戦国異伝供書
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第十話 朝倉攻めその七
「朝廷と同じ様で全く違う」
「朝廷も都にありますが」
「兵はない」
「はい、しかし権威はありまする」
「祭事を行って頂くものでな」
「帝もそのことはご承知で」
「わしも有り難く思っておる」
朝廷、特に帝が祭事に専念されて織田家の政に口出ししないことにだ。信長も有り難さを感じているのだ。
だがだからこそだ、幕府についてはというのだ。
「もうご自身の状況をわかって頂いてな」
「そのうえで」
「静かにして頂きたいが」
「どうもそうした方ではないので」
「幕臣達も困っておる様じゃ、もうその幕臣達もじゃ」
細川達幕府に仕える者達はというのだ、明智もそうだが幕臣達はもうほぼ全員が実は禄は織田家から貰っていて細川の子忠興に至っては完全に幕臣となっている。
しかし義昭はその状況を全く理解せずそのうえでとだ、信長は今言うのだ。
「織田家が禄を出しておるというのに」
「即ち領地を」
「それがわかっておらん、あれではな」
「やがては」
「わしも考えていなかったが」
「幕府を」
「最悪そうせねばならんかもな」
平手に苦い顔で言うのだった。
「このままではな」
「それも致し方なしですか」
「あれではな、しかしな」
「公方様を今の時点で何とかお止めして」
「そうしてじゃ」
「幕府を立てていきまするか」
「そうしていきたい、しかし天下布武はな」
それはともだ、信長は話した。
「このまま進め都もな」
「織田家が治めていきまするな」
「勘十郎に任せてな、しかしあ奴も忙しい。また爺以外にも留守役が欲しいが」
「それでは」
「うむ、あ奴が前引き受けてくれて信貴山に行けたしな」
長益のことを言うのだった。
「これからはな」
「あの方にお頼みすることもですか」
「あろう、わしの弟達も皆それぞれ頑張ってくれておる、だから有り難く思っておる」
信行以外の者達もとだ、信長はこのことに深い感謝を覚えつつ平手に話した。
「そしてこれからもな」
「弟君の方々には」
「励んでもらいたい、今回の朝倉攻めでもな」
「左様ですな、それで殿」
平手は朝倉攻めについて自分の考えを述べた。
「攻めるにあたって都から兵を進めますが」
「その際近江の南をじゃな」
信長は織田家の領地となっているそこの話をするとだ、平手の言葉の先を読んで述べた。
「守りを固めよと」
「十万の兵で攻めればまず勝てますが」
「念には念を入れてじゃな」
「万全の備えをすべきです」
「若し何かあろうとも」
敗れる、信長もそれはないと思っていたが戦は何があるかわからない。それで平手の言葉に頷いて言った。
「巻き返すことが出来て傷を深めぬ為にもじゃな」
「はい、近江の南の守りを固め」
「備えをしてじゃな」
「攻めるべきです」
「そうじゃな、近江の北は浅井家がおるが」
織田家の盟友であり信長も万全の信頼を置いているこの家がというのだ。
「しかしな」
「浅井殿だけに頼らず」
「当家もな」
「守りを固めるべきです、そのうえで」
「朝倉攻めをするか」
「まだ間に合いますので」
それ故にとだ、平手は信長にさらに述べた。
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