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戦国異伝供書

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第十二話 苦闘の中でその四

「そうなるとな」
「本願寺でなければ無理ですが」
「しかし本願寺ではないとすると」
「では一体」
「どの者達じゃ」
「それがわかりませぬな」
「うむ、どうもな」
「流石にそれがしもです」
 羽柴も怪訝な顔で話した。
「本願寺ではあると思いますが」
「それでもじゃな」
「妙なものを感じて仕方ありませぬ」
 どうしてもというのだ。
「どうにも」
「お主の勘はいい」
 柴田は羽柴のそれを指摘した。
「だからのう」
「この度のことも」
「否定出来ぬわ」
 こう言うのだった。
「わしもな」
「では」
「そのお主ですらよもやと言っていてな」
「柴田殿もですな」
「ないと思うが」
 それでもというのだ。
「否定出来ぬ」
「やはりそうですか」
「うむ、得体の知れぬ者達がこの度の戦で蠢いておる」
「そのことは」
「若しやしたらじゃ」
「幾ら何でも」
 滝川は目を鋭くさせつつ考える顔になって述べた。
「弾正めが」
「あ奴がか」
「またおかしなことを考え」
 そうしてというのだ。
「色々と当家を弱らす為に手引きをしておるのか」
「そうもか」
「今ふと考えましたが」
「それもないであろうな」
 柴田は滝川に述べた。
「わしもあ奴は大嫌いでな」
「何か素振りを見せれば
「殿の御前でも切り捨てる」
 柴田は本気であった、尚この気持ちは織田家の多くの家臣達が今も思っていることだ。柴田はその気持ちがとりわけ強い者の一人でもだ。
「そのつもりであるがな」
「やはりですな」
「大き過ぎるわ」
 この度の戦で蠢いている者達がいるとしたらだ、その者達がというのだ。
「幾ら何でもな」
「如何にあ奴といえ何十万の者達を動かせるか」
「流石に無理じゃ、大和の信貴山に押し込められておるのじゃ」
 この城と周り、即ち松永は主に自身の領地だけに押し込められているのだ。織田家の重臣の一人なのは確かでもだ。
「それではな」
「近江や伊勢、紀伊等の一揆を動かすなぞ」
「到底じゃ」
 それこそというのだ。
「やはり無理じゃ」
「はい、それがしもふと思いましたが」
「それでもじゃな」
「大き過ぎます」
 戦のそれがというのだ。
「ですから」
「あ奴といえどないな」
「しかし何かあれば」
 不破は松永がいる方を剣呑な目で見た、彼もこの度の戦に将の一人として参加しているのだ。しして果敢に戦っているのだ。
「背からでも」
「切らねばな」
「それを機にして」
 そのうえでというのだ。 
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