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英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇

作者:sorano
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外伝~”空の女神”エイドスの末裔、エステル・ファラ・サウリン・ブライト~

~同時刻・クロスベル帝国オルディス地方・西ランドック峡谷道~



ヴァイス達の戦いが始まったその頃、かつてエレボニア帝国の領土であったが、”七日戦役”によってクロスベルの領土となったユーディット達の故郷――――”海都オルディス”から、エレボニア帝国の領土であり、山中にある町でありながらカジノといったギャンブルなどの施設が充実している”歓楽都市ラクウェル”へと続く西ランドック峡谷道をミリアムとクレア少佐はクロスベル帝国の領土で諜報活動を行っていた20数人の鉄道建部隊や情報局に所属している軍人達と共に、峡谷道の途中にある国境でもある関所を目指していた。

「……何とか追手は撒いたようだね~。」

「ええ……ですが、峡谷道に伏兵を潜ませている可能性も考えられますから、油断せず関所を目指しましょう。」

背後を見て誰も追っていない事を確認したミリアムの言葉にクレア少佐は静かな表情で頷いて軍人達を促した。

「イエス・マム。」

「しかしクロスベルの連中、まさか我々を”結社の残党”扱いするという強引な手段を取って、我々の一斉検挙をしてくるなんて……!」

「我等が主も失った薄汚い裏組織の残党だなんて、どう考えても冤罪だろう!クソッ!」

軍人達はそれぞれクロスベルに対する悪態をついていた。



「―――ま、冤罪はともかく、結社みたいに裏でコソコソ動いて悪い事をしようとしている事に関しては結社と同類だと思うわよ。」

「!!」

「やっぱ、簡単に国境を超えさせてはもらえないみたいだね~。」

するとその時娘の声が聞こえ、声を聞いたクレア少佐が軍人達と共に周囲を警戒している中ミリアムは疲れた表情で呟いてすぐに表情を引き締めて周囲を警戒していた。すると街道から外れた場所へと続く道から栗色の髪の娘、漆黒の髪の青年、蜂蜜色のような金髪の娘、そして黄金のような輝きの金髪の女性が現れてクレア少佐達と対峙した!

「き、貴様らは――――!」

「最上級警戒対象者――――”剣聖”カシウス・ブライトの娘にして”空の女神エイドス”の末裔でもある史上初”SSランク”正遊撃士”遊撃士の中の遊撃士(ブレイサーオブブレイサー)”エステル・ファラ・サウリン・ブライトにその娘、Sランク正遊撃士”黄金の百合”ミント・ルーハンス・ブライト!」

「しかもAランク正遊撃士”漆黒の牙”ヨシュア・ブライトと”黄金の女帝”フェミリンスまで!」

栗色の娘達の登場に血相を変えた軍人達はそれぞれ厳しい表情で娘達を睨んだ。



「……どうやら自己紹介の必要はなさそうですわね。」

「アハハ、ミント達、以前のエレボニアでの活動でエレボニアでも有名になったもんね~。」

「それも悪い意味でね………」

「ちょっと、ヨシュア。何でそこであたしを見るのよ?―――って、そんな事より今はこいつらね。―――――あんた達には言わなくても知っているでしょうけど、あたし達は遊撃士協会よ!大人しく投降しなさい!」

金髪の女性――――遥か昔の異世界ディル=リフィーナのレスペレント地方全土を納めていた女帝にして女神―――”姫神”フェミリンスは静かな表情で呟き、金髪の娘――――セレーネと同じ”パートナードラゴン”という竜族の娘にしてメンフィル帝国から”伯爵”の爵位を授けられたゼムリア大陸全土で数名しか存在しないS級正遊撃士”黄金の百合”ミント・ルーハンス・ブライトは苦笑し、漆黒の髪の青年――――かつて結社”身喰らう蛇”の執行者の一人であったA級正遊撃士”漆黒の牙”ヨシュア・ブライトは呆れた表情で栗色の娘を見つめ、見つめられた栗色の娘―――――”百日戦役”で活躍したリベール王国の英雄―――”剣聖”カシウス・ブライトの娘にしてミント同じくメンフィル帝国から”侯爵”と”ロード”の爵位と称号を授けられたゼムリア大陸史上初のSSランク正遊撃士――――”ブレイサーオブブレイサー”エステル・ファラ・サウリン・ブライトはジト目で反論した後クレア少佐達を睨んで投降を促し

「国際犯罪組織”身喰らう蛇”の残党の疑いがかけられた貴方達には他にもクロスベル帝国で犯した様々な容疑があり、クロスベル帝国政府は貴方達の逮捕の協力を僕達遊撃士協会にも依頼し、遊撃士協会は規約に従い、依頼を請けました。」

「大人しく投降するのならばそれでよし―――――拒否するのならば、”強制執行”をさせてもらいますわ。」

「クロスベル帝国に引き渡しても、罪を許されてクロスベル帝国から解放されるまでの貴方達の身柄の保証は遊撃士協会がするよ!だから、大人しく投降して!」

ヨシュア、フェミリンス、ミントもエステルに続くようにクレア少佐達に説明や投降を促した。



「ふ、ふざけるな!”我等の所属”を知っていながら、我等を”結社の残党”扱いする等全て貴様らクロスベルと遊撃士協会の(はかりごと)だろうが!」

「しかもよりにもよってカシウス・ブライトの関係者達とハーメルの遺児が我等を阻むとは……!」

「まさか我等を阻んだ理由の一つは貴様らのエレボニア帝国入りを拒否した件に対する”報復”か……!」

エステル達の宣言に対して軍人達は怒り心頭の様子で反論し

「そんな訳ないでしょう?あたし達のエレボニア帝国入りを拒否した件に関してはあんた達には色々と言いたい事はあるけど、それと今回の件は別問題よ。」

「皆さん、落ち着いてください!――――お初にお目にかかります、ファラ・サウリン卿。私はクレア・リーヴェルト少佐。エレボニア帝国軍鉄道憲兵隊に所属しています。彼らが結社”身喰らう蛇”の残党でない事は私が保証しますので、道を開けて頂けないでしょうか?」

「それにボク達とやりあったら、ギリアスのオジサンがただでさえエレボニアでの活動が制限されているサラやフィー達が更に活動しにくくしたり、もしくはサラ達に対する”仕返し”をするかもしれないよ~?」

軍人達の反論に対してエステルはジト目で答え、クレア少佐は軍人達を諫めた後エステル達に会釈をして説明し、ミリアムは真剣な表情でエステル達に忠告した。



「あ、サラさん達に関しては心配無用だから。今回の件の成功の有無に関係なく、ヴァイスさん達があんた達の件でのエレボニア帝国政府との交渉の時に、エレボニア帝国政府がこれ以上エレボニア帝国で活動しているサラさん達に手を出さないようにするって約束だし。」

「それにクレア少佐は彼らの身分の保証をすると仰っていますが………そうなると、別の容疑が貴女達にかかる事がおわかりにならないのですか?」

「クロスベルに許可も無く”他国の軍人”が入国したら、最低でも密入国や諜報活動に関する容疑が発生するよ!」

「―――どの道貴女達がこの場を言い逃れできる理由は存在しませんわ。」

ミリアムの忠告に対してエステルは全く動じずに答え、ヨシュアとミントはそれぞれ説明し、静かな表情で呟いたフェミリンスが自身の武装である神槍を構えるとエステル達も続くようにそれぞれの武装である棍、双剣、長剣を構えた!



「”今回の件の成功の有無に関係なく”………――――!彼らの拘束が成功しても失敗しても、クロスベルがクロスベルに潜入させていた彼らを”結社の残党”扱いする事で、エレボニア帝国政府の弱味を握り、彼らの拘束に成功すれば拘束された彼らの身柄の返還を、失敗すれば1年半前の”七日戦役”の件でただでさえ各国からの信用が地に堕ちているエレボニアが、結社の残党を匿っているという疑いを各国に知らしめることを盾に、エレボニア帝国政府に対して有利な交渉をするつもりですか……!」

「なるほどね~。実際、クロスベルで”情報局”や”鉄道憲兵隊”が諜報活動を行っている間に”三帝国交流会”の最中に結社の残党がクロスベルで事件を起こしたせいで、状況を考えれば何も知らない人達はクロスベルに諜報活動を行っていた人達も結社の残党と関係しているって思うだろうしね~。」

エステル達の話を聞いてすぐにクロスベルの狙いを悟ったクレア少佐は厳しい表情で推測を口にし、ミリアムは疲れた表情で溜息を吐いた。

「なっ!?という事はまさか”六銃士”は最初から我等を嵌める為に、”三帝国交流会”が開催されるまであえて我等を泳がしていたのか……!」

「もしそれが本当ならば、貴様ら遊撃士協会やクロスベルの方が結社の残党と裏で繋がり、奴等の襲撃を奴等から予め知らされていたのではないのか!?」

クレア少佐とミリアムの推測を聞いた軍人達は驚いたり怒りの表情でエステル達を睨んだ。



「いや、あたし達が結社と繋がっているって無理があるでしょ……」

「――――第一それを言ったら、まず最初に疑われるのは4年前の結社による”リベールの異変”の際、”導力停止現象”が起こっている最中に、まるで見計らったかのように導力を必要としない蒸気機関による戦車で浮遊都市(リベル=アーク)の破壊を名目にリベールに押し入ろうとしていた貴方達エレボニアの方だと思われるのですが?」

軍人達の指摘に対してエステルが呆れている中ヨシュアは真剣な表情で軍人達に指摘し返した。

「ぐ……っ……!」

「おのれ、”ハーメル”の亡霊が……!”七日戦役”での”和解条約”に飽き足らず、未だ我等を苦しめるとは、かつてはエレボニアの民だった癖に、祖国であるエレボニアに対する復讐を止めないとは、何様のつもりだ!?」

「パパは亡霊なんかじゃないし、エレボニアに対して酷い事をしようとする人じゃないよ!」

「そもそもハーメルの民達に復讐されてもおかしくない理由を最初に作ったのは貴方達エレボニアなのですから、むしろ貴方達がハーメルの民達に”エレボニアは何様のつもりだ”と問いかけられる側ですわよ。」

ヨシュアの正論に反論できない軍人達が唸り声を上げ、ヨシュアを睨んでいる中軍人の一人が叫んだヨシュアに対する怨嗟の言葉に対してミントが反論し、フェミリンスは厳しい表情で指摘した。



「二人ともありがとう。レーヴェは知りませんが、少なくても僕は14年前のハーメルで起こった悲劇が世界中に公表された時点で満足していますし、元々エレボニアに対する復讐心等はありません。―――――まあエレボニアが”空の女神(エイドス)”に命じられたハーメルに対する”償い”をかつてのハーメルのように”無かった事にしようとしている事”については色々と言いたい事や聞きたい事はありますが………少なくてもそれを決めたのは貴方達でないのは理解していますから、その件で貴方達を責めるつもりはありません。」

「ヨシュア…………――――で、話を戻すけど大人しく投降するのかしら!?」

静かな表情で自身の本音を語ったヨシュアの話を聞いて辛そうな表情をしたエステルだったがすぐに気を取り直してクレア少佐達を睨んだ。

「どうするの、クレア~?”ブレイサーオブブレイサー”達の話だと例え撤退に成功できても、結局ボク達の”負け”っぽいよ~?」

「……少なくても、撤退が成功すればまだ言い訳ができますし、こちらの損害は最小限にすみます。……合流が間に合わず、既に拘束されてしまった者達もいますが、それでも拘束された者達の返還の交渉をする際、拘束された者達は一人でも少ない方がいいですから、強行突破をするしかありません。――――時間をかければ、クロスベル帝国軍や軍警察も追いついてしまいます!一人に対して必ず複数であたり、隙を突いて撤退しなさい!」

ミリアムに判断を促されたクレア少佐はエステル達と戦う事を決めて軍人達に指示をし

「イエス・マム!」

「宰相閣下に行動が制限されもなお、活動を続ける鬱陶しい遊撃士如きが……!我等の力、思い知らせてやる!」

「幾ら腕利きだろうが、たった4人で少佐を加えた我等を制圧できると思ったその傲慢、すぐに後悔させてやる!」

「ちょっ、それって”フラグ”になるから言わないでよ~!」

クレア少佐の指示に答えた軍人達の中の一人が呟いた言葉を聞いて1年半前の”七日戦役”時、リィン達と戦った出来事を思い返したミリアムが慌てた様子で軍人に指摘したその時

「ふ~ん……別にあんた達”程度”、パズモ達の協力がなくても全員ブッ飛ばせるけどそこまで言うんだったら、お望み通り呼んであげるわよ!――――おいで、パズモ、永恒、テトリ、ニル、クーちゃん、カファルー!!」

自分達を侮っているような事を口にした軍人をジト目で睨んだエステルは自身が”絆”を結んだ頼もしき異種族達の名を呼んだ!すると風の最上位精霊―――”ルファニー”族のパズモ・メネシス、炎のような真っ赤な鬣を持ち、8本の尾がある狐炎獣―――サエラブ、木の妖精(ユイチリ)族の最上位妖精―――”ニルユイチリ”族のテトリ、”第四位”を冠する天使―――”主天使(ドミニオン)”のニル・デュナミス、銀色に輝く鱗を持つ水竜の上位種である”白水竜”―――クー、炎を纏いし巨大な獣にしてエヴリーヌと同じ”深凌の契魔”の一柱―――”魔神”カファルーが次々とエステル達の傍に姿を現した!



「フフッ、フルメンバーで戦うのは久しぶりね!」

(フッ、全員揃って戦うのは碧の大樹での決戦以来になるな。)

「アハハ……でも普通に考えたら、私達全員が出なければならない程の戦闘は起こらないほうがいいんですけどね……」

「そうね。――――さてと。諜報関係者である貴方達の事だから当然私達の事も知っているでしょうけど……ちょうどいい機会だからその身に刻んであげるわ―――――ゼムリアの新たなる時代の”英雄”の一人にして、双界の”絆”の紡ぎ手たるエステルの守護者である私達の”力”を!」

「ク―♪」

「グオオオオオオオオ――――ッ!」

パズモとサエラブの言葉を聞いて苦笑しているテトリの意見に頷いたニルは自身の武装である接剣をクレア少佐達に突き付け、ニルの宣言に答えるかのようにクーは見た目とは裏腹の可愛らしい鳴き声で、カファルーは猛々しい咆哮を上げて答えた。



「なあああああああっ!?」

「や、奴等はまさか……!」

「”ブレイサーオブブレイサー”に従う6人の異種族達――――”六異将”……!」

「クッ……連中の情報も当然掴んでいたが、こうして実際に対峙するだけで連中の脅威度が我等の推定脅威度を大きく上回っている事だけはわかる……!」

「舐めるな!例え相手が竜や幻獣らしき大型の魔獣であろうと我等だけでも貴様ら程度の対処はできる!」

「あ~、もう……”ブレイサーオブブレイサー”にはリィンやプリネ皇女みたいにたくさんの異種族達が協力しているから、余計な事を言って敵を増やしてほしくなかったのに増えたじゃないか~!」

「……くっ………相手に絶対に連携させず、必ず各個撃破するように心がけてください!でなければ我々に勝利の芽はありません!」

パズモ達の登場に軍人達が驚いたり戦意を高めたりしている中ミリアムは疲れた表情で声を上げ、唇を噛みしめたクレア少佐は号令をかけ

「さ~てと……ようやく落ち着いた今の西ゼムリア大陸を乱そうとしている人達にその考えが間違っている事を身を持って教える為と、ついでにあたし達のエレボニア入りを拒否したお返しにお仕置きをしてあげるわ!一人残らずブッ飛ばすわよ、みんな!」

「おおっ!」

そしてエステルの号令に力強く頷いたヨシュア達はクレア少佐達との戦闘を開始した!


 
 

 
後書き
という訳でついにエステル達が登場しました!なお、今回のイベントBGMは空シリーズの”奪還”で、エステル達側の戦闘BGMは空シリーズの”The Fate Of The Fairies”だと思ってください♪ 
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