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空に星が輝く様に

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442部分:第三十四話 夜空にあるものその六


第三十四話 夜空にあるものその六

「絶対に」
「だからなのね」
「そう、それはしない」
 また言う椎名だった。
「だからつきぴーは今は何も言わない」
「何も」
「そして動かない」
 それもだというのだった。
「何があっても」
「わかったわ。それじゃあ」
「そういうこと。しっかりとしていて」
「無視はしないのね」
「無視するんじゃなくてあえてそっとする」
「そうするの」
「そう、そっとする」
 椎名は教室の端で静かにしている四人、とりわけ星華を見て話す。月美も彼女達をちらりと見ている。気付かれないように注意しながらだ。
「今お互い何かしてもよくないことになるだけだから」
「どうすればいいの、それじゃあ」
「時間」
 出した言葉はこれだった。
「時間が解決してくれること」
「時間がなの」
「そう。時間は少しずつだけれどどんなものでも癒してくれる」
 それが時間だというのである。
「だから。今は癒される」
「時間に」
「つきぴーだけじゃなくてあの娘も」
「佐藤さんも」
「そう。癒されるべき」
 また月美に対して話した。
「そうするべき」
「うん、それじゃあ」
「つきぴーはつきぴーの道を見つけたから」
「陽太郎君と」
「それを二人でしっかりと歩く。そうして」
 願いの言葉だった。他ならぬ月美に対して。
「そうして欲しいから」
「わかったわ。それじゃあ」
 月美は椎名のその言葉に頷いた。そうしてであった。
 今は彼女は動かなかった。そのうえで陽太郎のことを考えるだけであった。だが椎名はその星華を見続けていた。彼女に気付かれないようにして。
 星華はこの日久し振りに部活に出た。部活では彼女自身が思っていたよりもよく動けた。その部活の後でだ。誘ってくれた先輩にこう言われたのだ。
「久し振りだけれどね」
「はい、動き悪かったですよね」
「いえ、思ったよりよかったわ」
 にこやかに笑ってだ。こう彼女に言うのだった。 
 今は部活の帰り道だ。すっかり暗くなった駅までの道を二人で横に並んで歩きながらだ。そのうえで先輩のその話を聞いているのだった。
 先輩は背が高い。星華よりも五センチは高い。身体つきはすらりとしていてとりわけ足が長い。その長身の上にある顔は童顔でショートヘアである。
 その先輩がだ。明るく彼女に話すのだった。
「ずっと休んでたから大丈夫かしらって思ったけれど」
「すいません、それは」
「身体悪かったらしいわね」
 先輩はこう聞いているのだった。
「かなり酷い風邪だったそうね」
「それは」
「けれど治って何よりだったわ」
 風邪と思ったままでだ。先輩は話すのだった。
「本当にね」
「治ってですか」
「ええ。この調子ならレギュラーにもなれるわ」
「レギュラー。私が」
「本調子に戻ったらね」
 その前提があるにしてもだ。なれるというのであった。
 
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