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真田十勇士

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巻ノ百五十二 迎えに向かう者達その九

「わしは大御所殿と闘う者ではない」
「だからですか」
「わしはもう闘わぬ」
「真田殿が敗れていても」
「ははは、それは絶対にない」
 後藤は幸村が敗れている可能性は全くないと言い切った、それは実際に確信して言った言葉である。
「今の真田殿が敗れることはな」
「決してですか」
「あの御仁はこうした時が最も強い」
「かなり辛い条項ですが」
「その辛い時こそじゃ」
 まさにというのだ。
「あの御仁は底力を出されるからな」
「だからですか」
「あの御仁は負けぬ」
「勝たれますか」
「必ずな、そして勝ったあの御仁をな」
「お迎えする為に」
「今から行く」
 その幸村の前にというのだ、こう言ってだった。
 後藤は神老と別れ幸村の方に向かった、戦を終えた彼も友を迎えに行った。
 大助と妖花の一騎打ちも続いていた、大助は若き日の己の父を彷彿とさせる槍術と忍術で闘う。だが。
 妖花は炎を自在に使いその大助と闘っていた。大助は苦しい戦を闘っていたが相手の妖花もこう言った。
「私も随分戦ってきたけれど」
「それでもですか」
「君みたいな猛者と闘ったことはね」
 それこそとだ、放った炎が大助の槍に払われたのを見て言った。
「なかったよ」
「そうですか」
「君幕府に使えていたら」
 若しそうしたならというのだ。
「その武芸だけで三千石位のね」
「旗本にですか」
「なれるよ、そして他の才を出せば」
 そうすればというと。
「大名にもなれるよ」
「そうなりますか」
「お父上は大名だったし」
「返り咲きですね」
「そうなるよ、けれどだね」
「はい、我等父子も共に来てくれた方々も家臣の者達も」
 ここに来た者は皆というのだ。
「もうね」
「そうしたことはだね」
「興味がなくなっております」
 そうなったというのだ。
「我等父子と十勇士達は最初からでしたが」
「無欲のまま戦っているってことだね」
「そうなります」
「そうだね、けれどね」
「それでもですか」
「私が言ったのは本当のことだよ」
 左手に炎で生み出した刀を出す、それで大助を激しく切りつける。だが大助は己の双槍でその刀も受けてみせる。
「それはね」
「そうですか」
「うん、君はね」
「そして父上も」
「大名にも戻れるから」
 その才覚によってというのだ。
「間違いなくね」
「もうそうした心はなくとも」
「なれるよ、本当に強いから」
「その強いというお言葉をです」
 妖花に逆に攻撃を仕掛けつつ言う、今度は妖花が受けて攻防が逆になった。
「それをです」
「受けてくれるんだね」
「はい、ですが」
「それでもだね」
「何度も申し上げますが」
「真田殿も君も他の人達も」
「そうした気持ちはありません」
 消えた、それも完全にというのだ。 
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