空に星が輝く様に
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98部分:第八話 ファーストデートその六
第八話 ファーストデートその六
「そういう人が食べるんじゃないの?」
「そうなんですか?」
「俺はそう思っていたけれど」
「愛ちゃんもしょっちゅう食べてますし」
「あいつか」
「はい、吉野家の牛丼特盛りをお弁当で」
定番のメニューの一つではある。
「それをなんです」
「それで西堀も?」
「駄目ですか?」
「いや、駄目じゃないけれどさ」
それは彼女も否定した。
「それでもさ」
「それじゃあ牛丼止めますか?」
「あっ、それは別に」
陽太郎の言葉がここで少し変わった。
「まあ牛丼の他にも食べるし」
「吉野家の他にもですか」
「ざる蕎麦もいい店知ってるしさ」
その店も知っているというのである。
「そこも行こうかな、なんて思ってたけれど」
「お蕎麦ですか」
「蕎麦アレルギーとかないよね」
「はい、全く」
それはないというのであった。
「アレルギーはないです」
「そう。だったら後で蕎麦も食べるし」
「まずは牛丼ですか」
「順番はいいんだよ」
それはいいというのである。
「それで行こうか」
「はい、それじゃあ」
こうしてだった。二人はまずは吉野家に入った。そして牛丼を食べてからそのうえで蕎麦を食べに入った。陽太郎も月美も頼んだのはざる蕎麦だった。
それを食べながらだ。陽太郎はあらためて言うのだった。
「あのさ」
「はい」
「西堀って蕎麦も好きだったんだね」
「はい、そうですけれど」
そのざる蕎麦を食べながらの返事だった。
「私和食好きなんです。それで」
「蕎麦もだったんだ」
「他にもおうどんも好きですし」
それもだというのだ。
「丼も」
「だから牛丼もなんだ」
「はい、そうです」
また答えた月美だった。
「牛丼は和食ですから」
「そうかな」
月美の今の言葉にはつい首を傾げさせる陽太郎だった。そのうえでの言葉だ。
「牛丼って和食だったんだ」
「カレーだってそうじゃないですか」
「えっ、カレーもなんだ」
「はい、そうですよ」
にこりと笑って陽太郎に言うのである。その和風の木の店の中で。
「カレーライスも」
「カレー丼じゃなくて」
「はい、カレーライスです」
はっきりと言ったのだった。カレーライスであると。
「それです」
「ええと、インドの料理ではなくて」
「和食ですよ」
また言うのであった。
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