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厚生委員長の秘密

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第一章

               厚生委員長の秘密
 坪木栗子は八条学園商業科三年で女子の厚生委員長を務めている。女子野球部では二番セカンドとして活躍している。
 背は一四二センチと小柄で胸もないが長い日本人形の様な見事な姫カットの黒髪に切れ長の大きな目と細い眉に白い肌を持つかなり整った外見だ。成績もよく運動神経もかなりのもので性格も面倒見がいいことで知られている。
 一見非の打ちどころがないが実は彼女にはある悪い噂、裏の顔があると言われていた。
 厚生委員会の一年達を集めてだ、三年の女子二人が栗子のことで注意していた。
「いい?うちの委員長普段は凄くいい娘だけれどね」
「裏の顔があるからね」
「このことは注意しておきなさい」
「しかも要注意よ」
「あの、裏の顔って何ですか?」
 一年の男子生徒の一人が手を挙げて先輩達に尋ねた。
「何か凄い気になるんですが」
「それを今から言うから」
「よく聞いてね」
「裏っていじめするとか家がヤクザ屋さんとか」
「いじめとか意地悪はしないわ」
「絶対にね」
 まずはこのことが否定された。
「そうしたことは絶対にしない娘だから」
「普段も親切だしね」
「ケチでもないし」
「というか気前いい方ね」
 このこともまた栗子の長所だというのだ。
「お父さん八条銀行大阪支店の支店長さんでね」
「お給料いいせいで」
「しかも許嫁もいるし」
「京都店の支店長さんの息子さんがね」
 その許嫁だというのだ。
「お父さん同士が八条大学からの同期で仲良くて」
「彼氏もいてね」
「まさにリア充」
「爆発しろって感じで」
 何気に嫉妬も入れて説明が為されているが顔も目も笑っているのでその嫉妬は強いものでないことがわかる。
 しかしだ、後輩達は栗子の充実した私生活と人間性のことを聞いて余計に思ったのだった。
「じゃあ裏の顔って何だろ」
「そうよね、委員長さんの裏の顔って」
「リア充そのものなのに」
「背とか胸とかじゃないの?」 
 一年の女子の一人がこう推察した。
「ひょっとして」
「ああ、委員長小柄だしな」
「一四二センチだったわね、確か」
「胸もないし」
「そういうところにコンプレックスあって」
「それ言うと切れるとか」
 一年達はこう考えた、しかし三年生達はこのことも否定した。
「あっ、違うから」
「あの娘背とか胸のことは気にしてないから」
「許嫁の彼が小柄で貧乳派だっていうから」
「気にしてないのよ」
「ちなみに彼氏八条大学の二年生よ」
「経済学部の人よ」
 許嫁の個人情報までわかっていた。
「そういうことで背とか胸じゃないの」
「問題はね」
「じゃあ何ですか?」
 先程の男子の一年がまた手を挙げて先輩達に尋ねた。
「委員長の裏の顔って」
「そうです、余計にわからなくなりました」
「背でも胸でもないって」
「じゃあ何ですか?」
「何が裏の顔なんですか」
 他の一年達も言う、しかし。
 ここでだ、三年達は言ったのだった。
「あの娘の髪の毛よく見てね」
「髪型、前髪の生えているところね」
「そこね」
「それでわかる?」
「あっ」
 ここで一年生達はわかった、栗子の裏の顔を。 
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