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419部分:第三十二話 誠意その二


第三十二話 誠意その二

「その時にこそわかる」
「そしてその時に」
「碌でもない奴は碌でもないことをする」
「それでわかるのね」
「そう。有り得ない馬鹿なことをしても全く反省しない奴」
 ここではあくまで辛口の椎名であった。
「そういう奴はもう駄目」
「駄目なの」
「そこで自己弁護とかして責任を取らなかったり他人に責任転嫁とかしたら」
「絶対に駄目なのね」
「そういう奴とは付き合ったら駄目」
 実は椎名も極論だとわかっている。しかしあえて極論を言っているのだ。何故ならそれこそが事実だからであるからだ。
「それとは逆に」
「ここぞっていう時にしっかりとした対応をする人はなのね」
「その人はいい」
「やっぱりそうなのね」
「そう。そういう人と付き合うべし」
 そしてであった。ここでもこの名前を出したのだった。
「斉宮とか」
「陽太郎君が」
「斉宮はそうした時絶対に前に出てつきぴーを護ってくれたから」
「だからね」
「だからこそ」
「うん、わかったわ」
 月美は椎名の言葉に笑顔で頷いた。
「じゃあ私。そういう人の見極めとかもやっていって」
「大事なのは上から目線じゃなく」
「同じ目線で」
「上からだとかえって見えにくいから」
「そうなの」
「上からだとどうしても頭しか見えない」
 その人の一部だけという意味だった。そういうことであるのだ。
「けれど。同じ高さだと」
「どうなの?」
「場所を少し変えれば横も後ろも見える」
 それだけ違うというのである。それだけでだ。
「ジャンプすれば上も見える」
「ちょっとそうしただけで」
「しゃがめば足元も見える」
「かえって色々見られるのね」
「だからこそ同じ高さがいい」
 ここでも自分のその考えを月美に伝える椎名だった。
「私もそうしてるつもり」
「何か愛ちゃんらしいわね」
「ところが周りははそうは見ない」
「そうなの?」
「上から目線だって言われる」
 これは椎名のあまりもの切れ者ぶりとその感情の見られないいささか機械的な喋り方からくるものである。椎名も誤解されやすい人間なのだ。
「だから気をつけてる」
「そうだったの」
「私なりに」
「愛ちゃんは別に」
 彼女をよく知っている月美から見ればだった。
「そんな上からとかは」
「上から見ても相手は見えない」
 また言う椎名だった。
「相手の目が見えないから」
「目が」
「心は目に出る」
 孟子にもあることだった。諺にも目は口程にというが椎名はこのことも念頭に入れて話すのだった。
「まさにそこに」
「目にこそ」
「それを見て考える」
「相手がどう思っているか」
「それを考えて動く」
 椎名の行動の秘訣の一つであった。まさにそれだった。
「目は大事」
「目が、ね」
「誠実かそうでないかも目に出るから」
「そういうこともなのね」
「そう。だからこそ」
 また月美を見て話す椎名だった。
 
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