空の勇者
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第一章
空の勇者
その話をはじめて聞いた時にだ、ドイツの若きパイロットである彼は思わずこんな言葉を出してしまった。
「若しその様な人物がドイツ軍にいるのなら」
「それならだね」
「私は是非彼に会いたい」
話してくれた者に言った。
「是非共な」
「そう言うか」
「理想的な軍人だ」
まさにそうした者だというのだ。
「これ以上はないまでに」
「精悍で騎士道精神に満ちていて」
「最高の人物ではないか」
こうも言うのだった。
「本当にな」
「だからか」
「私は彼に会いたい」
またこう言ったのだった。
「出来ることなら」
「君はパイロットだからな」
話した者はここで彼にこのことを話した。
「だからな」
「それでなのか」
「会えるかも知れない」
実際にというのだ。
「彼にな」
「ならこう言っておこう」
毅然とした声でだった、男は話してくれた相手に話した。
「彼と会えたなら私はそのことを人生最大の喜びにしようと」
「死んでもか」
「戦場で死のうが他の場所で死のうともだ」
例えどういった人生を歩もうともというのだ。
「私は彼と出会えたならばだ」
「そのことを人生最大の喜びとしてか」
「そのうえで生きていこう」
「そうしていくつもりか」
「私はな」
こう言ってだ、彼は何時しかエースとなり武勲だけでなく名声をも挙げていった。
その中でだ、彼はその英雄の名をさらによく聞く様になっていた。
「やはり彼がか」
「そうだな、我が軍だけでなくな」
「枢軸国の間でも一番だろう」
「敵の方にもいないかも知れない」
連合国の方にもとだ、戦友達は彼に夕食の時に話した。
「本当にな」
「彼程のエースはいない」
「まさに生きた伝説だ」
「空の騎士だ」
「騎士の中の騎士だ」
彼等は口々に言った、その話を聞いて彼はこれまで抱いていて今はさらに強くなっているその想いを戦友達に話した。
「では私はその英雄に会いたい」
「彼にか」
「そうしたいか」
「是非共か」
「そうだ、是非共だ」
まさにとだ、彼は戦友達に答えた。
「そうしたい」
「そうか、しかしな」
「今我が軍は広い戦線で戦っているんだ」
「同じ西部戦線にいてもな」
この戦争ではドイツは東西で戦っていた、東部戦線はロシア軍との戦線で西部戦線はフランス軍やイギリス軍との戦線だ。彼等は西部戦線にいるのだ。塹壕戦が続いており空での戦いも激しいものになっていた。
「戦線は南北に長くなっていてな」
「そこに彼もいるが」
「戦場はこれまでの戦争とは比較にならない位に広い」
「それでどうして彼に合えるか」
「きっかけがないと難しいんじゃないか」
「そうか、しかしな」
それでもとだ、彼は戦友達に話した。
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