真ソードアート・オンライン もう一つの英雄譚
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インテグラル・ファクター編
第二層攻略 ヒーローは遅れてやってくる
「本隊の退路が……」
「ヤバい!はさみ打ちだ!!」
後ろにはナト大佐、前には《アステリオス・ザ・トーラスキング》。これは危険だ。敵の数を減らさないと!!
「G、H隊まずはナト大佐をやるぞ!総攻撃だ!!」
俺達は防御や回避を一切せず、がむしゃらに攻撃をした。正しくゴリ押しで攻め続けどうにか倒すーーーーー
カン……カン……
アステリオス王は持っていた巨大ハンマーの先を地面に突く。
「なんだ?この胸騒ぎは……?」
アステリオス王はカパァと口を大きく開くと、電撃ブレス攻撃をしてきた。これにより攻略組の半分が麻痺になってしまった。麻痺にならずに済んだプレイヤー達は唖然とする。
「止まるな!!H隊は麻痺者を安全圏へ!G隊、こっちだ!アヤトはH隊と一緒に麻痺者を運んでくれ!俺達はバラン将軍を討ち取る!G隊ついてこい!!」
「「「「応ッ!!」」」」
「H隊だけじゃない!麻痺になってない奴は運ぶのを手伝ってくれ!!パワータイプの奴は一人で二人を運んでくれ!みんな、根性見せろ!!」
俺は鼓舞しながら麻痺者を運ぶ。ある程度運ぶと真っ先にバラン将軍の所に走っていく。
カン……カン……
「これは……!また来る……!キリトオオオオオ!!」
キリト達はバラン将軍を倒すとアステリオス王の方を向く。アステリオス王は既にブレス攻撃のモーションに入っていた。
くっ!俺のこの位置じゃ間に合わない!!
その時、アステリオス王の背中を駆け上がる誰かが見えた。アレは……
「「アスナ!!?」」
アスナはアステリオス王の頭まで登りきると、ジャンプして頭に向かって思いっきり蹴り飛ばした。
「あれは!体術スキル《弦月》!!」
バランスを崩したアステリオス王はそのまま崩れるように倒れる。しかし、その真下にはもう一人の人影があった。
その人影は倒れてきたアステリオス王の顎を拳でアッパーカットをする。あれは体術スキル《閃打》だ。アスナがいてこの状況で体術スキルを叩き込める人物は1人しかいない。
「コハル!!」
「おまたせ!アヤト!」
コハルは走って俺の所に来た。
「まさか本当にやりきるとはな!」
「うん!やったよアヤト!」
「やっぱりコハルは強くなったよ。おっと、それじゃあまたコンビを組んでくれるか?」
「もちろん!」
俺達はアステリオス王を見据える。
「行くぞ!コハル!」
「うん!」
俺とコハルはアステリオス王の周りを走り回る。
「何をしてるんや!?」
「周りを走り回ってますね?」
キバオウや麻痺者達は俺達の動きに驚く。
アステリオス王は周りを走り回る俺達にハンマーを振り下ろして攻撃をしようとするが上手く躱してみせる。そして、その隙にコハルと俺は交互に攻撃をする。
「これは……!」
「ヒット&アウェイ……!!」
「ボスへの攻撃のタイミングを絞って少しづつダメージを与え、それ以外は走る事に全てをかけているという事か!」
「それだけじゃない。奴らはボスの周りを走り回る事で、タゲをどちらかに交互に変えさせて攻撃を制限させてるんだ!」
「すげえ!俺達も早くポーション飲んで復帰するぞ!」
麻痺を回復させて次第にどんどん人が戻ってきた。
攻撃をしているうちにアステリオス王の体力ゲージがラス1になり、全身が赤みをおびる。
「よし!あと少しだ!いくぞ!」
俺達は更に攻撃をする。が、
「■■■■■■■ーー!!!」
「ぐわぁ!!」
アステリオス王は突然咆哮をあげる。その衝撃波で俺達は吹き飛ばされてしまった。
「まずい……!連携が崩れた!」
すると、アスナがアステリオス王の体を駆け上がり再び攻撃をしようとしていた。しかし、
「!?」
再びアステリオス王は咆哮をあげた。その衝撃波でアスナは投げ出され、そのまま地面に落ちて行った。
カン……カン……
アステリオス王はハンマーの先を突くと口を大きく開いた。タゲはアスナに向いている。
アスナはヨロヨロと立ち上がっている。あれじゃあ躱せない!
タッタッタッ!
走る音が聞こえる。
あれは、
「キリト!!」
キリトはアスナを抱きしめて躱そうとするが間に合わず、体力を大きく失われて麻痺になってしまった。
「コハル!行けるか!?」
「うん!」
俺達はキリト達に向いているタゲをこっちに向かせるために走る。アステリオス王はハンマーを振り上げ、キリト達を潰そうとしている。
「間に合えええ!」
そして、俺達は二人がかりでアステリオス王のハンマーを受け止める。
「アヤト……!コハル……!」
キリトが名前を呼ぶ。それにしてもなんて重さだ。第一層のコボルドロードの刀とは比べ物にならないぐらい重い。
「離せ!離すのだ!!」
「もう手遅れです!馬鹿なことはやめてくださいオルランドさん!」
オルランドが仲間に羽交い締めにされている。俺達の加勢しようとしているのを止められているようだ。
「馬鹿で何が悪い!戦友達や姫君達の盾となって倒れるは騎士の本懐……!真の勇者であるならば!!今征かんでなんとする!!」
「はいっ!オルランドさん!!」
新たな声と同時にアステリオス王のハンマーの重さが軽くなった。すかさず俺達はハンマーを弾き返す。
アステリオス王は目を抑えると、近くに何が飛んでいるのが見えた。
「あれは……!チャクラム!」
「……ってことは……!?」
アスナとコハルはフッと笑うと、
「遅いわよ。まったく」
「でも、お陰で助かりました!」
「「ネズハ(さん)!!」」
チャクラムをキャッチする男。それはいつもの何処か哀しそうな顔ではなく、覚悟を決めた《伝説の勇者達》の一人だった。
「ナーザ!どうしてここに!?」
「話は後です!さぁアヤトさん!コハルさん!キリトさん達を安全圏へお願いします!皆さんも回復に専念を!王は俺が引き受けます!!」
ネズハは再びチャクラムを指先で回しはじめる。
「よしっ!」
ネズハのチャクラムはアステリオス王を翻弄しながら着々とダメージを与え続けた。
「回復した人は俺と来てくれ!そしてアンタ!」
「!!」
「アンタが頼りだ!」
「はッはいッ!!」
リンドの一言でネズハは嬉しそうに涙を浮べながら気を引き締める。
俺達は安全圏でその光景を見ていた。
「なるほどな。チャクラムには投擲武器の弱点を克服しているってことか」
「どういうこと?」
「元々投擲武器は使いっきりが多い。でもブーメランと同じ要素を持つチャクラムはチャクラム本体か使用者が潰されない限り永遠に使い続けることが出来るんだ。要するに、ネズハがいる限りブレス攻撃は封印されたも同然というわけだ」
「ネズハさん……!」
コハルも涙を浮べながらネズハを見る。
「リンドも少しづつ指揮のコツを掴んできたみたいだな」
「ああ。動けてる人達の動きもだんだん良くなってきている」
俺はコハルをみる。
「コハル。行けるか?」
「うん!何時でもいいよ!」
「じゃあいk『待ってくれ』」
声の主はキリトだ。
「コハル。すまないが、今回は最後までアヤトと組ませてくれないか?」
「それは構わないですけど……」
「丁度いいじゃない?コハルは私と組みましょ?」
「アスナ?」
「キリト君達との勝負の続きをするわよ!」
「そういうことね!了解!」
「「今回の賞品はLAボーナスのアイテム!行くぞ(わよ)!!」」
ネズハは移動しながら攻撃を行ってした。
「おい!そっちは危ない!」
プレイヤーの一人がネズハに叫ぶ。
ズガーン!!
「ぐぬうぅぅ!!」
ネズハの前に現れたのはオルランド達レジェンドブレイブスのメンバーだった。オルランド達は盾でアステリオス王の攻撃を受け止めていた。
「オルランドさん!盾が!!」
「ぬ!?」
オルランドの盾は耐久値がそろそろ限界に達してしまいそうだった。しかし、
「貴卿ら……ッまだ回復がするではおらんではないか!!」
「ヘヘッ!アンタらのガッツに当てられちまっただけさ!」
「ああ!俺達にも手伝わせろよ!」
「……ヌハハハハ!ここは勇者ばかりであるな!!」
オルランドはニカッと笑い、
「ならば結構!押し返すぞッ!!」
「「「「応ッ!!!!」」」」
ドン!!
アステリオス王は押し返された勢いでおけぞった。
「ブラッキー殿!流星殿!」
「行くぞアヤト!」
「おう!」
俺とキリトは《ソニックリープ》を使い、アステリオス王の股間部分から頭まで切り込んだ。
「「はぁぁああああ!!」」
下からもコハルとアスナがアステリオス王の体を駆け上がって鼻先に《弦月》を御見舞した。
アステリオス王はその勢いで仰け反る。
「ヨッシャ総攻撃や!」
キバオウがプレイヤー達に声をかける。けど残念だったな。
「「これで終わりだ!!」」
俺とキリトは《レイジスパイク》を使い、アステリオス王の喉元を貫いた。
アステリオス王はそのままガラス片となり消滅した。
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