虹にのらなかった男
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
P8
「RX-VF-1 アブルホール一号機
アベル・ルセーブル出る!」
『あーるえっくすぶいえふわんせかんど。
ロザミア・バダ…ルセーブル でます!』
ペダルを踏み込み、アブルホールを発艦させる。
Gを感じ、視界が真っ暗になる。
星の世界だ。
横を見るとローザの二号機も発艦したようだ。
「ローザ。Gキツくないか?」
『まだ大丈夫だよお兄ちゃん』
「ならいい。直にホワイトベースとは連絡が付かなくなる。
短距離レーザー通信を途切れさせるなよ」
『らじゃー!』
後続のガンキャノンとガンタンクも発艦したようだ。
ガンタンクはそのまま底部スラスターで軟着陸したのだが…
ダンッダァンッ! ズゴシャァッ!
真空中なのにそんな音が聞こえそうなくらいの勢いでガンキャノンがずっこけた。
「カイ君。ここがルナ《ツー》で良かったな。
月だったら大破炎上だぞ。
あと俺達技術士官の仕事を増やすな」
『す、すいましぇぇぇん…』
ガンキャノンが立ち上がり歩行を始める。
「ローザ。ガンキャノンとガンタンクに歩調を合わせる。変形だ」
『ん!』
コンソールのスイッチを切り替え、MS形態に変形する。
ホバーを最低出力で起動し、ふわりとルナツーの地表に降り立つ。
カイ達が発艦するのを待ち、アブルホールを歩かせる。
時折ジャンプも交えつつ、パプアとムサイのランデブーポイントへ向かう。
「はぁ…結局アニメ版か…」
とまぁ、御察しの通りルナツー攻防戦である。
大筋はアニメと変わらなかったが、一つ面白かったのはガンダムの出撃を反対したのがテムさんを始めとする技術士官連中ということだ。
意外にもアムロはやる気だった。
おかしい。原作では反対だったのに。
ま、原作より戦力は多いし大丈夫でしょ。
アブルホール二機あれば結構違う。
なおローザのアブルホールのテールユニットはビールキャノンを、俺のはミサイルランチャーを装備している。
この後の事を考えている合間に、目標のクレーターまでの距離が縮まっていた。
「WB、クレーター視認まであと僅か。
傍受されないためレーザー通信を切る。
よろしいかノア少尉?」
『了解しました。ルセーブル中尉。
御武運を』
WBとのレーザー回線を切る。
「各機。作戦通りだ行くぞ」
『リュウ・ホセイ了解』
『はっハヤト・コバヤシ了解』
『カイ・シデン了解よっと』
『ん。お兄ちゃん』
やがて、クレーターに到達した。
パプアとムサイがベルトコンベアで物資の受け渡し中。
ムサイのエンジンはユニット式らしく、新しい物と交換したようで無傷だ。
アブルホール二号機はここに残す。
ローザにはこの場所で砲台になってもらう。
無論事前に何かあれば逃げるよう言い含めてある。
「よし…これでハヤトが撃てば作戦開始だ…」
直ぐにパプアから火が上がった。
作戦開始だ。
アブルホールを飛び立たせる。
クレーター内部はガンキャノンガンタンクの実弾砲撃とアブルホールのビームで地獄絵図だ。
特にパプアは上面が広いため当たりやすい。
「クレーター内で作業するのは間違いだったようだぞシャア。
戦いを読み間違えたようだな」
アブルホールを急上昇させる。
下からメガ粒子砲が飛んで来ないのを見るにムサイのエンジンはまだ入ってないか入れたばかりだろう。
十分な高度を確保。
スイッチを切り替え、変形。
脚を前に向け減速。
「ぐぁっ!? 」
Gで内臓が押し潰されそうになるのに耐え、機体を反転。機首を下…パプアへ。
「行くぜ行くぜ行くぜ行くぜぇ!」
脚部を収納。
スラスターを吹かしてパプアへ急降下。
どんどんパプアが大きくなる。
コンソールを弄り、テールユニット下部のハッチを開き、中身をユニット外にアームで固定。
「ファイア」
トリガーを引き、アームを解放。
直ぐ様MS形態に変形し、スラスターを下に向ける。
急制動で下方へのGに押し潰されそうだ。
パプアの上面すれすれで垂直方向のベクトルがゼロに。
パプアの艦体を蹴り、勢いを着けて離脱する。
十分に距離を取り、後方の様子をモニターで確認する。
大破炎上。もしくは轟沈寸前。
そんな言葉の似合いそうな状況だ。
なお先程切り離したのはバンカークラスター。
バンカーバスターの散弾版のような兵器だ。
ミサイルランチャーユニットは上下で違う物を入れられる。
なお、上方のミサイルは一切使っていない。
そうこうしている間にムサイが浮上を開始した。
爆炎の中を逃げるように上昇する。
「よーし。沈むとは思わんが取り敢えず食らっとけや」
ウェポンコンテナ上部ハッチ全面解放。
「たらふく食いな。全部連邦の奢りだぜ」
トリガーをカチッと鳴らす。
ドシュドシュドシュドシュドシュドシュ…!
12×2門のミサイルランチャーのフルバースト。
中破くらいするだろう。
シャアの事だ。どのみち地球には降りるだろうが、ここでムサイが傷つけば大気圏突入間近での戦闘は仕掛けまい。
だが、その期待は裏切られた。
迎撃されたのだ。
ムサイからではない。
横合いから放たれたメガ粒子砲やミサイル、機銃など。
ジオンの増援でもない。
ムサイより明るい緑。
無重力下に居るにも関わらず水上艦のようなシルエット。
「マゼラン…っ!」
ルナツー防備隊の艦だった。
後書き
ガンダムに登場する小物達の気持ちがわかるようになって自分の成長を実感した今日この日。
ページ上へ戻る