんな会話をしていた。
「生きている間にゴジラの復活に立ち会ってこれがため息を出さずにいられんよ…。」
「俺らの世代はゴジラを知らなくって、そのお気持ちはわかんないんっすけど、まあ…あれだけ使徒を殺しまくってりゃ恐れられているのも分かる気がしますね。」
 約35年という歳月は、ゴジラの恐怖を薄れさせるに十分な時間だったようだ。
 しかも15年前のセカンドインパクトでゴジラが死んだと思われていたのも効いている。
 追い打ちを掛けるようになんかゴジラが強くなっているのも痛い。ゼーレ属の研究者の見解ではセカンドインパクトのエネルギーを吸収したのでは?っとなっている。
「なぜよりによってゴジラを南極に封印したのか…。そもそも生きていたこと自体おかしいぐらいだがゴジラならあの程度で死ぬはずがなかったのか…。ああ…、生きているうちにゴジラを再び事の目に映すことになろうとは…。長生きはするものじゃない…。」
「思いつめ過ぎですって…。」
 くら~い口調でぶつぶつ呟き続ける冬月に、加持はただそれしか言えなかった。



 一時間後ぐらいだろうか、テレポートで飛ばされたゴジラが怒った状態で戻ってきたため、やむ終えず機龍フィアが出撃することになり、第三新東京の上でバトルに突入するのだった。
 そしてもう一回ツムグにテレポートさせられ、今度は地球の真裏に飛ばしたと言われるまで三十分。
 地球の真裏に飛ばされて、怒りが収まらないゴジラが八つ当たりで近くにあった無人島を粉砕した。幸い津波の心配はなかった。
 ゴジラを地球の裏側に飛ばすほどのテレポートを使えたことについて責められたツムグは、かなり膨大なエネルギーを消費するからもうしばらくは使えないと答えた。 
 

 
後書き
G細胞で使徒が火傷するは、捏造です。
なので、使徒の部分があるレイも……。

MOGERAは、マーク5(ファイブ)。
海外に亡命した地球防衛軍の人間が秘密裏に作ったものです。
でも、パワーアップしているゴジラには、勝てなかった…。終いには椎堂ツムグに壊された。 
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