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戦国異伝供書

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第十一話 退く中でその八

「この三つの家にな」
「関東には北条家もいます」
「そういった諸大名との戦か」
「それに若しや」
「本願寺か」
「他の寺社もです」
「わからぬか」
「これまで比叡山は静かでしたが」
 古来より権勢を誇ったこの寺がというのだ。
「しかし」
「それがか」
「これからはどうか」
「都に強い影響を及ぼしてきたが」
 昔よりだ、このことは。
「それがか」
「果たしてです」
 まさにというのだ。
「どうなるか」
「わからぬか」
「若しかしてです」
「当家に刃を向けるか」
「その可能性もあります」
 こう言うのだった。
「やはり」
「そうか、では」
「確かに我々は今からな」
「他の大名家との戦を考えるべきだが」
「そうおいそれと簡単に進むか」
 ことがというのだ。
「そう考えることもです」
「これまで当家はあまりにも順調にことが進んでおる」
 小寺も言った。
「そしてな」
「好事魔多しといいますな」
「何かがある」
「そう思っていいです」
「では何かが起こるか」
「他家との戦の前に」
 天下統一の為のその戦の前にというのだ。
「やはりです」
「何かあってか」
「その何かを考えますと」
 まさにというのだ。
「それがしはです」
「寺社と思うか」
「比叡山即ち延暦寺にです」
「高野山即ち金剛峯寺とな」
「そして本願寺です」
 竹中はあえてこの寺の名前を最後に出した。
「あの寺がです」
「何かしてくるか」
「今は当家が天下人としてです」
「世俗の権勢には逆らわぬのが本願寺だからこそ」
「そうはないと思いますが」
「しかしな」
「あの寺は一向一揆も起こしますので」
 それで加賀を手中に収めてそうしてだ、越前等でしきりに一向一揆を起こして朝倉家も悩ませてきたのだ。
 このことについてもだ、竹中は言うのだった。
「若し当家の敵になれば」
「そうじゃな」
「厄介です」
 こう言うのだった。
「当家の天下統一の前にむしろ武田家や上杉家よりも」
「立ちはだかることになるか」
「そうなります、そうならなければいいですが」
「全くじゃな」
「そしてその中で」
 まさにとも言う竹中だった。
「朝倉家、浅井家との厄介を収めたことは」
「いいことであるな」
「若し両家と揉めたままです」
「他の家と衝突すればな」
「その時はです」
 まさにというのだ。 
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