永遠の謎
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109部分:第七話 聖堂への行進その十六
第七話 聖堂への行進その十六
「何処にいようと変わらない。そして」
「そして?」
「そしてといいますと」
「王は彼を助け続ける」
そのワーグナーへの援助は変わらないというのだった。
「決してだ」
「あの膨大な援助をですか」
「どうあっても続けられますか」
「王は」
「そうだ。それもまた変わらない」
それもなのだった。王のワーグナーへの愛はというのだ。
「それが離れたり薄らいだりしてもだ」
「愛自体は変わらない」
「そうなのですね」
「あの王はあまりにも愛し過ぎている」
そのワーグナーの全てをというのである。
「悲劇はそこにあるのかもな」
「厄介な話ですね」
「全くです」
それを聞いてだ。オーストリアの宮廷でもバイエルン王を気遣う声があった。だが王は今はその言葉を今は無視してだ。皇后と舞うのだった。
音楽が終わり舞い終わるとだ。お互いに優雅に一礼してから言い合った。
「ではまた」
「ええ。また」
お互いにだ。再びだというのであった。
「機会があれば」
「踊りましょう」
「この様に明るく踊れたのは久し振りです」
王は微笑んで皇后に話した。
「踊ること自体がです」
「なかったのですね」
「それは貴女もですね」
「はい」
その通りだとだ。皇后は微笑んで述べた。
「旅の中にいますから」
「そうですね。お互いに」
「できればこうして」
皇后はだ。自然にその望みを口にしたのだった。
「踊れればいいのですが」
「全くです。私もです」
「踊れないものがあります」
二人共だった。それがあるのは。それによってだった。
二人は踊れなかった。しかし今はなのであった。
「ですが今は」
「そうです。こうして」
「因果なものです。私は王です」
「そして私は皇后です」
二人の立場がだ。二人を縛っていたのだった。
「王であるが故に考え、悩む」
「私もまた同じ」
「しかしその座から離れられない」
王の顔に憂いが戻った。
「離れたら私は私でなくなります」
「そうですね。貴方も私も」
こうした話をしてだった。二人は今は別れたのだった。お互いに心で結び合うものを感じながら。二人は別れたのであった。
その頃だ。ミュンヘンの宮廷ではだ。端整な服を着た者達が頭を抱えながら話をしていた。
「何と、そうなのですか」
「はい、そうです」
「そこまでなのです」
こうだ。その一室で話をしていた。
「あの男、とかくです」
「陛下の寵愛があるのをいいことにです」
「そこまでしています」
「浪費の限りを尽くしています」
そうだとだ。彼等は話すのであった。
「あまりにも図々しい」
「これではあのローラ=モンテスと同じではないか」
「そんな男を置いていられるのか」
「このミュンヘンに」
「ここは」
そしてだった。一人が言った。
「彼を説得するしかないのでは」
「男爵、それしかありませんか」
「ここは」
「できるだけ穏健にいきたいのです」
あの男爵だった。彼は悩む顔で言うのであった。
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