提督はBarにいる・外伝
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提督、里帰りする。その6
ワンボックスタイプのレンタカーは、くねる山道を縫うように進んでいく。
「司令、もしかして泊まる予定の温泉宿ってもしかして、秘湯的な奴なんですか!?」
「いや?割と有名な所だぞ。山奥にあるってだけでな」
「なんだ、そうなんですか……」
あからさまにガッカリする青葉。まぁ確かに知る人ぞ知る秘湯、って言葉にはそそられるよな。最寄りの幹線道路である国道45号線から、山道にはいって10km程走ると目的の宿が顔を出す。
「ここだ。今日泊まる予定の温泉宿……『大谷温泉』だ」
※大谷温泉(おおやおんせん)
洋野町にある温泉宿。泉質は単純弱放射能冷鉱泉で、岩手県内随一のラドン含有量を誇る。含まれるラドンの影響か、昔から『一度浸かると三日は身体が火照るように温まり、簡単な風邪ぐらいならすぐ治ってしまう』と言われていた。
また、温浴によってラドンを体内に吸収すると新陳代謝の活発化・ホルモンの分泌増進効果があり、体内の老廃物を流し去るデトックス効果が非常に高い。また、ホルモンの分泌を促す効果によって子宝に恵まれやすくなる効果があるとも。※個人差あり
効能:痛風、動脈硬化、高血圧症、慢性胆嚢炎、胆石症、慢性皮膚病、神経痛、リウマチ、筋肉痛疾患など
「おぉ~……何ともレトロな感じがいいねぇ」
秋雲が早速スケッチブックを取り出して書き留めている。昔からここは湯治客も多かったし、腰痛や肩こり持ちの近所のジジババ共が通い詰めてるからな。自然とアットホームで飾りっ気のない雰囲気が漂う。
「ごめんください、予約していた金城ですが」
「はいはい、おんでやんせ(いらっしゃいませ)」
玄関先で声を掛けると、女将さんだろうか、女性がパタパタと駆けてきた。俺がガキの頃はもっと歳食った婆さんだったんだがな……。
「お部屋は2部屋でしたよね?ご案内します」
「あら?何で2部屋取ったの?別に1部屋でもいいんじゃない?」
「本当にそうか?陸奥。これでも俺は気を遣ったんだぜ?」
「部屋割りは俺、金剛、加賀、陸奥の4人で1部屋。青葉、秋雲、山風の3人で1部屋だ」
「えぇ?私……パパと一緒がいい!」
山風がぐずるが、
「まぁまぁ、山風ちゃん。司令と嫁艦の皆さんには色々とやる事があるんですよぉwww」
「そうそう、エロエロとヤる事が……wおっと。山風ちゃんはアタシ達と一晩中トランプでもしようよぉ」
青葉と秋雲がファインセーブ。……まぁ、秋雲は余計な事を口走って加賀に殺気を飛ばされていたが。
「そ、そういう事だったのね」
「そーゆー事デース!」
青葉と秋雲の言葉で事態を察したらしい陸奥は赤面しているし、金剛はケラケラと笑っている。そう、旅先で温泉に浸かり、ご馳走を楽しむ。その上温泉の効能でホルモンの分泌を促されたらしっぽりと良い雰囲気になってもおかしくはない。というより、ドスケベ揃いのウチの嫁共がそうならないハズがない(確信)。しかし、『そういう事』をする時に他人の目があるのは気になるだろうとわざわざ部屋を分けてやったんだ。
「それとも、陸奥は見られると興奮するクチか。ん?」
「Oh……ムっちゃんのムはムッツリのムだったんデスね~」
「……変態ね」
「ち、違うわよっ!」
更に顔を赤くしながら、陸奥が叫ぶ。これ以上は陸奥が爆発しそうだからやめとこう。
部屋は泊まる客の少ない所を聞いて予約を入れておいた。大浴場からはちと遠いが、まぁそのくらいは我慢してもらおう。
「さてと、俺はひとっ風呂浴びてくるわ。お前らは?」
「ワタシ達もご飯の前に行くケド、後から行くネー!」
「そっか、んじゃな」
俺は浴衣に着替え、バスタオルを抱えて大浴場へと向かう。シャンプーや石鹸なんかは備え付けのが無いので持ち込むか買わないといかん。今回は持ってこなかったのでフロントで購入し、大浴場へ。時間帯が良かったのか、浴場には誰もいない。入浴料は温泉としては破格に安いので、泊まり客以外にも入浴だけの客も沢山いるハズなんだが……。
※大谷温泉の入浴料
大人350円、小学生100円、幼児70円。かなり安いと思う。
「あ゛あああぁぁぁぁぁ~……沁みるなぁ、コレは」
軽く身体を流し、ざぷりと浴槽に浸かる。思わず声が出るくらい気持ちいい。湯船に浸かった状態で、深呼吸。コレがここの温泉を全力で楽しむ時の流儀だ。
「darling、居ますカー?」
「うおっ!?金剛、何でここに!」
声のした方を向くと、旅行に一緒に来たメンバーが勢揃いしていた。浴場なので当然ながらスッポンポンだ。
「何故って、ここは混浴デスよ?」
※実際の大谷温泉には、混浴はありません。話の都合上混浴の方が都合が良いのでそうしました。悪しからず。
「だとしても少しは羞恥心という物をだな……」
「貴方に見られて恥ずかしいような身体をしているつもりは無いわ。むしろ、ガン見してくる位興奮してくれる方が嬉しいのだけど」
そう言いながらズイッと上半身を突き出してくる加賀。その胸には巨大なメロンが2つ、たわわに実っている。思わずゴクリと生唾を飲む。正直に言えば物凄く魅力的だ。だが、ここは温泉宿の大浴場……公共の場だ。流石にここでおっ始めるのはマズイ、というだけの良識はまだ残っている。
「そういう事をするにしても、風呂入って飯食ってからにしろ、加賀。今晩は3vs1の変則マッチになりそうだしな」
そう言ってチラリと様子を見れば、金剛はスケベな笑いを浮かべているし、陸奥は赤くなりながらもチラチラこっちを見ている。俺の方もさっきからのエロい挑発のせいでムスコがウォームアップを始めてるんだ。
「ふうううぅぅぅぅ……少し熱いわね」
暑がりの加賀が湯船に浸かりながらそんな事をこぼす。
「湯気が立ち上り易いように熱めの湯加減にしてあるんだとさ。呼吸する事でもラドンを体内に吸収しやすくする為らしい」
だから湯船に浸かりながら深呼吸するといい、という事らしい。だけどな金剛、
「いっぱい吸えばいいってモンでもないと思うぞ?」
「ふえっ!?」
すーはーすーはー、としきりに呼吸をしていた金剛が、俺に突っ込まれてビクリ、と身体を震わせる。
「だ、だって……ホルモンの分泌を促すって聞いたから」
「アホか、ガキなんて物は授かり物だぞ?出来る時には出来るし出来ない時には出来ねぇもんだ」
ううぅ~……と唸りながらいじけている金剛をぐっと抱き寄せ、唇を奪う。
「それに、今お前に前線を抜けられると困るんだ。頼りにしてんだぜ?筆頭秘書艦殿」
「あうぅ……は、ハイデス……」
金剛の顔が真っ赤なのは、熱い湯船のせいだけじゃないだろう。他の奴等も皆赤くなってのぼせそうな顔をしている。……何となく、俺も恥ずかしくなってきたぞ。
風呂から上がって部屋に戻ると、夕食の支度がしてあった。部屋は別々だが、ご飯は一緒に食べると言ってあったので7人分ちゃんと準備してある。
「って、おいおい青葉、こんな所までカメラ持ってきたのか?」
青葉の肩にはカメラを入れるケースが掛けられていた。
「当然ですよ!この旅行の記録係ですからね、青葉は!」
「……そのやる気を普段の業務に出せばいいのに」
加賀の辛辣な一言が胸に刺さったのか、うぐぅと唸りながら胸を抑える青葉。
「さぁさ、コントやってねぇで食おうぜ」
お互いにグラスにビールを注ぎ、
「乾杯!」
カチャン、と打ち鳴らして身内だけの宴会が始まった。料理は地元の食材を活かしたご馳走が並ぶ。昼間にもウニは食ったが、晩に食ってもまた美味い。他の連中も飲めや歌えのどんちゃん騒ぎで、楽しい夜だ。
~数時間後~
「それでは司令、青葉達はそろそろ部屋に戻りますね!」
「おう!おやすみ~」
青葉・秋雲・山風の3人が居なくなると、部屋の中には俺と嫁艦の3人だけになる。
「darling、そろそろいいんじゃないデスか?」
トロンとした甘えるような声色で、金剛がしなだれかかってきた。
「ん~?なにがだ」
解っているが、すっとぼけてみる。
「解ってるクセにぃ、白々しいデスよ?」
金剛の顔には先程からスケベな笑いが張り付いている。
「こっちの方も我慢の限界のようですが?」
「おいおい、積極的だなぁオイ」
加賀の奴め、自分も我慢の限界なのか、浴衣の上から俺の股座をまさぐってきやがる。そのやわらかなタッチの触り方に、ムスコはもうビクンビクンと反応してしまっている。
「……うふふ、楽しい夜になりそうね♪」
陸奥の奴までギュッと抱き付いてきた。3人共、温泉の効能で体温が高い。やれやれ、今夜も寝られない夜になりそうだ。
~一方その頃……~
「いやぁ、策士ですなぁ青葉殿」
「いやいや、さりげなくケースを部屋の隅に移動してくれたオータムクラウド先生もGJでしたよぉ?」
「まさか司令でも、青葉が忘れていったケースの中に高性能暗視カメラが入っているとは思いませんよねぇ?」
「そうそう、こんないいネタを目の前にぶら下げられて、お預け喰らうとか無理ってもんでしょ~www」
「「ぐっへっへっへっへ……」」
『パパ……青葉さんと秋雲さんが悪い顔してるよぅ』
隣の部屋では夜戦(意味深)の様子を隠しカメラで録画しつつウォッチングする、パパラッチとエロ同人作家の姿があった……。
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