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真田十勇士

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巻ノ最後 訪れるものその三

 そうしてだ、次姉の常高院に言うのだった。
「今もですね」
「お姉様のことはですね」
「最後までお救いしたいと思っていましたが」
「それは私もです」
 常高院も悲しい顔で妹に返した。
「今も想っています」
「左様ですね」
「二度の落城もありましたが」
「その時も常に共にいましたし」
「幼い時は楽しい時も辛い時もいつも一緒でした」
 それだけに強い絆がある、常高院はこのことを想って止まなかった。そしてそれはお江も同じなのだ。
「それではです」
「どうしてもお救いしたかったですね」
「何としても。ですが」
「もう」
 お江は俯き涙を堪える顔で応えた。
「それも終わってしまったこと」
「あの方はもう旅立たれました」
「それではですね」
「お姉様の菩提を弔い」
「そして私は」
「はい、次の天下人となる方を見守るのです」
 母としてだ、妹にそうせよと言うのだった。
「宜しいですね」
「はい、そうすべきですね」
「そうです、宜しいですね」
「承知しています。では私は竹千代と」
 次の将軍に第一になる者として定められている彼と、というのだ。
「国松を」
「はい、育てるのです」
「そうさせて頂きます」
「せめてもの救いはお姉様のお子右大臣様のこと」
「表向きは亡くなられたとなっていますが」
「薩摩で生きておられます、では」
「そのことを救いとして」
「これから生きていきましょう」
 常高院は妹に優しい声をかけて慰めていた、二人は茶々の菩提を弔いつつも未来を見据えていた。そうして生きていた。
 上杉景勝は戦が終わると米沢に戻っていた、そこで直江景勝に言った。
「もうな」
「はい、戦は終わりましたし」
「我等はすることがなくなった」
 こう言うのだった。
「戦の為に何かすることはな」
「ではこれからは」
「この米沢のことを考えていこう」
「この藩をどう治めるか」
「それをな。戦国の世は完全に終わった」
 景勝も確信していた、このことを。
「大坂での戦も終わり大御所様もな」
「遂に」
「世を去られる」
 そうなってしまうというのだ。
「だからな」
「それではもう」
「うむ、戦国の世は幕を下ろした」
「そしてこれからは泰平の世がはじまる」
「では我等はな」
「この藩を治めていこう」
 米沢をというのだ、こう言ってだった。
 景勝は兼続と共に一つの藩を治めにかかった、もう上杉家は百二十万石の大藩ではないがそれでも先を歩もうとしていた。
 政宗は片倉の子に言っていた、すぐ傍には成実がいる。
「真田殿の細君とご子息、それにじゃ」
「ご息女は」
「手厚くな」
 その様にというのだ。
「藩としてそうしていくぞ」
「はい、そしてですな」
「既に真田殿のことは伝えてあるが」
「薩摩におられることは」
「しかしな」
「はい、このことは内密に」
「その様にな」
 天下では幸村はあの戦で死んだことになっているからだ。 
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