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魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話

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第百四十話

「えーと雪子さーん?
なんで刀が二振りあんの?」

巫女舞の儀式では刀を使う。

この神社に奉納されている刀、緋宵を。

身を清めた後、聖柄の刀に装具をつけるのだが…

何故か二振り、しかも片方は聖柄ではなく装具がついている。

「ああ、それは緋宵の真打と影打よ」

「はぁ…なるほど…。影打はどこからもってきたんです?」

「リュウが部屋で保管してたのよ」

へぇ、なるほどねぇ。

「二本あるのは、二人で舞って貰うためよ」

へー……。 二人?

「箒もやんの?」

「まぁ、一応練習はしていたが…」

「大丈夫よ。巫女舞は結局は武舞なんだから」

まぁ、そうなんだけどさ…。












身を清め、二振りの緋宵の装具を整え、化粧をし、舞の装衣を纏う。

去年までと違うのは俺のも箒のも腰の辺りに穴が空いていて、尻尾を通せる事だ。

「うんうん。二人とも可愛いわ」

「どうもです」

腰の刀の大きさが去年と変わっていない。

「なぁ箒。俺が真打ちでいいのか?
この神社の正当な血を引くのはお前だろう?」

「私は舞う気が無かったからな。練習をしていたお前がふさわしい」

そんな物なのかなぁ…?

「どうせ見分けはつかんだろう?」

「いや付くけど…」

この刀なんかヤバい。

どうヤバいかはわからないし、今まで何故か感じなかったけど、どっちの緋宵からも嫌な雰囲気を感じる。

エイドスを覗いても普通の刀なんだが…

なんだろう、嫌な感じだ。

特に真打ちの方。

「どうかしたか?」

「いや、なんでもない。俺の思い過ごしさ」

緋宵の柄を握る。

瞬間、手に馴染む。

手を離す。

瞬間、嫌な雰囲気が戻る。

「さっきからどうした? 緋宵を見てからのお前は何かおかしいぞ」

「そうだな…」

雪子さんが準備のため出ていったのを確認する。

「この剣から嫌な雰囲気がするんだ。
飲まれそうな、切られそうな、そんな感じ」

「一応奉納物だからな。吸血鬼のお前にはあまり良くないのかもしれん」

吸血鬼だから…?

「そうかもしれない。最後にこいつを握ったのは直木さんの蟹の時だしな。
だが、刀身に触れなければ害はないだろう。
俺が気を付ければいいだけだ」

部屋に備え付けられた時計を見れば、舞まであと僅かだ。

「じゃぁ、行こうか箒」

「早く済ませてしまおう」

side out












高さ二メートルほどのステージに一夏と箒が姿を顕す。

歓声は上がらない。だが感嘆の声があがる。

柳韻と雪子の三味線と小鼓の音に合わせて、二人が動き出す。

右手に刀を、左に扇を持った二人の巫女。

片方はひどく背の低いものの、自分の身長ほどの刀を持って難なく舞う。

もう片方は背が高く女らしい体つきの女で、刀を振るうのが様になっている。

そして、最も観客を驚かせたのは、二人の頭についた耳と、腰から伸びる尾だ。

扇で打ち払い、刀で切る。

その所作の度に、尾が揺れる。

細長い猫の尾と、ボリュームのある狐の尾。

その流麗かつ優美な舞を。



銃声が切り裂いた。







side in

『箒!』

咄嗟に箒に精神加速魔法インフィニティ・モーメントを、自分にブレイン・バーストを掛ける。

意識を向ければ観客の後方に義手から発砲している女が二人。

この世界は攻殻ほどじゃないが義肢技術が発展している。

スコールの体を見れば明らかだ。

『切り払え箒! 障壁はまずい!
幸い後ろには何もない!』

ここは地上二メートル。

斜め下からの銃弾は、俺達さえ避ければ後方の空の彼方だ。

『わかっている……!』

正面に目を向ける。

迫る弾丸は拳銃弾。ただし多数。

仕込んでいるのはサブマシンガンだろう。

『『闇の刃よ万物を断て!』』

緋宵に圧切を纏わせる。

酷く遅い時の流れの中で、刀を振る。

まるで水中に居るみたいだ。

一発目。

緋宵の刃が弾丸に触れる。

まるでバターのようにスッと切れる。

切られた弾丸は圧切の斥力で左右へ別れる。

二発目は当たらないコースなので無視。

三発目は身を捻って避ける。

四発目は体幹直撃コースなので切る。

『一夏。お前ならここからあそこまで走って切れるか?』

隣で同じく影打を振るう箒に尋ねられた。

『恐らくは』

五発目を切りながら答える。

『なら、行け』

『持つか?』

『インフィニティ・モーメントの倍率上げすぎだぞ一夏。
切りながら会話できる程だぞ』

『テレパシーだからノータイムなんだが…』

まぁ、それはどうでもいいか。

迫る弾丸を切り払いながら、正面を見る。

観客の中程、直線距離で15メートル程。

観客が左右に道を開けてくれているので、真っ直ぐ突っ込むだけだ。

『セルフ・マリオネット キャスト』

自分から弾雨に突っ込む。

一歩、二歩と歩みをすすめる。

ステージの縁に足を掛け、真っ直ぐに跳ぶ。

その間にも弾丸は放たれている。

セルフ・マリオネットによって思考と同等の速さで動ける。

着地の瞬間も足を止めず、ベクトル変換で加速する 。

必要最低限の弾を切り捨てながら進む。

まるで聖書の海の如く割れた観客。

弾幕が濃くなった。

二人がかりだ。

でも、たかが二倍だ。

どうと言う事はない。

距離がどんどん縮まる。

あと5メートル。

一歩踏み出す。

4メートル。

一歩踏み出す。

3メートル。

刀を構える。

二メートル。

踏み込んで。

今!

刀を大きく振る。

義手の外装をパージしたと思われる無骨な銃。

それの中程に一太刀。

二人分一気に切る。

返す刀で義手の付け根に一太刀。

『ブレイン・バースト。ディキャスト』

世界が音を取り戻す。

ズザザッ! と足袋が敗れ、足の裏が擦れる。

そう言えば装束のままだった…。

とりあえず再生を発動させ、足を直したと同時に、カラカラと音がした。

切ったサブマシンガンが地面に落ちたのだ。

「残念だったね」

左手の握った拳と、刀の頭を鳩尾に叩き込む。

「あ…!?」

「かはっ…!?」

飛び退くと、二人がドサリと倒れ………


溢れんばかりの拍手が巻き起こった。

「能天気な観衆だなぁ…おい…」

side out







一夏がステージに飛び乗る。

「一夏君!」

柳韻が膝をつき、一夏をだきしめる。

「大丈夫か!?」

「大丈夫です。一発たりとも当たってません。
勿論、箒だって無事ですよ」

「あまり、あまり危ない事をしてくれるな…!
君は、君は私にとって息子も同然なんだ!
例え君がどんな存在でも………!」

「ありがとう、ございます。柳韻さん」

そこに水を挿すのが一人。

「父さん。退いてくれ」

「箒…もうちょっと考えようね。つか自分の父親に退いてくれはなくないか?」

「む…。恋人である私が優先だろう」

「はいはい。リュウ、大人は引っ込みましょうか」

結局雪子が柳韻をひっぺがした。

「よくやったな、一夏」

「お前だってな。まぁ、相手はただの人間なんだ。どうという事はない」

一夏が指を指すと、気絶した二人がシルヴヴァインに捕縛されていた。

その周りには組長率いる組の者も居る。

「円香の方も、モノクロームアバターが警戒MAXで警護中だ」

続いて指を指した方では、スコールとオータムがビームサーベルの柄を持って構えている。

「ふむ。この状況でISを使わない判断は後で誉めてやらないとな」

「周囲にFA:G全機集結させておいて良く言う」

そこで、二人を瞬く数々の光が包み込む。

カメラのフラッシュだ。

「一夏、手を振ってやったらどうだ?」

「あー…」

一夏はにっこり微笑んで、観客に手を振った。

「戻ろうぜ、箒」

「ファンサービスは終いか?」

「そうじゃねぇよバカ」

一夏が箒の装束を正す。

「おまえその格好で人前に居座る気か」

激しく動き、装束が乱れている。

「おっと…。これは、恥ずかしいな」

そう言っては見せたものの、そこまで激しく乱れている訳ではない。

寧ろ一夏の装束の方が乱れている。

「おら、戻るぞバカ」

一夏が箒の手を取り、舞台の奥へと歩いていく。

「そう怒るな。お前以外の前で肌は見せん」

「そっそうじゃねぇし…」

一夏の耳が赤くなっているのを見て、箒はクスリと笑みを浮かべた。
 
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