空に星が輝く様に
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74部分:第六話 次第にその十二
第六話 次第にその十二
「あいつが」
「あいつって?」
「今度はどうしたの?」
「ああ、今度の月曜の九時からのドラマのね」
流石に同じ誤魔化し方を続けてする訳にはいかなかった。星華はそれで今はこう言うことにしたのだった。月美のことは言うわけにはいかなかった。
「ヒロインだけれど」
「ええと、あの背の高いショートカットの」
「あの人?」
「そう、あいつって言ったらあれだけれど」
取り繕いながらの話だった。
「あの人って何かね」
「好きになれないとか?」
「それでなの?」
「好きになれないんじゃなくて合わない気がするのよ」
こう言うことにしたのだった。
「何か役にね」
「そうかな」
「別にそうじゃないわよね」
「そうよね」
だが周りはこう言うのだった。
「別にね」
「そういうわけじゃないわよね」
「そうそう」
「だったらいいけれど」
演技をそのまま続ける。
「相手役の人は好きよ」
「ああ、元仮面ライダーだったっけ」
「あれ、戦隊じゃなかったっけ」
「どっちだったかしら」
皆この辺りの記憶はあやふやだった。
「まあとにかく背高いしね」
「格好いいしね」
「いい感じよね」
「あの人は好きなのよ」
これは星華の本音だった。
「前からね」
「そうなの。あの人はいいのね」
「それで」
「ええ、いいわ」
また言うのだった。
「とにかく。お家に帰って」
「どっか寄らない?その前に」
「コンビニでも」
「どう?」
「ああ、それはパスしとくわ」
星華はそれは断ったのだった。
「もう帰ってね」
「それで晩御飯食べて」
「それからお風呂入る?それともドラマ?」
「お風呂」
そちらだというのだった。
「そっちにするわ。すっきりとしてからね」
「そう、それからドラマね」
「そうするのね」
「ええ。時間もそれで丁度いい感じになるし」
こう部員達に答えるのだった。
「それじゃあね」
「そうね。それにね」
「それに?」
「練習試合がずっと終わったら」
それからの話もされるのだった。
「あれよ。インターハイだから」
「また練習が遅くなるみたいよ」
「またなの」
星華はそれを聞いて少しうんざりとしたような顔になった。そのうえでの言葉であった。言いながら首を右に倒しもさせている。
「何か忙しい部活ね」
「そうね。結構ハードよね」
「先生も先輩も意地悪とかしないからいいけれどね」
「そうよね。部長もいい人だしね」
「それはないのがいいわよね」
これはいいとされる。少なくとも顧問にも先輩にもそうした人間はいない。これは彼女達にとっては非常にいい助けになることであった。
「平和で和気藹々ってしててね」
「それで行きたくないって気持ちになるし」
「練習はハードでも思ったより疲れないし」
このこともあった。
「ドリンクのせいかしら」
「いや、蜂蜜のせいじゃない?」
「あれなの?」
「そう、レモンを蜂蜜に浸したあれ」
それが用意されているのだ。この部活ではだ。
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