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レーヴァティン

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第七十話 セビーリアに向かいその九

「先程名を挙げたアレクサンドル六世も」
「その中にいたよな」
「右手に奸智、左手に謀略でした」
「それでお坊さんしかもその頂点だからな」
「日本の宗教界でそこまでの腐敗はなかったです」
「そうだよな」
「このことは日本にとって幸いでありまして」
 順一はさらに話した。
「この世界にとってもです」
「よかったな」
「バチカンの腐敗の害毒は凄まじかったです」
「十字軍とか侵略にも使われたしな」
「はい、中南米への侵略も」
 スペインやポルトガルが行ったそれもというのだ。
「あれも十字軍に近かったかと」
「というか十字軍って言ってないだけで大体同じか」
「その所業は」
「そうだよな」
「そうしたこともないので」 
 この世界ではというのだ。
「非常にいいかと」
「カトリックが俺達の世界の中世みたいに腐ってなくてか」
「まことに」
「確かにな。あそこまで腐ってるとな」
「どうしようもないですね」
「俺としてはな」
 久志は旗揚げした時のことを順一に話した。
「もう放っておけないからな」
「戦いますか」
「信長さんみたいにしないとな」
 彼が比叡山そして本願寺と行った激しい死闘を繰り広げてでもというのだ。
「やばいからな」
「はい、ああした勢力を国の中に置きますと」
「悪影響が半端ないからな」
「そして宗派、宗教同士の対立も」
「ない様にしたいな」
「幸いこの島では宗教対立と言えば」 
 そう言っていいものはというと。
「聖職者達が論戦をしてその結果」
「殴り合うとかな」
「それ位ですね」
「ああ、平和なものだな」
「殴り合いもどうかですが」
「それ位で済むならな」
「遥かにましです」
 宗教戦争になるより遥かにというのだ。
「十字軍や三十年戦争の様な事態になれば」
「酷いからな」
「無制限の殺し合いになります」
 どちらの戦争でもそうなった、三十年戦争では当時のドイツの人口一六〇〇万のうち六百万が死に多くの街や村が灰塵に帰した。
「そんなものが起こってしまえば」
「洒落になってないからな」
「巨大な宗教組織の横暴と宗教及び宗派同士の対立は」
「抑えないとな」
「はい、絶対に」
 それはと言うのだった。
「しないといけません」
「そうだよな」
「それもまた政治です」
 良太は久志に確かな声で言った。
「ですから宗教のこともです」
「考えていかないとな」
「それも確かに」
「この世界はそんなに専横や腐敗や対立はないがな」
「それでも注視していくべきです」
 それは絶対にというのだ。 
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