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ランス END ~繰り返しの第二次魔人戦争~

作者:笠福京世
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第一部 GI歴末からLP歴の終わりまで
第一章(CP4二周目、結末Bエンド)
  第04話 自由都市ジオでの冒険者()稼業

 LP0001年 自由都市ジオ ティターンギルド

 ヘルマンを離れて半年を超える歳月が過ぎた。僕もマハも今や立派な冒険者()だ。
 AL教による報せによると新たな魔王リトルプリンセスが誕生したそうだ。
 千年以上続いた魔王ガイの時代(GI歴)は終わり、大陸全土で共通する暦がLP歴へと変わった。
 
 それこそ物語では魔王は勇者によって倒されるが、魔王を倒したという勇者の話は全く聞かない。
 ヘルマン、リーザス、ゼスの三大国、いずれか出身の勇者であれば国を挙げてのお祭りだろう。
 それとも魔王は寿命で死んだのだろうか?
 というか魔王って寿命があるのか?
 魔人はそれこそ何千年も死なずにいるっていう話も聞くが・・…よく分からない。

 考え込んでいるとギルドマスターが、GOLDの詰まった袋をもってやってくる。
 
 「ほら、坊主ども報酬だ」

 「はー、やっぱり冒険とは違って、護衛の仕事は安全で良いよな」

 「悪かったね」

 「ん? 終了証明書には野盗に襲われて撃退したとあるが?」

 「まあ護衛における戦闘は想定内のできごとですから」

 「それこそビュートンと一緒に冒険したら、想定外の連続だからなぁ」

 「ああ、キースの奴が紹介状に書いてたアレのことか」

 僕らは当初アイスの街にあるキースギルドで二ヶ月ほど新米冒険者として世話になっていた。
 そこで分かったのは、以前に姉が指摘していた僕の「冒険レベルなし」というがホンモノだったということ。
 料理レベルなしの人間は、調理場に砂糖がなくても、レシピの塩と砂糖を間違えるという――。

 それが冒険ともなれば下手すれば自分やパーティーの生死にかかわる。
 ギャクみたいに何とか助かることもあるが、シリアスな命の危険を感じることもあった。
 
 まず冒険ともなれば前日に準備していた道具が、当日になれば忘れものへと変わる。
 僕は日常的な忘れ物なんて滅多にしないし、うっかりさんなどではない。

 それこそ宿を出る前にも確認したものが、いざとなって使おうと思うと紛失している。
 以前にダンジョンに入る前に確認した「帰り木」が消えていたときは本気で死にかけた。

 それこそ冒険の途中に「その時不思議な事が起こった」としか表現できないようなことが何度も起こるのだ。

 この「冒険」(アドベンチャー)というヤツの定義がイマイチ良くわからない。
 というか一般的に「技能レベル」という存在の適用範囲は、それこそ明確には分かっていないのだ。
 剣や日本刀、短剣や長剣といった細かいくくりを考慮しないで戦えるのであれば「剣戦闘」となる。
 中には短剣しか使えない。日本刀しか使えない。そういう適応範囲の狭い技能も数多く存在する。
 素手による戦闘にしても「喧嘩」や「拳法」や「格闘」といった戦闘法の違いなどはよく分かっていない。

 だから僕らキースギルドで細々とした新米冒険者向けの仕事を引き受けながら、冒険者としての適性を調べた。

 まず、ダンジョンに潜れば、やたらトラップに引っかかるし、ありえないミスやトラブルが続くことが多い。
 どうやら冒険者稼業の中でいうダンジョン探検(ダンジョン・アドベンチャー)は、明らかに危険だというのは身をもって体験した。

 そうなるとフィールド探索(フィールド・アドベンチャー)の分野については判定のさじ加減が分からない。
 簡単な薬草採取やお遣い程度であればトラブルが起こったことはない。
 それが野外モンスターを退治して素材採取などになるとトラブルが発生する。
 たぶん一般的に秘境と呼ばれる場所に冒険と呼ばれる名目で近づくとヤバいと考えられる。

 これが都市におけるシティ・アドベンチャーとなると、もう判断の基準がサッパリ分からない。
 キースさんからは他のギルドで下手な依頼は受けるなと釘を刺される始末だ。

 結局のところ、商隊の護衛、荷物運び、対人警護などが問題なく受けれる依頼であることが分かった。
 この世界の神様の判定がガバガバなのか、嫌がらせなのか分からないが――とにかく僕は冒険には向いてなかった。

 キースギルドは幅広い依頼を扱う何でも屋的な冒険者ギルドなのだが、僕らが安全に受けれる依頼が少ないことが分かった。
 そこで仕方なくキースさんから傭兵稼業を専門とする信頼できる冒険者ギルドを紹介してもらった。
 それが自由都市ジオに拠点を置く僕らが所属するティターンギルドだ。

 「ええ、冒険だと思われる依頼は絶対に受けれません。振りじゃないですよ」

 「ウチの信頼に関わるからな。その辺は忠告に沿って厳選してるさ」
 
 「ハイマンさん、僕らが受けれる依頼はありますか?」

 ティターンギルドは自由都市に数多くある冒険者ギルドの中で特に精鋭の傭兵たちが所属している。
 例えば「紅の天使」の異名を持つ凄腕の女傭兵セシル・カーナがギルド所属のエースだ。
 他にも自由都市における最大規模の傭兵団(クラン)の団長であるヴィアン・ペコが出身者として知られている。

 ちなみに下っ端の僕らは、そんな大物の傭兵と会ったことは一度もない。
 大物となると依頼も指名になるらしく、仕事を探しにギルドに通うことはないらしい。
 そんな信頼と実績のティターンギルドには商隊の護衛の要人警護、魔物の討伐に紛争地域への派兵まで数多くの依頼が集まっている。

 「う~ん、坊主たち傭兵として戦争に参加するのは大丈夫なのか?」

 「そりゃあ冒険には当てはまらないだろうけどさぁ~」

 「あのぉ、僕やマハなんか思いっきり少年兵じゃないですか。年齢的に――」

 「おめーら、年齢の割には相当に戦えてるぞ」

 「冒険者となって半年も過ぎれば、それなりに戦えるってのは分かるけどな」

 「魔物退治ならともかく好き好んで国同士の戦争なんて関わりたく無いですよ。
  しかも少年兵まで欲しがるような戦場なんてノーサンキューです」

 それこそ楽に勝てる戦場なら傭兵はいくらでも集まるのだ。
 少年兵でも構わないから欲しいなんて言ってる依頼者は負け確定だろ。

 「ふん、よく分かってんじゃねーか」

 「まあ戦場帰りの先輩たちの自慢話は聞いてますから」

 「オレは大戦での手柄ってのには、それなりに憧れたりするけどな!」

 「まあ坊主たちなら焦って死ななきゃ、若いうちに異名がつくこともあるだろうさ」

 「ビュートンは冒険者としての異名は無理そうだけな!」

 「まあ姉のような正当な冒険者としての評価は……もう諦めてます」」

 先年にはゼスで起こった内乱の鎮圧にティターンギルドの傭兵が参加した。
 このゼスの内乱はヘルマンとリーザスのパラパラ砦の攻防に深く関係している。
 まずヘルマンはゼスの地方貴族にリーザス派兵の内通を事前に行っていたらしい。
 この派兵はゼスのガンジー国王の許可もなく極秘裏に行われる予定だったそうだ。
 ヘルマンとゼスの侵攻準備を察知したリーザスはゼスの中枢に内通をリークした。
 そして黒の軍をゼスとの国境であるアダムの砦付近に軍事訓練の名目で派兵。
 リーザスとの開戦を望まぬゼス王国は兵を集めていた地方貴族を反乱として内々に処分した。
 内通工作に失敗し、梯子を外されたヘルマン軍は、赤の軍を率いたリック将軍に撃退される。
 リック将軍の活躍は「赤い死神」の異名を武勇と共に各国に知らしめることになった。

 「坊主たちなら傭兵としてなら十二分にやっていけるだろうな」

 「さてさて、傭兵として有名になるのは、良いのか悪いのか」

 「オレは異名が雑誌とかに取り上げられたりしたら嬉しいけどな!」

 ヘルマンと比べて自由都市の優れている点は、情報メディアが発達していることだ。
 このジオにしても都市長パパデマス氏は元アイドルプロデューサーという経歴の持ち主だ。
 ステッセル体制になってからのヘルマン共和国は言論統制が敷かれて官報以外の情報が入りにくかった。
 それこそ首都ラング・バウで反体制の密告が推奨され、ひそひそ話をしている住民が多かったのだ。

 「まあ大きな戦争となると数年に一度ってところだが、小さな紛争なら毎年のようにある。
  坊主たちもウチに所属してたら、いつかは戦場で手柄を立てることあるだろうよ」

 「都市長からの正規の参戦依頼になるとギルド所属は強制参加でしたっけ?」

 「人数的なノルマはあるが、坊主たちまで強制となると直接ジオに軍が攻めてこない限りは大丈夫だ」

 「リーザスのリア王女は野心家だと聞きますけどね」

 実はティターンギルドの存在そのものが、自由都市ジオにおける外交(武力)カードの一つとなっている。
 ジオは自由都市圏の北部に位置し、大国であるリーザス領の南にあるオクの街と領土を接している。
 そんな中で今まで戦渦に巻き込まれず「ジーク・ジオ!(ジオ第一主義)」を宣言して古くから発展してきたのだ。
 いざというときに自由都市群が外敵に対して協力すれば、万単位の傭兵を集めることが可能だろう。

 「ハイマンのオッチャン、戦争以外の依頼はねーの?」

 「まあ護衛関連の依頼ならいくらでもあるな。
  坊主たち二人だけだと小さな隊商の護衛になると依頼が受け難いのが痛いな」

 「護衛が子供だけだと見た目で、どうしても舐められますからね」

 「ま、襲われても問題ないけどな」

 「魔物相手ならともかく護衛は見た目で賊に襲われないようにするのも仕事のウチだ」

 「食い詰めた野盗なんて金目のもの、殆ど持ってませんもんね」

 「この前の警備依頼なんか良かったな」

 「ああ、天満橋ありすのコンサートでの護衛か。坊主がストーカーを捕まえたヤツだな」

 「厳ついボディーガードとは別に子供の護衛がいるなんて考えませんもんね」

 「残念ながら、そういった小柄な方が適した警護依頼ってのは今はないな」

 「大きな隊商の集団護衛でも、荷物運びでも構いませんよ」

 「ふむ……そういや坊主たちは遠出したいってよく言ってるよな?」

 「まあリーザスの南部と自由都市の北部は、それなりに周りましたし?」

 「ビュートンと一緒だと、遠くに冒険に行くとか無理だからな!」

 ジオの街を中心に、アイス、カンラ、ラジール、レッド、Mランド、リーザスのオクに、ノース。
 リーザス国境の治安が安定しているので、僕らの活動範囲の街道はそれなりに安全だ。

 「行ってないのは北西にあるロックアース。マフィアの街ってことで避けてます。
  南部のカスタムは栄えてないから依頼自体がないですよね。
  そういえば港があるという西部のジフテリアには行ってみたいですね」

 「オレはサウス経由で王都リーザスに行ってみてーな」

 「昨年に戦争があったばかりだから、どうもヘルマン人としては行きにくいんですよね」

 「ならポルトガルまでの荷運びだ。それなりに貴重な品だから坊主たちなら大丈夫だろ」

 「ポルトガルですか!?」

 「どこさ?」

 「自由都市の南東にあるポルトガル商人の国だ」

 「JAPANへの玄関口ですよね!!」

 「JAPANかぁ、いつか行きたいって言ってたもんな」

 「報酬は準備金となる前金が三分の一で、残りは商品を渡したときに貰えば良い」

 「だったらJAPANに観光に行ってきても平気かな?」

 「依頼を果たしたら報告は多少遅れも構わんよ」

 ギルドマスターから品を受け取り、依頼書を確認する。
 受取人はポルトガルの役所に務める篠田さんか。
 やっぱりポルトガルだけあってJAPANの名前の人がいるんだな。

 「サッカーの試合が記録されたラレラレ石ですか」

 「ああ、中の映像が好事家の間では貴重らしい」

 「Mランドやポルトガルまでの護衛の仕事があったら一緒に受けますよ?」

 「そうだな――」
 

 十二になったら一緒にJAPANへ冒険に行こう。守られなかった姉との約束。
 僕は一年遅れて弟分のマハとポルトガルを経由し、JAPANの長崎を目指す。
 JAPANは冒険者の姉も行ったことがない場所だ。
 ついでの旅とはいえ、まさに未知の冒険へと向かう気分だった。

 Mランドまでは観光客の護衛。Mランドからポルトガルまではふたり旅。
 なにごともなくポルトガルに着いたことに僕らは疑問を持つべきだった。
 無事だったのは「冒険」ではなく「戦場」へと向かっていたことに――。

 そのことに気づいたのはポルトガル守備隊の十倍にも及ぶJAPAN兵が天満橋を渡りきった後だった。
 
 

 
後書き
*人物補足*

セシル・カーナ ランス10で登場 LP01年には勇者アリオス・テオマンと行動を共にしている
ヴィアン・ペコ ランス10で名前だけ登場 自由都市連合の傭兵隊長だが開幕で戦死するキャラ
天満橋ありす ランス03に登場するジオの街で活躍中の正統派?アイドル エロCGもカワイイよ!


*設定補足*
ティターンギルトとハイマンはオリジナルです。アリスソフトはガ○ダムのネタが多いよね!
ちなみにランス(&シィル)とはニアミスしています。
ビュートンがジオに拠点を移した後に、ランスがアイスの街に戻ってきてます。

正史ではLP01年の8月にランスがリーザスに向かっています(ランス01)
その頃にビュートンたちはJAPANに向かいポルトガルでの戦争に巻き込まれます。
 
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