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ねここい

作者:あちゃ
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第18話

 
前書き
私も青春したい。 

 
「あの……す……す、好きです! 貴女の事が好きです!! 一人の女性として……俺は貴女が大好きです!!!」
「あ………っ………」

勇気を振り絞って言い切った。
だが彼女からは返答が無い……
何だか言葉に詰まってる印象を受けるが、俺とじゃ無理と言う事だろうか?

不安になりゆっくり顔を上げる。
そこには両手で口を押さえ、潤んだ瞳で俺を見詰める……美少女!?
黒髪のボブヘヤーで、健康的に日焼けした肌の美少女……だ、誰ですか???

「さ、佐藤……さん?」
俺から呼び出し、俺から告白をしておいて、何故だか疑問形。
訪われた彼女も困るだろうに。

「あ……ご、ごめん。そ、その……オ、OK……です……」
え……OK? 何が?
『私は佐藤さんですよ』って意味か?

「わ、私も……大神の事が……す、好き……」
や、やった! 美少女から好きと言われた!!
……いや違う。今そういう事じゃなくて!

彼女は佐藤さんだ!
そ、そうだ……俺が告白したから、馬鹿()()の呪いが解けて、本来の佐藤さんの姿を目の当たりにしてるんだ!
その佐藤さんが『OK』で『私も好き』と言った……って事は?

「え! 嘘? マジ!?」
「え!? マ、マジ……よ……?」
ヤ、ヤバイ。いきなり呪いが解けるから混乱してる!

「で、でも……俺だよ? 頭も悪いし、運動神経も悪い。顔だって良いとは言えない俺だよ? 呼び出された俺に気を遣って『OK』って言わなくて良いんだよ」
「気なんか遣ってない! わ、私……結構前から……大神の事……す、好き……だったんだよ」

う、嘘みたい!!
始めて会った時から猫だったから、驚き恐怖はしたけど、気後れだけはしてなかった。でも最初から佐藤さんの美貌を知ってたら、俺とは釣り合わないと勝手に結論付けて、仲良くなろうともしなかっただろう。

ヤバイ、凄い、信じられない!
人生で始めて出来た彼女が、こんな美少女なんて!!
な、何か……涙が出てきた……

「ちょっ……な、泣かないでよ」
「ご、ごめん。でも嬉しくって……俺、女性にモテないから嬉しくって!」
俺は慌てて涙を拭いながら笑顔を作る努力をする。

「な、何言ってんだよ……大神は優しくて真面目だから、白鳥や愛美が狙ってるんだぞ。しかも小林先生だって狙ってるね……お前が卒業するのを待ってから、元教師って立場を利用してモノにする気に違いない」

マ、マジか!?
これがモテ期ってやつか?
もう二度と訪れないだろうな……佐藤さんを手放しちゃダメだね。

チラリと佐藤さんの顔を見ると、頬を赤らめて俺を見詰めてくれている。
まだ午後の事業が残ってるけど、そんな状態じゃない。
俺は佐藤さんを傍にある普段使われてない非常階段の一段目に座る様誘い腰を下ろす。

どうせ今戻っても事業になんか集中出来ないから、互いに何処が好きになったのかとかを語り合う。
二人っきりだが変な事はしない。
こんな美少女が俺の彼女なんて奇跡だから、早まった真似して台無しにするわけにはいかない。

でもね……佐藤さんの方からね……












「よぉ……何でお前、午後の所行をサボってんだ?」
流石にHRまでサボるわけにもいかず、俺は佐藤さんと共に教室へ戻ると、速攻で蔵原から声をかけられた。因みに教室の手前まで佐藤さんと手を繋いで居たけど、バレるのは恥ずかしいので直前で手を離した。

「ちょっと……体調悪くて……」
本当の事は言えず視線を逸らして嘘を吐く。
ふと教室内を見渡すと、白鳥さんと渡辺さんの席に見知らぬ美少女が……
え!? う、嘘だ……あんな美少女等が俺を狙ってるなんて有り得ない!

俺の視線に気付いた二人が席を立ち近付いてくる。
多分白鳥さんだろうけど、服の上からも判る巨乳を揺らしてこっち来る。
透き通る様な白い肌に、輝く様な金髪美少女……絶対に俺の事を好きなんて有り得ない。

そして多分渡辺さん……
黒くて綺麗な髪をポニーテールにして笑顔が眩しい。
少し童顔っぽい……まだ中学生にも見える美少女だ。

「大神さん……体調が悪かったのですか?」
「大丈夫、大神君?」
俺に惚れてるなんて知らなかったから今まで気にしなかったけど、凄く二人とも近付いてくる。白鳥さんの胸なんかは俺の肩に当たるくらい!

「だ、大丈夫! ほ、本当はただのサボリだったんだよ! ご、ごめんね……」
俺の左前の席では、何時もならこの輪に加わる佐藤さんが、こちらを見る事なく笑いを堪えている。ちょとぉ~……俺に余計な情報を与えたんだから責任とってよぉ。

「あれ、大神?」
タジタジになりながら席に座ると、突然蔵原が何かに気が付き話し掛けてきた。
何かこの状況を緩和させる事を言ってくれるのかな?

「お前……愛香音ちゃんと付き合う事にしたの?」
「な、な、な、何を、い、い、い、言ってるん!!??」
「そ、そ、そうよ! な、な、何なんだよ蔵原!」

突然の指摘で大いに慌てる俺。
俺等の輪に加わらないで居たのに、椅子をひっくり返す程慌てて蔵原に詰め寄る佐藤さん。
俺達二人の反応を見てニヤリと笑う蔵原。

「大神ぃ……口に愛香音ちゃんのと同じ口紅が付いてるぞ」
「え? マジで!」
俺は慌てて唇を触った。

「お、大神……私……口紅なんか付けてない」
「うっそ~ん(笑) 唇に色移りはありませ~ん。君等の態度でピンときただけ~」
だ、騙された……

「う、嘘!? 大神君……愛香音ちゃんと付き合うの!?」
「そ、そんな……で、出遅れましたか!?」
二人に視線を移すと、泣きそうなくらい落ち込んでいる。お、俺なんかより良い男は沢山居るだろうに……

「ほらほら~、HR始めるわよ。何を騒いでるの、席に着く!」
蔵原の暴露と俺達の動揺で事態が大事(おおごと)になり、教室内がざわついてると小林先生が入って来た……多分。

い、いや……三毛猫しか知らないから、俺。
艶やかな黒髪を腰まで伸ばし、切れ長の瞳が色っぽい美女。
こんな大人な美女が俺みたいな子供に惚れるわけない。

「センセ~……大神が愛香音ちゃんと付き合う事になって、教室内がざわついてます!」
(ガタン!)「え!? う、嘘でしょ?」
嘘でしょって言いたいのは俺だ。小林先生は蔵原の言葉を聞いて、教壇を倒す程動揺する。

「センセー動揺しすぎ(笑) 失恋の痛手は俺が癒やして差し上げますよ。ベッドで!」
「し、し、し、失恋って……な、何を言ってるんですか、蔵原君は!?」
いやいやいや……俺でも判る様な動揺でしたよ。

「さ、佐藤さんは可愛いから、引く手あまただと思っただけよ!」
「いえ先生。先生と白鳥さんと渡辺さん……そして佐藤さんが大神君を狙ってる事は、夏休み前からクラス中に知れ渡ってました。これに気付かないのは相当鈍感な人くらいです」

え、マジで!?
余り仲良くはないクラスメイトの高宮(♂)がニヤニヤしながら教えてくれた。
相当鈍感な部類に当事者の俺が混じってる。

「おい、高宮が言ってる『相当鈍感な奴』ってお前の事だぞ(笑)」
この状況が吃驚すぎて呆然としていると、蔵原がダメ押しで教えてくれた。
俺だって彼女等が猫の姿じゃなければ……それでも気付かないかも?

そんな俺を取り巻く嘘みたいな状況中、本日は下校の時間となった。
もうバレてるわけだし、佐藤さんと手を繋ぎ仲良く帰路に……
後で、白鳥さんと渡辺さんが泣きながら帰ったと聞き、俺相手なのにと言う申し訳なさでいっぱいになる。






蔵原の様にホテルに連れ込むなんて出来ないが、下校途中にある公園で日暮れまでお喋りして人生二度目のキスで締めくくる。
そして幸せの余韻に浸りながら帰宅する。

まだ夕飯には時間があるので、自室にて時間を潰そうと戻ると……
そこには馬鹿()()が漫画を読んでいた。
本来ならコイツに報告してやる義務はないが、奴の呪いを撥ね除けてやった事を伝えたくて、少し上から目線で伝える事に。

「おい、遂に呪いを解いてやったぞ!」
「ニャに!? 貴様なんかが告白してOKもらえたのか!?」
「言い方がムカつくが、その通りだよ。もう俺には彼女が居る!」
「も、物好きな女も居たもんだニャ」

「よ、余計なお世話だ!」
俺も同感だけど、此奴に言われると腹が立つ。
ムカつく序手でに使えないアイテムの事を責めてやろうか。

「そう言えばお前から貰った『好感度上昇ブースターシール』は使い所が無かったぞ! お前同様に使えないな」
「はぁ? そんなの当たり前ニャ! 虫眼鏡以外、そこらで手に入る代物ニャ。あんなシール女に貼ったところで、何の嫌がらせかと怒りを買うだけニャ。もしかしてお前……あんな道具に頼って女の心を操ろうと考えてたのか? ゲスな男だニャ」

そ、そんなつもりは無かった……いや、ちょっとはあったけど、マジックアイテムってこの『好感度計ルーペ』しか無かったって事?
さ、詐欺じゃん! 俺はマジックアイテムだと思ったから、さきいかと好感してたのに……

(ゴツン!)「ニャ!」
「もう出て行け」
俺はベッドで寝そべる馬鹿()()の後頭部にゲンコツを落とし漫画を取り上げると、ストックしてあったさきいかを全部渡して窓から追い出した。

「もう二度と来るな!」
「言われんでも来ないニャ!」

こうして俺は神だか悪魔見習いだかに振り回される事はなくなった。
でも何だかんだ言って、あの星への祈りが通じだお陰であろう。
もう二度と神頼みはしないと誓いつつ、これはこれで感謝もしている。







後日談だが……

もう目当ての男が無くなった事を知った蔵原が、白鳥さんを口説き落とした。
愛香音ちゃんとのデート中に、ラブホテ○ から二人して出てくる場面に出会した。
白鳥さんは慌てて言い訳しようとしてたけど、彼女程の美人を蔵原が放置しておくワケ無いので、納得している。

渡辺さんも口説いたらしいが、本人も言ってた様に女誑しは嫌いみたいで、口説き落とされなかった。
ちょっと不安なのが、未だに俺を諦めてないという噂を聞く事だ。
俺に固執するより、新しい恋を見付けた方が良いのに……

小林先生は未だにフリー。
勿論、蔵原に口説かれたらしいが、相手は生徒なので口説き落とされなかったらしい……ただ蔵原が言うには、『卒業したら受け入れてくれるに違いない』との事。




俺の青春は未だ未だ続くが、馬鹿()()の馬鹿に振り回される話しは終わり。
愛香音ちゃんと別れず、一生を添い遂げられるよう、俺の努力は終わらない。
唯一役に立つ『好感度計ルーペ』を駆使してね。


 
 

 
後書き
迷った。
誰と大神を付き合わせるか、本当に迷った。

読者様の期待に添えなかったら申し訳ございません。
ですが あちゃ の「ねここい」は、
これが本筋であります。 
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