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空に星が輝く様に

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50部分:第四話 桜の木の下でその十三


第四話 桜の木の下でその十三

「来た」
「来たって?」
「つきぴー」
 月美であった。彼女が今一つ晴れない顔で来たのである。椎名はその彼女を見てすぐに声をかけたのである。
 しかしだ。彼女はそれに気付かない。狭山がここで言った。
「聞こえてないんじゃないのか?」
「そうよね」
 それに津島も頷く。
「そうみたいだけれど」
「それじゃあ」
 椎名はここで懐から携帯を取り出した。それを左手に取ってすぐに入力するのだった。
 するとだ。不意に月美の携帯が鳴った。その曲は。
「あっ、この曲」
「わかるんだ」
「ああ、この曲って」
 陽太郎が赤瀬に応えながら言う。
「ドボルザークだよな」
「そうだね」
「新世界の四番だよな。俺あの曲好きなんだよ」
「クラシック好きなんだ」
「お袋が好きなんだよ」
 だからだというのである。
「それでなんだよ」
「それで好きなんだ」
「ああ、実はな」
 この事情も話した。
「それでなんだよ」
「そうなんだ。お母さんいい趣味してるね」
「奇麗系が好きなんだよ」
 ハンバーグサンドを食べながら話すのだった。
「それで俺もな」
「成程ね」
「それでだけれど」
 食べながらさらに話す。
「なあ、椎名」
「うん」
「来たぞ」
「わかってるわ」
 その月美は携帯を見てそのうえで椎名達に顔をやってだ。静かにそこに来た。そうしてすぐに椎名に対して言ってきたのであった。
「愛ちゃん、中庭で食べてたの」
「そうなの」
 自分のすぐ傍に立つ月美を見上げて答える。
「つきぴーはどうしたの?」
「私はもうお弁当食べたから」
 そうだというのだ。
「だからもう」
「じゃあ今はお腹一杯ね」
「ええ」
 椎名の言葉に謙虚そうな仕草でこくりと頷くのだった。
「そうなの」
「わかった」
 椎名は月美のその言葉に頷いた。
「じゃあどうするの」
「そう言われても」
「一緒にいない?」
 少しおどおどしたものを見せてきた月美に対する言葉だった。
「何もなかったら」
「いいの?」
「一人でいるより皆でいる方がいいから」
 月美は今度はこう言った。
「だからね。一緒にいよう」
「ええ、わかったわ」
 月美は椎名のその言葉に静かに頷いた。
「それなら」
「一緒にいるだけでいいから」
 また言う椎名だった。
「それだけで」
「何か変な理屈だな」
 二人、というよりかは椎名の月美に対する言葉を聞いて言う陽太郎だった。
「いるだけでいいなんて」
「人間って顔を合わせるだけで違うから」
 椎名はその陽太郎に対しても同じようなことを言ってきた。
「だからいいの」
「そういうものか」
「そう。それでつきぴーは座って」
「ええ」
「それでお話しよう」
 完全に椎名のペースだった。そのうえで話は進んでだ。月美は椎名の横に座ってそのうえでその談笑に加わることになったのだった。
 
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