繰リ返ス世界デ最高ノ結末ヲ
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06.そうだ、刑務所に逝こう。
第5回
あの後、残った人形達は葉月によって一掃された。
そして、琴葉はフランの元に運ばれた。
「いやぁ、真逆君が此処まで怪我をするとは………治療するから、上脱いで」
「目からお願いしてもイイですか」
「嗚呼、良いよ。服脱げないもんね」
フランは、琴葉の対面に座り、ガーゼや消毒液が入った救急箱を、自分の横に引き寄せた机の上に置く。
「治療と言っても、普通に消毒して、包帯グルグル巻きにするより、私が血を飲んじゃった方が早いけど、如何する?」フランは部屋の鍵を閉め、カーテンも閉める。部屋がグッと暗くなる。
「良いですよ。血を吸ってくれても。消毒液嫌いなので」
「妙に積極的だね?」
「言ったじゃないですか。消毒液が嫌いなんです」
フランは、斬擊を喰らって、血が流れている琴葉の右眼に顔を近付ける。そして、血が出ている部分を舌でなぞって行く。
「……っ!」急に躰をビクリと震わせる琴葉。
「………如何為たんだい? 此れだけで感じちゃった?」フランは一度顔を離し、ニヤニヤしながら琴葉を見る。「そんなんじゃ、拷問を受ける事になったら、直ぐに情報を吐いてしまいそうだ」
「違います! ただ、ちょっと擽ったかっただけです。それに、どれだけ酷い事を為れても、情報は漏らしません」琴葉は、フランに言い返す。
「まぁ、眼はもう大丈夫だよ。一応、包帯は巻いておこうね」
そして、フランは慣れた手つきで、琴葉の頭に包帯を巻いていく。壊れ物を扱う様に、優しく琴葉に触れる。
「………はい、完了! じゃあ、次はパッと見ただけでも分かる、本当にヤバそうなヤツね」
「本当に脱がないと駄目ですか」
「脱がないと、治療が出来ないじゃ無いか」
琴葉は、渋々ベストのボタンを外し、攻撃を喰らった方の腕を遣わずに、切れたベストを脱ぐ。片手でボタンを外している為、少し遅いが、フランは催促をしたりせず、黙って居る。
傷口から広がった血は、カッターシャツをほんのりと赤く染めている。切れた隙間からは、かなり深い傷が確認出来る。琴葉は、それも脱ぐ。
「……綺麗だね」
「フランさん………?」
「矢張り、白には赤が映える」
「はぁ」
上半身は下着だけの状態なった琴葉を見て、フランは頬をほんのりと赤く染める。琴葉もつられて顔を赤くする。
「……恥ずかしいし、痛いんで、早くして下さい」今直ぐにでも服を着たくて、服をぎゅっと握り締め、琴葉は俯く。
「分かったよ……ん」フランは琴葉の肩を優しく掴み、傷口を舐める。最初は目を閉じていたが、偶に目を薄らと開け、上目遣いで琴葉を見る。眼の傷と違い、此方の傷からは血が止まらない。そろそろ輸血が必要なのでは、と疑いたくなってくる程だ。
すると突然、琴葉はフランを片手で、軽く抱きしめる。
「……琴葉?」意外な仕草に、フランは顔を離して、琴葉の顔を覗き込む。その顔は林檎の様に真っ赤に染まっていた。
「いやっ、あの……大した意味は無いんですけど……」慌てて琴葉は言葉を作る。「……何か、子供みたいで可愛くて、ですね……つい」
「『君に酔っちゃった』って言えば良い?」フランがふわりとした笑みを作る。「頭がくらくらして、でも気持ちが良いんだ。琴葉は? 気持ち良い? ちゃんと、私の事を感じてくれてる?」
「……質問の意味が分からないんですけど。……でも、正直に言うと、擽ったくて気持ち良いです」
「良い子。血が止まるまでと言わず、その後もやってあげる」
暫くすると、傷口からの血は止まった。フランは器用に包帯を巻いていく。
「で、何処から血を吸って貰いたい?」包帯を巻き終わったフランは、不敵な笑みを浮かべ、問う。
「ああは言ったんですけど、もう貧血なんですけど……」が、既に琴葉は青白い顔をしていて、調子が優れない様子だった。「また明日も動かないとですし……明日にして頂けますか」
「駄目。絶対気が変わっちゃうでしょ。………じゃあ、いただきまぁす」
「えっ!? ……っ、あ」
琴葉の、傷がある方とは反対側の鎖骨に牙を立てるフラン。其処から、血を吸っていく。
「はっ……琴葉、もっと力抜いて。最高に気持ち良くしてあげる」
「……い"っ」
「………ねぇ、琴葉。私の血をあげる。……大丈夫、痛くないよ。力を抜いて。……怖い? じゃあ、手を握ろう」
血を吸う。血を吸われる。
血を入れる。血を入れられる。
それを、両者共に〝快感〟と感じるのだ。
「……ホラ、痛くないでしょ? 怖くもない」
「フランさん……そろそろ終わりに、しないと………誰か来ちゃう」
「大丈夫。ドアに鍵は掛かっているし、誰かに見られたって問題は無いよ」
「問題……しか、ありませんよ……!」
そして、次の瞬間。
「オイ琴葉ぁぁああああ!! 大丈夫かぁあああ!!」
「姐さぁぁあああん!! 大丈夫ですか、生きてますかぁあああああ!!」
「「……って、うぁぁぁああああああああ!!」」
鍵が掛かっていたはずのドアが開き、葉月と紗耶香が乗り込んで来て、絶叫する。
「な、何やってるんだよ、フラン!!」
「此れはお取込み中だとしても引き下がれないんですけどぉおおおお!?」
「ねぇ、如何して良いところで毎回邪魔するのさ? 漸く体が温まって来たって所だったのに……」
「そろそろ死んで良いですか?」
如何やら、フランの計画が最後まで実行される事は無いらしい。
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