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育てて二十年

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第四章

 すると樵はすぐにその洞窟に来て隠者と竜の子にとっておきの葡萄酒を差し出してから笑顔で言った。
「これはお祝いだよ」
「この子のか」
 隠者は自分の後ろにいる竜の子に顔を向けつつ樵に応えた。
「そうか」
「そうさ、ドラゴンの姿になったな」
「礼を言う、ドラゴンはな」
「人間との間の子の姿からだな」
「こうした姿になるな」
「そうじゃな」
「けれどおいらはおいらだよ」
 竜の子は樵に言った。
「この姿になったけれどね」
「そうだな、御前さんは御前さんだな」
「そうだよ、それにどうもね」
「どうも?」
「二十年じゃドラゴンじゃまだ子供らしいんだ」
「何千年も生きるからな」
「だから暫くはね」
 ドラゴンの姿になったがというのだ。
「おとうと一緒にいるよ」
「それがいいな、まだ子供だからな」
 ドラゴンではとだ、樵は竜の子にまた言った。
「それじゃあな」
「これからも一緒だよ」
「さて、今日は狩りだが」
「何を狩ってきたらいいかな」
「御前の好きなものでいい」
「じゃあグリフォン狩ってくるね」
「おい、随分大物だな」
 樵は竜の子の今の言葉に驚いて突っ込みを入れた。
「グリフォンをか」
「この前刈ってきたよ」
「凄いな、あんな強い奴をか」
「ドラゴンの姿になったら勝てる様になったんだ、それも楽にね」
「流石はドラゴンだな」
「じゃあ行って来るね」
「気をつけるのじゃぞ」
 隠者は洞窟から出る為に動きだした我が子に注意した。
「危なくなったら魔法を使って熱線も吐いてな」
「そうして戦ってだね」
「戦うのじゃ、怪我はせん様にしてな」
「気をつけるよ」
 竜の子はこう答えて狩りに出た、そのうえで洞窟から出て空に羽ばたき暫くして一匹のグリフォンを倒してそれを獲って戻ってきた。隠者と樵と共にグリフォンの肉を楽しむ声は姿を変える前と変わらなかった。


育てて二十年   完


                   2018・9・20 
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