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空に星が輝く様に

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503部分:第四十話 それぞれの幸せその二


第四十話 それぞれの幸せその二

「今日はね。部活の後でね」
「一緒に帰るの、彼と」
「そう約束してるの」
 笑顔に戻っていた。ただし先程のものより明るい笑顔である。
「今日からね」
「デートね」
「あっ、そうね」
 椎名の言葉にだ。確かな顔で頷いた。
「そうなるわね。デートね」
「そう。二人で一緒に歩くとそれは」
「デートね」
「デートは。したことある?」
「実は」
 その指摘にだ。星華は苦笑いになった。そのうえでの返事だった。
「ないの」
「そうなの」
「はじめてなの」
 素直にこう話す星華だった。
「どうなるか心配だけれど」
「誰だって何でもはじめてだから」
「だから?」
「そんなに不安にならなくていいから」
 椎名は前を向いて星華に述べる。これまでと同じだ。
「デートも」
「けれどね。それでも」
「不安になるのね」
「うん、どうしてもね」
 そうだとだ。星華はここでも素直に述べた。
 そしてその素直さでだ。己の中の不安もそのまま出していた。
 椎名もそれを見ていた。前を向きながらも。そのうえでまた星華に告げた。
「不安なのはわかる」
「うん」
「けれど。落ち着いていけばいいから」
「わかってるけれど」
「不安で仕方ないなら」
 椎名はどうしても不安を抑えられない星華を見てだ。こうも告げた。
「その場合はおまじない」
「おまじない?」
「ほら、あれ」
 こう言ってであった。そのおまじないを話した。
「あの人という字を三回掌に書いて」
「それで飲む仕草をするのね」
「それをすればいいから」
 それを話したのだった。
「結構効果あるから」
「じゃあ。それをね」
「して」
 椎名は告げた。
「どうしても不安なら」
「ええ、そうさせてもらうわ」
 星華も真剣な声で述べた。
「その時はね」
「そうして数をこなしていけば慣れるから」
「デートも?」
「そう、デートも」
 そうした意味でだ。他のことと同じだというのである。
「同じだから」
「じゃあ。最初を何とかクリアーしてね」
 星華もだ。決心した顔になって述べた。
「これから。やっていくわ」
「そうして。じゃあね」
「うん、じゃあね」
 二人で話してだ。実際に星華はデートをした。僅かの距離と時間だがそれでも椎名に言われたおまじないを実際にしてそれをした。
 そしてだ。次の日だ。星華は朝に三人にこのことを話した。
「凄く緊張したけれど」
「上手くいったのね」
「そうなのね」
「はじめてのデート。成功だったのね」
「ええ、何とかね」
 心から安堵してそして満ち足りた笑顔でだ。星華は言うのだった。
「いけたわ」
「おめでとう」
「よかったね、最初が肝心だったし」
「それならね」
「うん。それで今朝も」
 今日もだというのだ。既にだ。
 
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