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空に星が輝く様に

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379部分:第二十八話 見られたものその十


第二十八話 見られたものその十

「入ろう」
「こっそりとだよな」
「そう。物陰に隠れながら」
「わかったよ。忍者みたいにな」
「具体的にはそうなって」
 つまりはそういうことだった。椎名は陽太郎に念を押してそれから体育館裏に入った。
 するとだ。そこにいたのはだ。 
 星華だった。そして三人もいた。陽太郎は彼女達をまず見たのだった。
 今は椎名と共に木陰に隠れてそこから見ている。それでだった。
 彼女達の姿を見てだ。椎名に対して囁いた。
「あれ何やってんだ?」
「すぐにわかるから」
「すぐにかよ」
「そう、すぐに」
 椎名はこう陽太郎に囁き返した。顔は星華達に向いている。
「わかる」
「何なんだよ、そりゃ」
「だから見てて」
「とりあえずは見るんだな」
「何ごとも見ることから」
 椎名はここでは正論を述べた。
「だから」
「何かわからないけれどそれでいいんだな」
「そういうこと」
 こう陽太郎に話してだ。見るように諭す。
 そしてだった。陽太郎も椎名のその言葉に頷き彼女達を見る。するとだった。
 星華達が誰かと話しているのが見えた。ここでだった。
 椎名が横からまた囁いてきたのだ。
「それじゃあ」
「それじゃあ?」
「さらに進む」
「進むのかよ」
「木陰に隠れながら」
「あの連中には見えないように」
「そうしていってだな」
 陽太郎は椎名に問い返した。すると椎名はそれを見てからすっと動いた。左手に、木陰と木陰を伝ってであった。そうして進むのだった。
 陽太郎もそれについて行く。そうして星華達に近付く。椎名が適当な場所で立ち止まると彼もそれに合わせて立ち止まる。そこでだった。
 椎名がまた囁いてきたのだった。
「一つ言っておくけれど」
「今度は何だよ」
「絶対に騒がない」
 ここで椎名が注意するのはこのことだった。
「何があっても」
「声は出すなか」
「何を見てもね」
「おい、物騒な言葉だな」
 陽太郎は椎名の今の言葉に思わず小声で突っ込み返した。
「本当に忍者みたいだな」
「だから忍者になって」
「それでか」
「そう、それでいくから」
「わかったよ。じゃあ約束するな」
「はい、これ」
 椎名は一枚のタオルを渡してきた。それで口を塞がせようというのだ。とにかく彼女がかなり用心していることは陽太郎にもわかった。
 それでだ。陽太郎もそのタオルを無言で受け取ったのだった。
「これでお口をね」
「塞ぐんだな」
「その通り」
「わかったよ。それにしてもな」
 陽太郎はそのタオルを差し出した椎名を見てまた言う。
「随分と慎重だな、今回」
「何時でもそうだけれど」
「いや、いつも以上にだよ」
 そうだというのである。
「何かあるのかよ」
「あるから慎重になる」
 こうした口調はここでも変わらない。
「そういうこと」
「何か緊張する言葉だな」
「そう、緊張してて」
「さもないと駄目な状況ってことか」
「そう、それに」
「絶対に驚くなっていうんだな」
「何を見ても」
 とにかく今回の椎名は注文が多かった。陽太郎はその彼女に宮沢賢治の童話を思い出したがそれはあえて言わなかった。そうしてその星華達を見るのだった。
 
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