戦国異伝供書
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第五話 岐阜の城からその七
「やはりな」
「朝廷についてもですな」
「民にも武士にもそうであり」
「法定めておきますな」
「禁中そして公家の方々にも」
「そうじゃ、法をもうけておかんとどうにもならん」
これはこれで治まらないとおうのだ。
「先程民も武士もと言ったがな」
「天下の全てについて」
「法がなければなりませぬな」
「それは」
「そうじゃ、治める仕組みと法じゃ」
その双方があってこそだというのだ。
「天下は治まるのじゃ」
「だからですな」
「その双方を整える」
「そうしていきまするな」
「無論寺社にもな」
こちらにもというのだ。
「法を用意しておくぞ」
「まずは法ですな」
「天下は」
「それを定めまするか」
「天下を統一したならば」
「そうしていく、鎌倉の幕府も御成敗式目を定めた」
信長は源頼朝のこの幕府の名も出した。
「だからな」
「我等もですな」
「天下を定めれば」
「その時はですな」
「天下を治める仕組みと法も」
「どちらも定めますな」
「そうするのじゃ、今はその土台作りじゃ」
それを行っているというのだ。
「領国を無事に治めてな」
「それで天下統一の力をつけ」
「天下の権を当家一つに集め」
「そうしていくのですな」
「その通りじゃ、では皆の者これからも頼むぞ」
その天下統一の土台を固める政をとだ、信長は言って彼等に領国になっている国々の政を行わせた。
そしてその中でだ、彼は岐阜城で妻である帰蝶に言った。
「何かと忙しいわ」
「はい、天下の政にですね」
「うむ、あれやこれやとな」
妻に笑って言うのだった。
「やることがあってな」
「だからですね」
「何かと忙しい、戦はないが」
「むしろ今の方がお忙しい様に見受けますが」
「ははは、そうじゃな」
妻のその言葉を否定せずにだった、信長は笑って答えた。
「治める国が一気に増えたからな」
「はい、ほんの少し前まで尾張一国だったのが」
「二十国以上治めるまでになったわ」
「左様ですね」
「それで家臣達にもその二十以上の国を治めさせてな」
「その他のこともですね」
「何かとしておる、それでじゃ」
やることがあまりにも多くてというのだ。
「忙しいわ」
「左様ですね、しかし」
「うむ、それでもな」
「殿は楽しんでおられると見受けます」
「実際にそうじゃ、天下が治まり泰平に近付いていると思えばな」
「まことに楽しいですね」
「そうじゃ、まずは二十以上の国を治めそしてとりあえずの土台を築いてな」
検地を行ない地侍を取り込み天下の田を把握して織田家の年貢の基盤をより確かにしつつその力を高める等してというのだ、無論寺社も抑えることもこの中にある。
「そうしてじゃ」
「そのうえで、ですな」
「今固めた基盤からさらにな」
「天下統一を進めていきますね」
「幸い今本願寺とはことを構えておらず」
最大の懸念であるのはやはりこの寺だった、本願寺とのことは信長の念頭にあり続けていた。
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