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永遠の謎

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134部分:第九話 悲しい者の国その七


第九話 悲しい者の国その七

 王はだ。気品のある笑みを笑みを浮かべてこう答えたのであった。
「わかりました。彼ならばです」
「無事初演の指揮を務めますね」
「できます。確かに」
 今その彼がオーケストラの指揮の練習をしている。オーケストラも彼の指揮に基づいてそれで演奏をしている。それを見ればなのだった。
 王はだ。満足した顔で言うのであった。
「見事なものですね」
「ですから」
「いいと言われるな」
「間違いなく」
「それではやはり」
「このまま彼が初演の指揮を務めるか」
 周りは王のその決断にだ。首を捻るばかりだった。誰もがワーグナーとビューローの関係を知っているからこそだ。そうなるのだった。
 だがそれでも王はだ。それを意に介さない顔でまた言うのだった。
「全てを期待しています」
「はい、全てをですね」
「では」
 こうした話をしていたのだった。そしてだ。
 初演の時が近付いていた。王は何処にいても期待していた。そのうえで心を弾ませてだ。満面の笑顔でこう述べるのであった。
「間も無く歴史が変わるのだ」
「芸術の歴史がですね」
「それがですね」
「そうだ、あの作品はそれだけの作品だ」
 そのトリスタンとイゾルデのことである。
「それがこのミュンヘンで初演されるのだ」
「ウィーンでもベルリンでもなく」
「このミュンヘンでですね」
「だからこそ陛下は」
「私と彼の作品がだ」
 二人の作品だというのであった。
「間も無くな」
「それでは陛下」
「いよいよですね」
「初演を」
 誰もがその王の期待を見ていた。それはさながら子供が贈り物を前にしているかの様な。そうしたものだった。そして初演の時にだ。
 ワーグナーはだ。親しい友人達にこう述べるのだった。
「全ては陛下のお陰だ」
「あの陛下の」
「まさに」
「その通りです」
 ワーグナーは感謝の言葉をここでも言うのだった。
「あの方がなくしてトリスタンはとてもです」
「確かに。資金だけではありませんから」6
「何もかもを提供してくれますから」
「その陛下がなくしては」
「トリスタンはとてもですね」
「はい、その通りです」
 こう述べるワーグナーだった。
「あの方なくしてです」
「その陛下はさらに仰っていますね」
「トリスタンだけではないと」
「他の作品についてもお力をと」
「そう仰っていますね」
「今作曲のマイスタージンガーもです」
 その作品もだというのだ。
「それの上演にもお力を貸して頂けるというのです」
「それも相当な大作ですね」
「そうですね」
「はい、大作です」
 まさにそうだというのだ。ワーグナーの作品はどれも大作だがそのマイスタージンガーはその中でもとりわけ大きな作品だというのである。
「それの上演もです」
「されると」
「そうですね」
「そうです、それもです」
 ワーグナーの言葉が続く。
「そして」
「あの作品もですね」
「あれも」
「指輪も」
「あれもですね」
「そうです、指輪もです」
 ワーグナーの言葉に熱が宿った。これまでの喜びに加えてだ。
 
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