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滅びることのない絆

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第一章

                滅びることのない絆
 最初にヘインを見てだ、その戦場に来た若い薔女達はまずはこう思った。
「あの人怖そうよね」
「黒薔薇の薔女らしいけれど」
「きつそうね」
「すぐ怒りそう」
「それで残酷そうね」
「凄く冷たそうだし」
 ヘインの薔女の美貌を見せているが冷たく厳しく険しそうな外見を見て思った、そしてすぐにだった。
 彼女達はヘインに近寄ることをしなかった、そうしてヘインの噂を聞いて彼女達の間でひそひそと話をした。
「降伏した敵を皆殺しにしたのよね」
「敵は子供でも殺すそうだし」
「平気で一般市民も攻撃するっていうし」
「スパイの拷問もするんでしょ」
「元暗殺者だっていうし」
「怖いわよね」
 その噂を殆ど真実と思い話をするのだった。
「味方にも何するか」
「そうした人敵に対してだけじゃないっていうし」
「味方の私達でもね」
「何かあったら」
「どうされるか」
 こう考えてだ、余計にヘインに近寄ろうとしなくなった。敬礼はしても彼女達から話をすることはしなかった。
 だが部隊の指揮官である白薔女である大佐がだ、こう言った。
「ヘイン少佐とお話していないわね」
「あの、それは」
「ちょっと」
「見てわかるわ」
 大佐は若い薔女達が戸惑いを見せたが先に言った。
「そのことはね」
「あの、ですが」
「何ていいますか」
「少佐の噂聞きますと」
「最初見ただけでも」
「怖いっていうのね、けれどね」
 大佐は本音を見せた若い薔女達に確かな声で返した。
「噂は噂、実はね」
「実は?」
「実はっていいますと」
「少佐は捕虜や一般市民を攻撃したりはしないわ」
 噂はあくまで噂に過ぎないというのだ。
「敵兵に子供はいないし拷問もしないわ」
「本当ですか?」
「そうなんですか?」
「実は」
「そうよ、元暗殺者でもないし」
 全ての噂が実は真実ではないというのだ。
「そこはわかっていてね」
「そうですか」
「全部噂だったんですか」
「そうだったんですか」
「そう、そして実際はどうした人かは」
 このことはというのだ。
「戦場に出ればわかるわ」
「その時にですか」
「少佐が本当はどうした人かわかりますか」
「一体どんな人か」
「貴女達もわかるわ」
 このことを言うのだった、若薔女達は大佐の言葉からヘインの噂は全て噂に過ぎないものであるとわかった、だが。
 怖い雰囲気はそのままでだ、やはり彼女には近寄らなかった。だがその中で彼女達がいる部隊は薔女狩りの者達との戦いの場に赴いた。
 その戦場は市街地で部隊は市街に立て籠もり戦闘を続けている薔女狩りの部隊に市街地独特の入り組んだ場所を使って戦われ苦戦していた、その中で。
 若い薔女達はあるビルに入っていた、だが。
 そのビルが囲まれていた、敵はビルを完全に囲んでいた。若い薔女達はビルの窓から自分達を囲む敵を見て言った。
「まずいわ、囲まれてるわ」
「それも完全にね」
「皆結構傷ついてるし」
「銃弾もグレネードも少ないし」
「花言葉を使おうにも気力も残り少ないし」
「今攻められたら」
「もう全滅するしかないわよ」
 そうした状況だというのだ。
「援軍来てくれないかしら」
「無理でしょ、正直」
「司令部には無線で連絡したけれど」
 今の自分達の状況をだ。 
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