戦闘携帯への模犯怪盗
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NEVER ENDING:二人の怪盗
ラディが怪盗になることを決意してから一ヶ月後。アローラに届いた予告状に、四つすべての島が騒然とした。
『今夜八時、メレメレ島の【悪色王の胆石】を怪盗乱麻・アッシュが頂戴させてもらうわ』
模犯怪盗に続く、新しい怪盗が現れる。島民たちはそれを見ようと各島から集まり、祭りのようにごった返していた。
そんな光景を、クルルクは町の遥か上空からどこか心配そうに見つめていた。
「いよいよ、か。ラディは時々頑張りすぎるから……この一ヶ月で無理して体調崩してないといいんだけど。怪盗以外にも新しいことの連続だろうし」
例えば今までは同じ孤児院で暮らしていたが、兄と妹のような関係ではなく競い合うライバルが同じ家で暮らすのは格好がつかないとのことでスズがラディの荷物をまとめて持っていった。アーカラ島の家に住んでいるらしいが、まだ住所は教えてもらっていない。ポケモン達がいるとはいえ、数年ぶりに一人になった孤児院は、少し寂しかった。
「アネモネさんとリュウヤの家の近くらしいけど……うまくやれてるかな、またマズミさんともめたりしてるかもしれないし」
「……ライライ」
傍らにいるライアーが持っていたオレンの実をクルルクに投げる。
それを反射的にキャッチしてライアーを見ると心配しすぎと言いたげな顔をしていた。
「そう……だね。僕達に勝って怪盗になったんだ。信じてあげなきゃ」
「ライ」
時間まではあと少し。クルルクとライアーは満天の星空から双眼鏡で街灯りを見下ろす。自分とともに過ごし、自分の誇りである怪盗に憧れてくれたあの子の活躍を祈って。
予告された場所はメレメレ島唯一のデパート。その周囲にはやはり大勢の警官が警備しており、猫の子一匹通すまいとしていた。指揮するグルービー警部も、デパート唯一の入り口で目を光らせたり、変装を警戒してか警官同士で、頬をつねり合っている。いつからそうしているのか、頬は真っ赤になっていた。
「はは、ピカチュウみたいだね。ライアーも昔はあんなふうだった?」
「……」
からかわれたと思ったのか、ライアーにはそっぽを向かれてしまった。ごめんごめん、と謝りながらもう一度デパートを見下ろすと、ふと違和感を覚えた。
「そういえばあのデパート、屋上に煙突なんてあったっけ?」
デパート内部。予告された品は掘り出し物売り場のショーケースの中に収まっていた。
その中には予告の品以外にも藍色の玉や、濃紫色の壺、古代ポケモンの一部らしい黒いキューブが入っているがあくまで目的は【悪食王の胆石】のみらしい。
予告時間間際になった今、グルービー警部と数人の警官がガラスケースの周りを見張っている。
「ここまで何も異常なし……俺含め警官の変装もなし……どう出てくる気だ、新たな怪盗め……」
警部が唸るように呟く。その直後、突如耳をつんざく金属音がデパート中に鳴り響いた。
「なんだ、警報ベルか!?」
「怪盗の襲撃か!?」
「落ち着けお前たち!これは怪盗乱麻の罠だ!どこから来るかわからん、周囲に気を配れ!」
音そのものはすぐに止んだ。素早い指示のもとガラスケースを取り囲んだ警官達が一斉に前方を警戒し、隙なく周りを見渡す。だが、怪盗はどこにも現れない。ついに予告時間になったその時。
「どこを見ているの?予告された品から目を離すなんて、随分雑な警備」
その声は、外からではなく警官達の中央から響いた。全員が振り向く。そこには、まるで忍者の様に黒装束に見を包んだ金髪の少女がガラスケースに座って【悪食王の胆石】を手にしていた。
「なっ……いつの間に!」
「一瞬あれば十分よ。サイドチェンジ、私のポケモンなら簡単だもの」
「何を馬鹿な……いくら高レベルのポケモンとてそんな事は不可能だ!」
「なんで?」
ショーケースに座ったまま、つっけんどんに聞く少女。
「サイドチェンジという技は、あくまで自分の近くにいるポケモンとの位置を入れ替えるもの。だがついさっきまでポケモンの姿は影も形もなかったし、そもそもこのデパートに不審人物がいないことは全員で確認済みだ!」
直接ポケモンを使わない警部とて、ポケモンを操る犯罪者を相手取る以上技の知識は十分にある。その指摘そのものは正しい。少女は口元で薄く微笑む。
「そう。なら今後もこのやり方でいけそうね」
「な……!?」
聞くだけ聞いて、答えは言わずに去ろうとする。驚く警部に、冷ややかな声で告げる。
「何? 私は模犯怪盗じゃないもの。あなたの疑問になんて親切に答えてあげない。私はどんな状況からでも獲物を盗み出す怪盗乱麻……それだけ覚えてくれればいいわ。じゃあね、間抜けな警部さん」
「……間抜けは貴様だ!宝を手にしたところで、我々に包囲された状態からどうやって逃げるつも……」
「じゃあ、さようなら。せいぜい次に盗みに来るときには対策の一つでも立てておけばいいわ」
そう言い残し──怪盗乱麻は、現れたとき同様、一瞬で消え去った。その場に、一欠片の黒いキューブを残して。
「ふう……上手く、いったねレイ」
先の冷淡ですらある態度とは裏腹に、自身の緊張をほぐすようなため息を付き、怪盗乱麻である少女──アッシュ・グラディウスは呟いた。
瞬間移動で現場から消え去り、今いるのは、デパートの屋上。
だが、その姿は屋上にいる警備員の目に映らない。
何故なら彼女のいる正確な場所は屋上の隅の煙突……に、擬装したツンデツンデの中だ。
「レイ…体を別々のところで動かすの、平気?」
ツンデツンデ内部が小さく発光し、マルの形を作る。
怪盗乱麻として初めての犯行に臨むラディは、クルルクが様子を見に行くよりも、警備が始まるよりも更に早くデパートに潜入していた。作戦の鍵となるのが彼女の相棒、ツンデツンデだ。
ツンデツンデは巨大な石垣のような姿のポケモンだが、その実態は小さな同じ生き物が集まってできているもの。その特性をラディは大いに利用した。
犯行を纏めると、このようになる。
まず昼間に何食わぬ顔で掘り出し物市場に行き、品物を見るフリをしてツンデツンデの一匹を商品に紛れ込ませる。
そして屋上に向かい、石垣のような姿を前もって決めておいた煙突のような形に変形させ、その中にラディは入り込み、犯行予告時間まで待つ。
時間になると同時、ツンデツンデがサイドチェンジを発動させ、ラディと商品に紛れ込ませた自分の体を入れ替え──ラディが言うべきことを言い終えた後、再びここに戻ってきたと言うわけだ。
「私は平気。ずっとレイがそばにいるんだもの、自分の部屋にいるのと同じよ」
昼間からおよそ五時間ほどラディはツンデツンデの中で待機しており、狭い空間の中で待ち続けるのは本来尋常ではないストレスがかかるものだが、ラディの表情に苛立ちはない。ひとえにツンデツンデとの信頼関係によるものだ。今も緊張は保ったまま、ツンデツンデの岩壁のような体に優しく手を当てている。
計画では後は警備員が去るのを待ち、自分の家があるアーカラ島へと帰るだけ、だが。
「まっくろどろぼうでておいでー!でないと警察つきだすぞー! ……うーん、でもどうせ出てきても突き出すからこれじゃ意味ないかな? ツンデツンデはそもそも体全体が目玉みたいなものだからほじくれないしね。とにかくはやくきて〜はやくきて〜」
屋上に響き渡る、無神経にとにかく思いつくまま口に出しているような声。その内容はラディがここに隠れていることを看破したものだったが、彼女の顔に驚きはなかった。
ものの見事に現場から退場し、これにて無事初めての怪盗としての活動は終了……とはならないことは、最初からわかっていたこと、むしろここからが怪盗になってやりたいことの本番だからだ。
「かくれんぼしてもお姉ちゃんにはお見通しだぞー!早く出てきてくれないと──煙突ごと潰すからね?」
「レイ、『鉄壁』!」
無邪気な声とともに、何か巨大なものが鳴動する音。同時にラディの指示でツンデツンデが体を硬化させる。
直後、お寺の鐘をハンマーで殴りつけたような凄まじい金属音とビリビリとした衝撃がラディを襲う。ツンデツンデは体をいったん分解し、ラディはその中から出て一気に後ろに下がる。
「ラディちゃん、みーっけた!あれ、今は怪盗乱麻って呼んであげた方がいいんだっけ? お姉ちゃんは悲しいぞー。可愛い妹が悪者さんになったなんて……」
ラディを襲ったのは、水色の髪をした年上の少女。その右腕にはびっしりと深緑色の植物が絡みつき、その植物が伸びる先には巨大な錨に舵輪をくっつけた巨大なポケモン、ダダリン。
そしてその少女はかつて一緒に住んでいた頃ラディを動く着せ替え人形のように扱って、心にトラウマを植え付けた張本人、マズミだった。マズミはそのことに何も思ってないような、アローラのきつい日差しのように明るい笑みを変わらず向けている。
「……心にもないこと言わないでくれる? いなくなったメレメレライダーに代わる、島キャプテンのマズミ」
「うわっ、よそよそしー。まあ早速始めちゃおっか!あたしのダダリンちゃんも勇気リンリン海のイカリが有頂天だからね!悪い子は海に代わっておしおきだー!」
「……いくよレイ、みんな! マズミに勝って……私は、私らしくアローラの怪盗乱麻になる!」
「『アンカーショット』!!」
「『ジャイロボール』!!」
再び鋼どうしが激突し、ゴングのように金属音がメレメレ島に響き渡る。
「マズミさん……そうか、ラディが島キャプテンをやめたから……」
無事に宝を盗み出したらしいラディに安堵したのもつかの間、二人の激突を空から眺めるクルルクは今にも二人のところへ飛び込んでいきそうだった。隣のライチュウが制止していなければそうしていたかもしれない。
マズミとラディの関係はクルルクも知っているし、以前マズミがうちに来てラディを傷つけることをしたのも見ている。会話までは聞こえないが、今も和気あいあいには程遠い状況にしか見えない。
今回は手出し無用とスズに言い含められているとはいえ、割って入るべきなのでは。そんな焦燥に襲われていると、夜空の向こうからピジョットに乗った青年がやってきた。
「……その様子だと、どうやら来て正解だったようだな」
「リュウヤ? ……どうしてここに?」
アーカラの島キングであり、マズミやラディの義姉と深い親交がある青年は、相変わらずの平然とした表情を浮かべている。クルルクの問いに、ため息をついて答えた。
「スズの性格を考えると、お前にあの二人の事の成り行きを教えていない気がしたからな……急いで来てみれば案の定、今にも飛び込んでいきそうなお前を見つけた、というところだ」
「この一ヶ月の間に、また何かあったの?」
「ああ。……だが、先に言っておく。今から話す内容を聞いてマズミを許してやってくれとは言わない。あいつも、それを望んでいない」
「どういう意味……?」
少しの間、リュウヤはデパート屋上で戦う二人を見てしばし沈黙した。三メートルはあるダダリンを藻が絡みついた左手で轟音を鳴らしながら振り回すマズミに、ラディはツンデツンデを盾にして凌いでいる。それはある意味細身のカミツルギを剣とするリュウヤやラランテスの葉っぱカッターをトランプに貼り付けて投擲するクルルクよりダイナミックだった。
「ラディが今俺とアネモネと同じコニコシティに住んでいることは聞いているだろうが……最初はアネモネと関わるのを嫌がった。あいつは自ら訪ねてきて、あまり会いたくないから自分の家には来ないでほしいと。……当然だがな」
「自分を虐めていた、姉の一人だから……だよね」
「ああ、心情はどうあれアネモネが加害者であることに変わりはない。だからあいつも受け入れようとしたが……そこへ、マズミがスズと共に現れたんだ、それから──」
リュウヤは語り始める。この一ヶ月間で彼女達姉妹にどんなことがあったかを。そして今、どういう関係にあるのかを。
(……私は、この人を絶対に許せない)
デパート屋上。マズミが振り回すダダリンの猛威を、ツンデツンデの体を大きな盾にして守り続けながら気持ちを固める。
三人の義姉の中でも一番自分を苦しめたのがマズミだし、女の子らしい格好で人前に出ることにトラウマを抱えたのもマズミが自分のドレスをまだ小さいラディに無理に着せて似合わないと嘲笑ったからだ。
クルルクと一緒に過ごすようになった後も会う度嫌な気分にさせられた。勝手に体を触って好き勝手に大きくなっただのトラウマを傷つけるようなことをしてきた。
怪盗になると決めてコニコシティに引っ越したときも……わざわざ顔を出しにやってきた。
(私の気持ちなんてわかろうともしないで……アネモネちゃんはラディに酷いことしてないから許してあげてって……アネモネ姉さんとリュウヤさんの前で、私に向かって土下座までして……)
『あたしのことは、一生許さなくていいから。いつでも、どこででも、私のことを罵って頭を踏みつけても構わないから』と。自分を一番傷つけた人が贈る、心に折り合いをつけるための免罪符。
……なんて卑怯なのだろう。それを臆病が故に自分を助けず、虐めもしなかったアネモネの前で言われてなお頑なになることなんて出来なかった。
なし崩しに取り持たれたアネモネとの仲は、ぎこちないながらも大きな問題なく続いている。クルルクのもとを離れた一人暮らしは、彼女の助けが無ければもっと難しかったとも思う。だからこそ、それを助けようとしたマズミが許せない。
あれだけ自分を虐めて、辱めて、嘲笑った人が──ヒーローであることを辞めたい気持ちに気づき、それをクルルクの前でじゃれつくことで煽り。辞めてしまうことによって空いてしまう島キャプテンの座を代わりに務めることをスズと約束したなどと。
なんで今更、そう聞いても、マズミは相変わらず何も考えていないような笑顔でこういうのだ。
『だって、こうすればこれからもラディちゃんは私のこと無視しないでいてくれるでしょ? 昔はあたしも子供だったけど今は酷いことをしたってわかるしー、でもだからって許してほしいなんて思わないからさ、意地悪お姉ちゃんのまま、罪滅ぼしができたらいいなーとかそんな感じ!!』
それ以上、何も聞けなかった自分に彼女はあっさり手を振って去って行ってしまった。今でも、彼女が自分のためにした事についてどう折り合いつければいいのかわからない。それでも。
(それでも私は、ここにいる以上は怪盗乱麻として戦う! 例え世界で一番嫌いな人の助けがあっての今だとしても……これがクルルクと向かい合う為に選んだ、私の本心だから!!)
「さあ、いつまでも守ってばっかりだとあたしも野次馬さんも退屈だよ!怪盗乱麻の力、見せてよ!」
マズミは砲丸投げの選手のように、ダダリンの遠心力を利用してぐるぐると回転を始める。『アンカーショット』だけではツンデツンデの守りを突破できないと判断してより威力を高めるためだ。
「……ええ、それを待ってたわ。レイ、『トリックルーム』!」
もう、マズミや振り回されて耐えるのは終わり。その決意を込めてラディは叫ぶ。発動された摩訶不思議な空間が、ダダリンを振り回すマズミの動きをスローモーション再生のように不自然に遅くする。
「かーらーだーがーうーごーかーなーいー!おーかーしーいーぞー!?」
わざとらしく間延びした驚きをする彼女に向けて、ラディは人差し指と親指を立ててピストルの形を作る。
「これが私だけの、全てを断ち切る力……いくよ!レイをこの手に、OVERLAY!!」
盾になっていたツンデツンデの体がバラバラに分解され、ラディのピストルの形を真似るようにレゴブロックで作ったような拳銃の姿を形づくる。そしてその照準は──ダダリンの錨でもマズミでもなく、それを繋ぐ蔦のような藻。
「『ラスターカノン』!!」
放たれた弾丸は藻を断ち切り、錨とマズミの繋がりを無くす。それも『トリックルーム』の効果でゆっくりと離れていくが、錨が屋上から飛び出た瞬間一気に早回ししたように吹っ飛んでいき、ハウオリの海へと突っ込んでいった。
「あ、あらららら……」
そして、ダダリンの重みで回転していたマズミもそれを失ったことで体の制御を失う。いわば遊園地のコーヒーカップから放り出されたようなものだ。ふらふらと回りながら屋上の端へと吸い込まれるように落ちていく。野次馬から悲鳴が上がる──前に、ラディはその手を掴んで止めた。
「……ラディちゃん?」
「……勘違いはしないで。目の前で人が死ぬのを黙って見過ごすのは怪盗のやることじゃないから、それだけ。……自殺ならなおさらよ」
掴まれたままぽかんとするマズミに、ラディは苦々しげに言った。マズミは今、明らかに自分から屋上から落ちようとした。
「……なんで? あたし、ラディちゃんにたくさんたくさんひどいことしたんだよ? 死んじゃえばいいって、思わないの?」
「思ったわよ、何度も。あの夜も。この前も。……でも、それをやったら、私はスズやクルルクに顔向けできない」
自分の人生に絶望してベランダから身を投げようとした自分をスズは助け、姉達なんて死んでしまえばいいといいながらそれはいけないことだ思う心をスズは見込んでヒーローと島キャプテンの役割を与えた。クルルクは与えられた役割のために頑張りすぎたり、過去に苦しむ自分にいつだって模犯怪盗として向き合ってくれた。
「……あーあー、ラディちゃんの目の前で落ちれば一生記憶に残るって思ったのになー」
「……うるさい、性悪女」
目を逸らしていつもどおり嫌われることで関心を持たれようとするマズミをさっさと引っ張り上げる。
「そんなことしなくても、私は一生マズミ姉さんが私にしたことを忘れない。だから、今度合うときも私が勝つから。……またね」
「……ありがとう、ラディちゃん」
「レイ! 引き上げるわ!」
最後の言葉は無視して、レイを一枚のサーフボードのような姿に変形させる。それに飛び乗り、ラディは怪盗乱麻として、見ている人全てに宣言する。
「私は全ての困難を断ち切る怪盗乱麻! 私に盗み出せない宝はない──よく覚えておくことね!」
そう言い残し、ツンデツンデに乗って夜空を消えていく。夜空の向こうにはクルルクとリュウヤの姿が見えたが、今日は会うべきときではない。ただ、明日になったらリュウヤに挨拶してから、クルルクの住む孤児院へ行こう。そして、一ヶ月でどんなに自分が頑張ったか話して、私はあなたに負けないと言おう。その為に、まずは夜空に叫ぶ。
「帰りましょうレイ! 私達はこれから───模犯怪盗に負けない怪盗になる!」
「うん……君からの予告、確かに受け取ったよ」
夜空にてラディの叫びを聞いたクルルクは体を翻し、孤児院の方角へ向けた。彼女の戦いと言葉で気持ちは十分伝わってきた。今の彼女なら、姉達とも上手くやっていけるだろう。落ちようとするマズミの様子を察知したリュウヤがデパートの下へ飛んでいったのだが、その必要もなかったようだ。
「さて、帰ろうライアー。これからは、忙しくなりそうだしね」
「ライライアー」
クルルクは夜空を飛びながら両手を広げ、天の星々に向けて自分たちを誇る様に謳う。
「アローラに二人の怪盗あり!模犯怪盗と怪盗乱麻、まだまだお楽しみは終わらないよ!!だって──僕と彼女こそが一番、この関係を楽しみにしてるんだからね!僕達の戦闘携帯〈ポケモンバトル〉はこれからだ!!」
これで一件落着、この話は終わり。だけど物語は終わらない。ポケモンバトルが禁止された世界でその楽しさを忘れさせないために、まだまだ自分たちの怪盗は続くのだから──
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