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空に星が輝く様に

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426部分:第三十二話 誠意その九


第三十二話 誠意その九

「伊豆の踊り子を」
「ああ、あれね」
「けれど雪国はまだなんですよ」
「そうなんだ。じゃあどういう作品かは知らないんだ」
「ちょっと」
 首を傾げさせてそのうえで述べたのだった。
「大体のあらすじは知ってますけれど」
「それでどんな話なのかな」
「それはですね」
 それについて話そうとする。しかしだった。
 ここでだ。二人のところに椎名が来てだ。こう二人に声をかけてきた。
「いい?」
「あれ、椎名」
「どうしたの?」
「二人に会いたいって人がいる」
 いつもの調子で二人に告げてくる。
「いいかな」
「んっ、誰なんだ?」
「誰なのそれって」
「会う?それで」
 あらためて二人に問うのだった。
「どうするの、一体」
「誰かよくわからないけれど」
「どうしてもっていうの?その人」
「そう、どうしても」
 ここでは言葉を少し強くさせてであった。
「どうしてもなの」
「そうなの。どうしてか」
「陽太郎君、それじゃあ」
「うん、そうだよな」
「そうしよう」
 二人で話してだった。それで椎名に顔を戻して話すのだった。
「じゃあさ」
「その人と」
「うん。じゃあ」
 こうしてだった。二人は椎名に顔を戻してそのうえで答えた。
「誰かわからないけれど」
「どうしてもっていうのなら」
「私も立ち会うから」
 椎名はこうも言い加えた。
「それで」
「それで?」
「どうしたの?一体」
「会うと決めたからには」
 どうかというのだった。椎名のその口調が念を押すものになった。
「絶対に会って」
「?何でなんだ?」
「それって」
「絶対に会って逃げないでね」
「誰なんだよ、それで」
「その人って」
「二人が知ってる人」
 それは確かだというのであった。
「けれど絶対に逃げないで」
「何かよくわからないけれどな」
「愛ちゃんが一緒なら」
 二人もそれで納得した。それでだった。
 そのうえでだ。陽太郎と月美は椎名に案内されてだ。ある場所に来た。そこは道場の裏手だった。そこに案内されたのである。
 そしてそこに来ると。彼女がいた。
「・・・・・・佐藤」
「どうしてここに」
「学校に来たの」
 椎名の二人への説明はこれだけだった。
「それでなの」
「それに。何だよ、星子ちゃんまでいるじゃないか」
「州脇さん達も」
「そう、この人達が」
 椎名の言葉はさらに続く。
「二人に会いたいの」
「おい、俺言ったよな」
 陽太郎は顔を顰めさせて椎名に言った。
「確かに」
「絶交ね」
「あ、ああ」
 陽太郎は椎名の今の言葉に頷いて返した。
「だから」
「本気?」
「本気って?」
「だから。その言葉は本気?」
 椎名はこう陽太郎に問う。
 
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